表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異宙の戦士  作者: たけすぃ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/25

3-1

ドンパチ始まるまで毎日投稿したでぇ。

いやすいません、ちょっと眠ってしまって、投稿が遅れました。

 僕がライフルを両手に持って、精一杯のリーダーらしさを出して、さぁ行こうと宣言した直後にそれは来た。

 センサー感あり、地中から。

 AIのその警告は聴覚センサよりも早く僕の思考に届いた。問いただすよりも疑問に思うよりも、僕は体を放り投げるように横に飛んだ。

 あまりにも突然だったので多脚装甲服を着ていてすら6,7メートル程しか飛べなかった。

 だが僕はまだ幸運な方でビラルは地中から現れたソレに突き上げられ空を舞っていた。

「ビラル!」

「生きてるよ!クソが!」

 急いで起き上がりながら視覚センサの片隅で宙を舞うビラルを確認、僕はもうもうと舞う土煙の中から現れたソレを凝視する。

 非現実的な白い肌にデザイナーの正気を一切疑問無く否定できる造形。

 これが本物のヒトモドキ。

 初めて見る実物に、その異形に圧倒される。

 人の上半身だけを連ねて出来た不気味なムカデのような姿。足はそのまま幾十もの人の腕だ。

 不必要なまでに人体のパーツデザインを使う異形の怪物、僕らの敵。敵意性AI。それが僕らがヒトモドキと呼ぶ敵の姿だ。


 ワーカーか。

 僕はその特徴的なムカデのような異形と頭部が四角錐のカバーに覆われているその姿を見て、主に建築作業に従事させられている個体、通称ワーカーだと判断した。

 判断したが……。

 資料より断然大きい。

 僕が軍に入ってから見た資料では、ワーカーの大きさは、大きなモノでもせいぜい5メートルとされていた。

 されていたが今目の前にいる個体は明らかに全長10メートルは超えている。

 その体の長さに比して構成されているパーツも巨大で、人の上半身を連ねて出来ているというよりは巨人の上半身を連ねて出来ているようだった。

 ワーカーの頭――四角錐の巨大な塊がこちらを向く。

 建築作業用の個体と言っても、奴らヒトモドキが持つ、人への攻撃性はワーカーも同じく持っている。

 人を見て何もしないなんて事はありはしない。


 丁度ビラルが地面に着地したのを視覚センサの端で捉えたと同時だった。

 ワーカーが僕に向かって真っ直ぐに突っ込んできた。

 武器を持たないワーカーで助かった。こいつだけなら何とでもなる。

 と思っていた僕の考えは一瞬にして砕かれた。

 頭部の先端を僕に向け、まさしくムカデのように張ってくるその姿に僕はチビリそうになった。

 迫り来る確実な死の姿に、僕の頭は真っ白になっていた。


 一瞬あの夕暮れの図書館を幻視した。


 僕を現実に引き戻したのは、赤くハイライトされたワーカーの腕部だった。

 それは人格を持たない故に、行動決定権限も身体操作権限も持たない低機能AIからの必死の抗議に思えた。

 僕の首に埋め込まれ、僕以外に僕の内部ストレージ(脳に接続された補助脳の事。エルフの人生を三度記録できる、と言われている。内部に記録されているデータを読み込むには本人の脳が必要。原理は不明だが例外的に人体内部に埋め込まれたAIはアクセス可能)にアクセス出来る唯一の存在。

 娑婆のAIに比べたら気の利いた事など何一つ出来ない官給品のAIからの必死の抗議に、僕の体は反応してくれた。

 千では足りない数を繰り返してきた動作。

 構え、狙え、そして撃つ。

 ライフルから放たれた疑似アダマンタイト製の弾丸が狙い通りに着弾、そしてワーカーの腕部内部で運動エネルギーを消費し爆発的に膨張する。

 ワーカーの腕が肩から千切れ飛ぶ。

 その非自然的な白い表皮からは想像できない、オイルのような黒い体液が地面と自身を黒く汚す。

 僕は手を止める事無く、四対よんついの腕を肩から吹き飛ばすと、限界とばかりに横に飛んだ。

 恐ろしい事にワーカーは計八本の腕を吹き飛ばされても突進するスピードをまったく緩めなかった。

 大丈夫、相手は突進しか出来ない単細胞だ。

 と僕が思った瞬間、僕は片足をワーカーに掴まれていた。

 ワーカーが上半身を蛇が鎌首を上げるかのように持ち上げ、僕を優勝トロフィーか何かのように振り上げる。

 地面に叩きつけるつもりだ。と考える前にAIのハイライトに従って僕の足を握る腕に銃弾を撃ち込む。

 必然――、僕の体は振り上げられた勢いそのままに宙に放り投げられた。

 クソ!今日はこんな事ばっかりか!

