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殺意の喪失

この物語を読むに時に読者の皆様に気をつけて頂きたい、事柄がある。この物語はアブストラクト、つまり抽象的な日常を描いた物語。いまある常識を全て捨て去り読むことを、強く推薦する。また残酷極まりない行動をとる主人公たちが許せない方々は読むことをオススメできない。

 この物語に出てくる人物たちは少なからず精神的におかしく、読者の皆様に悪影響を及ぼす可能性もある、それでも「大丈夫だ、問題ない」という方はアブストラクトデイズをお楽しみ頂ければ幸いである。

※横にして読んで下さい!


 吸血鬼が牙をむき出して、こちらを見据えてる、草木の眠る丑三つ時に物騒な奴だ。

「…クックック」

「…!!」


ヨウヤク、デレタ!!


 目蓋をゆっくり明けて、自意識があるのを確認する、そして身体の動作に異常はないか動かしてみる、吸血鬼は驚いて後ずさりをして、五歩ほどの所で止まり警戒した目で俺を見る。

「お前、東じゃないな」

「カンがいいな吸血鬼、そう俺が殺人鬼の東だ。」

 さて、この吸血鬼をどう解体するか…やはり牙をナイフでえぐるか? すぐに殺すのはもったいない、とりあえずは外に出よう! それからだ!

 俺は吸血鬼の首を掴んで玄関のドアに投げつける、バンと音がしてドアが開く、ナイフを構えて追い討ちの体制に入り走り出す。

「そうはいくか!」

吸血鬼はマンションの五階からあろうことか飛び降りる、手すりから下を覗き込むと吸血鬼は平然と歩いていた

普通の人間なら飛び降たら足の骨が折れる。だがそれが違うのは俺も同じだ吸血鬼と同じように俺も飛び降りて、着地点で前転をし受け身を取る。

「なんて人間なの!」

「クックック、逃げんなよ人の血狙っといて」

「冗談じゃない、命がいくつあっても足りやしないわ!」

 吸血鬼は逃げ出す、マンション周辺の路地裏へ入り込んで行く。俺は彼女を追いかけて行く、鬼ごっこかそれも楽しいだろう。

「おーい鬼ごっこ? いいぜぇ」

「しつこいなぁ、はぁはぁ」

 俺は追いかける、月夜を背に宿し走り呼吸が荒くなる、しっかり息が出来ない…狭い道は行き止まりが多い、そこまで追い詰めればいい、後は奴を解体して「失った」部分を補えれば良い。

「残念、ゲームオーバー。」

 吸血鬼を行き止まりに追い詰める、悔しそうな目でこちらを見る。

「否、ゲームオーバーは貴様だ」

 聞いた事のある口調に声が俺の後ろからする、振り向くとクエスが眼帯を外した状態でそこにいた。

「おやおや、クエスじゃないか」

「目を覚ませ、アズ」

「覚めてるぜというより、ようやく覚めた」

 クエスは鋭い目つきでこちらを

睨む、拳を強く握り力強く歩き出す。

「なるほどな…裏が出たか」

 吸血鬼に再度視線を送る、棒立ちから戦闘の意が確認できる体制になる、だが狙いはクエスのようだ。俺は無視かよ。

「クエスVS吸血鬼、見ものかなぁ」

 俺は民家の塀の上に飛び乗り、二人が向き合ってる状態を観察する。

「おい、吸血鬼今は一時休戦だ」

「奇遇ね私もそう提案しようかと思った所だったわ」

 なに!?…つまらないなぁ。

「まずはこいつを倒す」「まずはこいつを倒す」

 二対一…まぁそれも悪くないな。

「いいぜ、まとめて相手してやろう、クエスは目、吸血鬼は牙をまずは解体してやるか」

 ナイフを構えて民家から降りる。

「吸血鬼! 私の目で奴を見透かす! 指示道理に動け!」

「気にくわない、けどそれしかなさそうね!」


_________________



 友達との買い物が終わる頃、時刻は十二時を回っていた、こんな時間まで友達と遊んでしまうとは、我ながらはしゃぎすぎてしまった。帰りが遅いと父親に怒られるので少し駆け足で近道をする、住宅街の路地裏に入る確かに近道だが最近の様子からして物騒なのは変わりない。

