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4✿嬉しそうに微笑む君は桜色。



 桃色の花が咲いた日、沙子(あのこ)は嬉しそうに笑った。それが嬉しくて私も微笑んでみれば沙子はまた笑った。



 あの日。



 気持ちがいい天気のこと。久々に彼女と出会えた。

暫く統領が他の村の協議に出るらしく、修行がお預けになった彼女は嬉しそうにしていた。やっぱり嫌いなんだね、修行。

修行がなくなるとその分彼女が来てくれる、それが嬉しくて檻の中でそわそわしていたぐらいだ。


「久しぶりだね、元気にしてた?」


コクリと頷いて檻の中に置いておいた小枝に手を伸ばす。沙子が私の手を気遣ってか、やすりで小枝の棘を整えてくれた。そのおかげか枝とは思えないほど綺麗ですべすべしていてびっくりするぐらい。


〝髪結んだ?〟

「えぇ、どう?…似合うかしら?」


結んだ髪を見せるように、一回転して嬉しそうな顔で私を見つめる。

 両端の髪を三つ編みで編んでいて、それを一つに大きなリボンで結んでいる。いつも下ろした姿しか見ていないので新鮮に思える。

やっぱり髪を変えるだけで人の印象が変わるもので、大人っぽい彼女が少しあどけなくなったような気がする。


〝似合うよ 可愛い〟

「本当に!?ありがとう…嬉しい」


桜色に染まらせる頬、柔らかそうな唇が弧を描いていて、私は見惚れていた。

そんな私を知ってか知らずか、私の髪に触れる彼女の手。少しだけ感触を確かめると後ろに向かせられ彼女が弄られやすいようにさせる。

懐にあった櫛を取り出して髪を梳かし始める。少しくすぐったくて肩を震わせれば沙子は面白そうに笑った。


「ごめん、くすぐったかった?もうすぐ終わるからちょっとだけ我慢してくれないかな?」


檻が邪魔しているせいであまり梳かすことが出来ないので時間がかかるらしい。けど私はうれしかった。彼女と触れられる時間が増えたから。

思わず緩んでしまう口元を抑えていると桃色の花弁が床に落ちていて、手にすくえば彼女が何をしているのか理解してしまう。


「お花が似合うね、なずなは」


体の体制を前に戻すと沙子はうっとりとした口調で私を褒めてくれる。少しだけ気になって手鏡を借りて覗き込めば桜の花が一つの束で髪留めになっていた。


〝凄い これ 沙子が作ったの?〟

「えぇ。初めてだから少し変になっちゃってるけど…」

〝ありがとう 嬉しい〟

「本当に?」

〝本当に〟


 彼女からの手作りに私ははしゃいじゃって、彼女の手を握っていた。

突然のことに驚きを隠せない沙子に私もどうしたらいいか分からなかった。…勝手に動いちゃったんだもの。


「ふふっ…そんなに嬉しかったの?」


こくん


「どういたしまして、まさかこんなに喜んでくれるとは思わなかったわ」


 ううん、違うの。この髪飾りでこんなに喜ぶんじゃないの。

貴女が…沙子が作ってくれたものだから、沙子から貰ったものならなんでも喜ぶの。

だって沙子が『私の為』してくれたことだから。だから、うれしいの。







―――貴女からの贈り物は私の宝物。







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