 僕は本日二度目の自由落下の予定に毒づきながら、突然降って湧いてきたアイデアに一瞬ではあるが呆然とした。

 正気とは思えなかったし、利口な思いつきだとも思えなかった。真実馬鹿げていたし、実際その思いつきは馬鹿げていた。

 だけど僕はその時、何故かそれが一番だと思ったんだ。

「ビラル!受け取れ!」

 僕は空中で、僕とワーカーの戦いに呆然としていたビラルに向かってライフルを放り投げた。

 慌てて飛んできたライフルを受け取ったビラルにAI経由でどこでも良いから撃ちまくれと命令した。

 僕の体は上昇運動の頂点で一瞬の無重力を味わった後(地上に落ちて一時間も経ってないが既に懐かしい)真下、つまりはワーカーに向かって自由落下を開始した。

 ワーカーが落ちてくる僕を、ママのように、ああこれは母に失礼だ、待ち構える。

 その頭部の四角錐をパックリ開け、それでもって地面を掘削していくのだろう凶悪な内部を僕に見せつける。

 喉(と言っていいのだろうか?)の奥には人間の頭部のような物が見えるが、それは白く目も鼻も口も無い。いや白い表皮の下には人間の口のような物が埋まっている。

 埋まっているのが僕には見えた。


 お前、今、笑ったな?


 僕は四角錐が閉じようとした瞬間に、両手両足偽脚をフルに展開させた。

 全力で閉じようとする四角錐の四片と僕の全身の人工筋肉が悲鳴を上げながら拮抗する。

 外ではビラルが雄叫びを上げながらライフルを撃ちまくっているが、ワーカーは苦しげに身悶えするものの、掘削顎(今適当に名付けた、正式名称は軍の資料で見てくれ)を閉じる力は弱まらなかった。

 僕は意を決して両腕を離し、上顎二片を押さえるのを偽脚に任せる。AIが人工筋肉の出力低下の警告を連打するが無視する。

 僕は腰部マウントに懸架けんかされた、開発部がジョークの一種で付けたと噂の近接格闘用武器を取り外す。

 それはジョークと呼ばれるに相応ふさわしい代物しろものだ。

 ハンマー、戦鎚だ。

 銃剣ならまだしも、単機で成層圏から放り投げられても平気な多脚装甲歩兵に持たせる武器がコレか?ここは中世か何かか?

 だがその性能は馬鹿げている。

 何せ多脚装甲歩兵が全力でぶん殴ろうが、ぶん投げようが、折れないし曲がらない。

 僕は伸縮式の柄を最大の長さまで伸ばしてそれを喉の奥、丁度良いまと、ワーカーの頭部に向かって突き入れる。

 多脚装甲服の装甲素材と同質の先端がワーカーの頭部をグチャグチャに砕く。

 が掘削顎の力はいっこうに弱まらないし、ワーカーはちょっと鬱陶しげに身悶えするばかりだ。

 が僕はまだ自分の馬鹿げたアイデアを捨てた訳じゃ無い。むしろここからが本番だ。

 自分で思うが正気じゃ無い。

 僕はAIに大声で命令した。

「AI!僕の内部ストレージからラドレイ著作の千の書、白光の法を検索!」

 上顎を押さえる偽脚が大きくたわむ。

「最後の一文を除き、完全な発音で最速で音に出して読め!」

 

 希代の魔法使いラドレイ。

 初代ボルボード帝国帝に仕えていたと言われるエルフの魔法使い。彼の魔法は極めて強力でボルボード帝国初期の侵略戦争において数多の敵を葬ったと記録には残っている。

 その中でも彼自身が白光の法と名付けた敵に向かって雷を落とすという魔法は、熟練した魔法使いでも実に二時間近い詠唱を必要とする、そしてそれだけの価値がある魔法だったそうだ。


 AIはそれを四秒で唱え終えた。

 僕はその瞬間、僕の馬鹿げたアイデアが上手くいった事を確信した。

 僕の生身の体からゴッソリと力が抜け落ちていく、強烈な目眩と倦怠感。

 だが僕は多脚装甲歩兵で生身の体がどうなろうと、装甲に包まれた人工筋肉の体は、完全に制御にできる。

 僕は最後の一文を口にする。

 魔法を、僕の世界には無かった理外をこの世に顕現させるその一言を。

「とくと頭垂れよ白光の逆稲穂」

 本来なら敵の頭上に向けて放つその魔法を、僕は自分の手の平に向けて放った。

ドンパチだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