 月灯りと数本の街灯だけが私の歩く道を照らしていた、静けさと暗闇が支配するこの世界では、闇に潜む何かを人々に想像させると共に、やわらかな恐怖を与えてくる。

 だが、それは一軒のマンションを見た途端私の頭からするりと消えた、このマンションには自分の従兄弟が居ていつもその笑顔を思い出すと、心が何故かやすらぐ。

「アズ、大丈夫かな?」

 不意に若い男の笑い声と共に、女性の声が夜道に響いた、男の声の方に聞き覚えがあった。

 私は嫌な予感がして声の方向へ駆けていくと、ナイフを持った従兄弟が鬼の如く、女の子を斬りつけようとしていた。

「次は右からだ! 避けろ!」

 目の色が片方違う少女が、髪が紫色の少女に指示を出す、従兄弟の回し蹴りを回避させている様に見えた。

「ちっ やっぱりあの目から殺るか」

 従兄弟の標的が変わると、ほぼ同時に私は彼の前に飛び出していた。

「東! なにしてるの!」

「加奈子ねぇさん、どいてくれそいつ殺せない。」

「なんで! なんでこんな事するの!」

「失った物を補う為、他者から命を奪う、そういう衝動が俺をそうさせる」

 従兄弟の口調が他人を完全に見下している、一人称もいつもなら僕だった、何かがおかしい。

「どきな、あんたがそいつとどんな関係か知らないが止められるような相手じゃない。」

 目の色が片方違う少女が言った。

「それにあれは、アズじゃない別人に体を乗っ取られてるのさ。」

「別人? なにそれ…」

 片方の目の色が違う少女はそれだけ言うと、従兄弟に走って向かっていった。

「いくら動きが読めても、体は追いつくかな?」

「うあっぐ!」

 従兄弟は少女の腹を回し蹴りで攻撃、少女は避けようとするが間に合わず、まともに食らって吹き飛ばされてしまった。

「アズ! 止めて…なんで!」

 叫ぶと同時に私の脳裏に従兄弟を止める方法が思い浮かんだ。

「これを見なさい!」

「ん?」

 私は上着を全て脱ぎ捨て、ブラジャーを外した。

「ヴァァー!」

 鼻血を吹き出して倒れる従兄弟。

「止まったー!」「止まったー!」

 口を揃える二人の少女。

「…なにやってんだ、私」

 脱ぎ捨てた服を広い集めて着る、正直こんな方法で止まるとは思ってなかった。これは思春期男子専用の技として今後、人気のない場所で使っていこう。

 従兄弟の鼻血は地面に鼻から広がって行き、辺りは血の海となっている、しかしあの大人しいアズがなんで女の子を襲うなんて事を?

