異世界で気ままに余生を過ごすので頑張れ乙女!
ホントに遅れてごめんなさい。展開がめっちゃどん詰まってました。
「「はぁ……。」」
いきなり両者の溜め息から始まる試合があっただろうか。そんな2人の内心など知らんと言わんばかりに、拡声魔法特有の『キィィン』という音が鳴り響く。
『入場選手を発表致しますわ!!我が親愛なるお姉様の一人娘!!ウォンジョ・ウサ!!』
『相対するは私自慢の一人娘!!ウォンジョ・アークレイ!!』
両者の名が発表される度に歓声が上がる。互いにネームバリューとしては同格といったところか。
『そして、今回に限りまして、2人のオッズは両方とも2倍に固定致しますわ!!是非可憐な候補者達を応援して下さいまし!!』
その瞬間に一層歓声が大きくなる。選手の2人が不快な表情を浮かべたのは言うまでもない。
「アークレイ様、覚悟はよろしいでしょうか。」
「そちらこそ。先の演目での屈辱、100倍にして返しますわ。」
『お二人とも準備は万端のご様子!!では皆様!3カウントをお願いしますわ!!』
3!2!1!と観客達がカウントしていき、開始の合図────それを待っていたと言わんばかりに、両者共に弾かれるようにして相手へと接近、ゴング代わりの金属音が闘技場に響く。
試合展開は先の静の闘いとは真反対。両者同時に駆け出し、剣をぶつけ合う。二度三度、ギインと剣が鈍い金属音を打ち鳴らす。
最初の演目────組手との相違点は、この戦いに『型』はないということと、
「『煌炎流星』!!」
剣術や格闘だけではない。なんでもアリだという事だ。
アークレイの手のひらからキラリといくつもの光が溢れ出す。それらは一瞬紅く煌めく光線となり、ウサの身体を切り裂こうとする。
それをひらりと躱したウサだったが、その行動を読んでいたかのように、アークレイの蹴りがウサの土手っ腹をブチ抜く。
「ガッ……ふ……!!」
その鋭い蹴りに悶えつつも、
「『ウィンド・ジャベリン』!!」
ウサは反撃の魔法を行使するが、不安定な姿勢で撃った魔法はアークレイにとっては児戯に等しい。
「あら、魔法を使うのは苦手のようですわね。」
難なくその攻撃を回避し、ウサの魔法の腕を鼻で笑ってみせる。
「だから……なんだと言うのです!」
ウサは詠唱破棄で6つの『火球』を発動し、その魔法と共にアークレイへと迫る。
しかし、アークレイの余裕を崩す事は叶わない。
「貴女に勝てますわ。ウォンジョ・ウサ。」
尚も勝ち誇るアークレイは、目にも止まらぬ早さで既に、ウサの背後へと移動していた。
「『追颯』!」
『追颯』。それは追い風を作り出し、自身の速度を上昇させる魔法。だが、能力はそれだけに留まらない。
「くぅっ!……なッ!?」
苦し紛れに放った火球、それらは向かい風によって阻まれ消滅。加速の乗ったアークレイの剣を受け止め切れず、ウサは後方へ転がる。
「『身体強化』!!」
「はン。」
その情けない様を、アークレイは嘲笑する。
(詠唱しないと身体強化すらできないなんて!!)
まるで見せつけるように無詠唱で身体強化を使い、
「お粗末すぎますわ!!」
「ぐっ……!!」
一太刀、ニ太刀と更にウサを追い詰める。
何とかそれに対応していたウサだったが、追撃の魔法や体術が彼女の体力をジワジワと削る。
「貴女は!!当主に相応しくない!!当主になるのは私!!」
……どちらが優勢かは火を見るより明らかだった。
「領地経営、他領との外交、財務管理!!貴女にできるの?!」
「そ、それは……。」
考えて来なかった訳がない。それは自分の未来だ。不安でない訳がない。
「私はできる。物心ついた時から私の夢は当主になることだったから。」
目の前の相手の今までが、積み重ねが、自分よりも圧倒的である事実。目を逸らしていた不安が襲い来る。
「……私……は……。」
夢を叶えるということは、誰かの夢を奪うこと。その事実から目を背けていた。ただ、それだけだった。
「ウサ……。」
観覧室からレンはその姿を見つめる。
「彼女、負けてしまいそうですわね。」
その声を聞き、レンは溜め息混じりに振り返る。
音もなく背後に立っていたのは、
「……明神宮。」
明神宮天華だった。
天華は首を傾げ肩を竦める。
「苗字で呼び捨てされたのは人生初ですわ。」
「そんなことはどうでもいい。」
「そうですわね。どうでもいいですわ。」
そして、まるでこれから喧嘩でも始めそうな雰囲気のまま、2人は互いに近付いて行く。そして、もう後数センチもないほど近付いた後、互いに言った。
「「さっきのワザとだろ(ですわよね)?」」
そして同時に溜め息を吐いた。
「……お前もかよ。」
「全く嫌になりますわ。」
それは同族嫌悪というやつだろうか。全く同じ考えをしているという事実が本当に嫌になる。
「敢えて引き分けにすることで勝敗の比重を上げた。」
要は、当主候補者の2人に強いプレッシャーをかけるのが目的だったのだ。
「試練は必要だ。それも生半可なものではなく、真の試練が。」
「折れないといいですわね。」
天華のそのセリフにレンは驚いたような顔を向ける。
「意外なセリフだな。」
「心外ですわね。私、人を思いやることに関してもトップ中のトップである自負がありますのよ。」
レンはそれについては何も言わなかった。ただ、
「そうか。心配は嬉しいが。」
ニヤリと笑い、闘技場の上を指さした。
「アークレイさんの方を心配した方がいいんじゃないか?」
「……ほう?」
「ウサは、強いぞ。」
いつも読んでくれてありがとうございます!!
まさかここで詰まってしまうなんて……(元から結構遅れてましたが、)自分の至らなさを痛感しました。
精進します……




