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誤字と改行ミスと、ちょっとだけ表現の変更。
直そうとした時にブックマークされている事に気が付きました。
自分の投稿している小説にポイントが入るってのがこんなにも嬉しいとは思わなんだ。
まさかのオッサン、小さくガッツポーズですわ。
カラク先生の授業は相変わらずの支離滅裂さで、歴史だったり時には文学だったりと混沌さに置いてはかなりの物だった。
民主主義やそれを支える制度や思想について教えようとしているのは分かるのだが、僕の知っている民主主義はこんなにも混沌としていただろうかと思わずにいられない。
後期学習期の最初の一年が終わる頃には、数少ない真面目組も僕を残して全滅している有様だった(勿論カラク先生は何一つ気にしていなかったが)。
カラク先生は最後に「では諸君二年後に」という謎の台詞を(僕以外聞いていなかったが)残して最後まであの恐ろしいまでの姿勢の良さを崩さずに去って行った。
それから二年間は、まぁ有り体に言って楽しかった。
毎日学校へ行き、誰も居ない校舎を好きに使い、誰も居ない教室で授業を受け、放課後はリタと二人で役にも立たない魔法の勉強をした。
実に無駄で充実した楽しい毎日だった。
久しぶりに教室が埋まっている。
僕はごく普通に登校したが、僕以外の殆どの生徒は久しぶりの登校だろう。
ちなみにどれだけ授業のペースが遅れてもそのツケは最後に回されるので、永遠と一年目を繰り返す、というような事はないので見知った顔が並んでいる。
16歳になって、後期学習期4年目になった所で、たぶんこれからも変わらないのではないかと思っていた所で、この謎の大集合である。
理由は個人端末に入っていた登校必須のメッセージのせいではあるのだが。
後期学習期は6年間なので、日本のように中学校三年間高校三年間といったように分けられていないので、この4年目の始まりに何も意味は無い。
いったい何の為に集められたのだろう?
と、僕が机に座りながらボンヤリと考えていたら、教室のドアから思いもよらない人が入ってきた。
「諸君、おはよう」
まるでつい昨日まで顔を合わせていたかのようにカラク先生は自然に挨拶した。
何人かの生徒が、また登校出席必須の授業があるのかと嫌な顔をし、何人かが誰だったかと思い出すような顔をした。
カラク先生はそれら反応を全て無視しして「よし全員揃っているな」と頷き黒板の前に以前と同じように立った。
「諸君、今日私は教師としてではなく、軍人として諸君らの前に立っている」
二年ぶりに現れたカラク先生は何事も無いかのようにそう言った。
僕は身構えた。
僕の中の僕が警告を発するからだ。
頭の中に浮かんだ言葉は徴兵、学徒動員、危うい戦況、だった。
あと、今からちょっと殺し合いをしてもらいます、とか言われるんじゃないかとドキドキした。
少し冷静になれば、福祉公共都市にはそれこそ無職の適齢者が大量にいるのだから、学徒動員なんて事はないと分かったのだが、その時僕はそこまで冷静になれなかった。
「今日私がここに来たのは諸君らに志願の権利が与えられたのを伝える為だ」
僕はカラク先生のこの言葉で冷静になった。
カラク先生の表情は無表情のようではあるが、それは感情を押し殺しているというよりは、感情を完全に制御下に置いているから故の無表情に見えた。
その表情を見ていると不思議と僕も落ち着けた。 カラク先生は淡々と説明を続けていった。
大半の生徒は公民の授業のように先生の邪魔にならないようにサボっているが、先生は相変わらず気にもしなかった。
カラク先生は簡潔にかつ完璧に説明を終えると「では諸君これにて私は失礼する」とだけ言って出て行った。
その日は授業は無かった。
僕はボーッとした頭を抱えて校門に向かう生徒の群れを歩いていく。
考える事が多すぎて思考が追いつかなかったのだ。
それでも彼女に気がつけたのは、人で混み合う校門前でそこだけポッカリと空間があいていたからだ。
通り過ぎる男子生徒の視線を集めながら彼女、リタは校門の支柱に背中を預けて立っていた。
僕は逃げるように縋るようにその空間へと歩いて行った。
何故か彼女に話を聞いてほしかった。
不思議な直感か思い込みかそれとも勘違いか、何でもよかった、僕はただ彼女に話を聞いてほしかった。