「そこの二人はアズの知り合い?」

 最初に片目の色が違う少女が答えた。

「我の仲間だ、たまたま通りかかったらアズが別人の如く、そこの吸血鬼を襲ってたんだが、すぐにアズじゃないとわかったから。アズを止めようしたんだ」

 吸血鬼? 厨ニ病かな? 吸血鬼と呼ばれた少女は私に近づいて口を開けた、犬歯が異様に長く、人の首を食いちぎり血を啜るには充分だった。

「……まぁいい、それよりアズを家に運ぶから、二人は…」

「ここで殺す」「ここで殺す」

「こら、待て!」

 にらみ合った二人の頭を小突いた、二人は私を見る。

「何があったかしらないけど、そんな事を女の子が言うもんじゃないよ、二人…わかった?」

 二人は嫌そうな顔をして頷いた、倒れてる従兄弟を持ち上げて、マンションに入る、テレビと布団と小さなテーブル、相変わらずの殺風景な部屋だ。

 アズを布団に寝かせて私は自分の家に帰ることにした。大分時間が経過している、親の一喝ぐらいは覚悟しておこう。


_________________



 夜目を閉じてる時に見るのは目蓋の裏、夢は決して見ない僕はみちゃいけない、人が死ぬから。

 僕の夢に出てきた最近の人々は夜中に通り魔の被害に遭う、そして必ず死ぬ。

 気づいてるんだ本当は自分が犯人だって事、でも抑えようのない衝動に駆られて我慢しようと必死になる時には既に人を殺した後、手遅れ。

 僕は殺害衝動を抱えて生きる化物、ジャックザリッパー。


「アズ、私がもうすこし早く気づいていたら」

「クエス…?」

「あ、起きた」

 目を開けると自分の部屋で、クエスしかいなかった、春の姿が見当たらない、そして自分の鼻の穴にはなぜかガーゼが詰められていた。

 僕は鼻のガーゼをとり目の当たりにする、血がかなり染み込んでいた。

「いったい僕はなにを…朧気にしか思い出せない」

「思い出せなくていいだろう、貴様は先程まで人を殺そうとしていたんだ」

「知ってる、僕が最近の通り魔なんだよね…今回は春を殺そうとしてたのかな」

 春とは、吸血鬼の名前だ吸血鬼のくせに名前だけはやたらと普通の名前だ、僕は今の時刻を確認する。

 時刻は午前二時を回っていた。

「春? ああ、吸血鬼の名前か」

「ところで彼女は何処に」

「自分の家に帰ったよ、正確には根城といったほうが正しい。」

 クエスは溜め息をついた後、僕に質問をした。

「いつ頃からお前は殺人鬼に?」

「両親が死んだ時かな、人格が一つ増えたんだ事故のショックでね、殺人鬼を抑え込む為に僕は必死に今までこらえてたんだ、だけどさここすぐ横が高速道路だろ」

 僕は部屋のカーテンを開けて高速道路の方を静かに見つめた。微かに車が轟音をたてて、走ってるのがわかる。

「この音は夜にやたら耳に入ってくるんだよ、そうすると忘れようとしてる事も忘れられなくてね。」

「交通事故か…」

「そして、見事に抑え込んでた殺人鬼が爆発したんだ。」

 僕はゆっくりとカーテンを閉めて、部屋から出る為玄関を開ける、遅れてクエスが付いて来る。

「何処にいくんだ?」

「付いてきても、つまらないよ」

「今のお前は不安定だ、目を離す訳にはいかない」

 もの好きな子だな、これから僕が何をするかなんて、誰もわかりはしない、僕はマンションを出て高速道路に入る為の階段を上る、高速道路には歩行者用の歩道が設けられている事を僕は知っていた。

 歩道に到着してしばらく僕とクエスは車道を眺めていた、吐く息が夏なのに白く凍るのが見えた気がした。

「クエスとは、ここでお別れだよ。」

「アズ待て、なにを…!」

 僕は自ら車道に身を乗り出し、時速八十キロは出しているであろう、トラックに自ら跳ねられた。

 薄れて行く意識の中、僕が最後に見たのは自分の血と僕の近くですすり泣くクエスの姿だった。



 なにもない世界、自分だけがこのなにもない世界の空間に居るのが解る、視界は無限の闇に包まれていて自分が目を開けているのかどうかも曖昧だった。

 肩に何かが触れる感触がした、誰かと思って振り替えると、殺人鬼の自分が立っていた。

「お別れ? わらわせるなよ、俺を殺す気だろ」

「正解、死ね殺人鬼」

 なにもない世界で僕は自分の殺人鬼に対して言葉の刃を突き立て、その後本物の刃で彼をバラバラに解体した。


_________________



 今日も東京都では、奇妙な事件が沢山起こる。それでも私達はそれに立ち向かって生きていかなければならない、なんて不幸な世界なんだろう、不幸と言えば、彼はまだ病院で眠っている。

 時々見舞いには行っては、花を花瓶に添えるだけ、あの夏が過ぎてもうかなり経つ。

 今日は彼の見舞いに行く、今日こそ起きて欲しい。彼の病室のドアを開けて、花瓶に入っている枯れた花を取り替える。

 赤毛の彼の髪は女のように長く伸びていてこうして見ると、彼は本当に中性的な顔立ちをしていて、初めて見る人にとっては絶対に性別なんか、わからないだろう。彼が何故あの時死に急ぐような行動をとったのかは、知るすべは今ない。

 ただ一つ言えるのは彼は不幸な人間で、この世に神様なんていないんだと思い知らされる事だけだ。

 あれから約2ヶ月の月日が経ったある日の事。

 貴様はいつまで寝ているつもりだ! なんて彼の病室で一人叫んでみたりした、無論起きる訳がない…定期的に彼の元へ訪れては、私は返答のない彼との会話をするようになっていた、今日の活動や解決した事件の数々。

 私は無意味と知っていても、会話を止めなかった、多分私は彼の事が…。


_________________



 寝ている感覚が解る、体をゆっくりと起こそうとするがバランスが取れず起きる事を諦めた、看護婦が部屋に入ってくる点滴の取り替えの様だ、僕は看護婦に声をかけた。

「看護婦さん、今日何日」

「……だれか、先生を!」

 看護婦が慌ただしく部屋を出て行った、今気がついた僕は目を開けていない、久しぶりに見る世界が怖いのだろか…僕は目を開けた部屋に入り込む日差しが異様に眩しい、無理もない目を長い間あけていなかったのだから。

 病室に誰かが入って来た。

「久しぶりね、意識不明って聞いていたけど?」

「ついさっき意識が戻ったんだよ、春」

「意識が戻ってこれからどうするの、あの時の続きでもするの」

 この言葉に僕はひどく違和感を感じた、あの時というのはいったい何時の事だろう、いや覚えてるようで覚えてない…ひどい違和感だ、数秒経ってから僕はようやく彼女にあの時とは何時の事かを聞くという答えに行き着いた。

「あなた、忘れちゃったの?」

「思い出せない」

 まるで心に穴が開いているような違和感、僕は彼女になにをしたのだろう、彼女は答えを教えてくれはしなかった。呆れた表情なのがよく解る。

 ふと疑問に思った、僕の中で彼女を見ると騒ぎ出す何がいない。それ以前に彼女と出会う前の事をまったく覚えていない、朧気に頭に浮かんでくるのは、眼帯の少女の姿だった。眼帯の少女の周りには人が数人いる多分仲間だ、何で自分も仲間なんて感覚があるんだろう?

「誰か来るわね、私これで…」

「待って!」

「悪いけど用なら後で」

 そう言うと彼女は病室から、一瞬で風にさらわれるようにして、部屋から消えた。

「誰かいたんですか?」

 遅れ入ってきた、主治医と思われる男性に問われたが、誰もいなかった一人事だと言ってごまかした。

「目の色が変わってる…後天性か」

 主治医の男性が僕の目にライトを当てて言った、どうやら僕の目は変色しているようだ、後々に精密検査などが行われ身体に異常はないか隅々までチェックされた、結果は異常なし普通の健康体だった、一部を除いて。

「記憶喪失か」

 それが心に開いた穴の正体なのだろうと僕は勝手に悟っていた。それから数日僕は狭い病室から解放され、外の空気をようやく吸えた。

「春、彼女の名前だけ覚えてる」

「呼んだかしら?」

 背後に突然現れる彼女にすこし驚いてから、僕は彼女に質問した。

 自分が何者で、何をしていて、どうなったのかを。


キャラクターのプロフィールとか

やった方がいいですかね?w

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