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吸血鬼と殺人鬼

この物語を読むに時に読者の皆様に気をつけて頂きたい、事柄がある。この物語はアブストラクト、つまり抽象的な日常を描いた物語。いまある常識を全て捨て去り読むことを、強く推薦する。また残酷極まりない行動をとる主人公たちが許せない方々は読むことをオススメできない。

 この物語に出てくる人物たちは少なからず精神的におかしく、読者の皆様に悪影響を及ぼす可能性もある、それでも「大丈夫だ、問題ない」という方はアブストラクトデイズをお楽しみ頂ければ幸いである。

※横にして読んで下さい!

 朝だ。昨日の帰宅した時、僕は気を失い倒れた、理由は現実感のないようで、あるような、異常な体験のせいだ。

 黙って起き上がり、テレビの電源を入れて待機、あれだけ派手にやればニュースくらいには、なるはずだ。朝のニュースを見ながら僕はしばらく動かず、ぼーっとしていた。小一時間時間が経つ。


「やらない? なんで?」


 僕は、ただその後テレビを消して昨日、人を殺したであろう場所に足を運んだ。

 僕は驚いた、血の後もなければ死体すらない。一日やそこらで消えるような、痕跡ではないはずだ、だが確かに殺した僕がこの手で、バラバラにした、内臓をえぐり出し原型を留めない状態まで、これでもかってくらいバラバラにした。

「人を殺した感覚が確かに手に残ってる」

 家に戻ろうと、振り帰った。

「あ、桐生さん」

「クエス様からお迎えにとの命です」

 クエス、そうだ今日は吸血鬼とやらの相手をするんだっけ、僕は昨日から現実を観ていないような気がする。

 桐生さんは僕を連れて人通りの多い大通りへ向かった、そしてタクシーを呼び止めると、目的地を運転手に指示、数十分程でビルに到着。

「私はこれにて、失礼いたします」

 桐生さんは丁寧な礼をして、街の雑踏の中に飲まれていった、一つ気になる事があるとすれば、街中でメイド服は目立ってしまう、悪い意味で。

 桐生さん、気にならないんだね。

「さて、最上階にいくか」

 そういえば何故クエスは、桐生さんを迎えになんか寄越したのだろか? エレベーターに乗ったまま僕は素朴な疑問と向かい合っていた。

 エレベーターは最上階へと上がり着く、扉が開いてその先にある玄関のドアを合い鍵を使って中に入る。

 空調の利いた広い部屋には、クエスと雪村さんがいた。

「クエス、モエは?」

「先に行った、我もこれから向かう」

 厨二病の少女は部屋の中央にあるソファに座り紅茶をすすりながら、僕を見て言った。

「僕は何をすれば?」

「吸血鬼退治、といいたいが今日はくつろいでろ昨日の事で頭が痛いだろう」

 昨日の事、まさか彼女は僕が昨日何をしていたか知っているのか!?

「クエス、昨日僕は…」

 言いかけた所でクエスは手のひらを僕の口に当てて、塞ぐ。

「言わなくていい、ここにいる人間はみんな同じような者だ。」

 みんな同じ? どういうことだ? 要するに人殺しの集団って事か、最初から狂ってるとは思ってたけど、主にクエスが。

「なんだと、こら」

 クエスの両手が僕の首を絞める。

「人の心を読むな…く、苦しい」

「まぁいい、我は仕事に向かう」

 クエスの両手が首から離れる、クエスは玄関に向かいドアを開けエレベーターで下へ降りていった。

「あ~ず~ま~くん!」

「はにゃぁぁ!」

 雪村さんが、僕の背中に飛びかかって抱きつく、みずもちの様に柔らかくてふわふわとした弾力感の強い物が、首の後ろあたりで弾むようにして押し当てられる。

「東君小さくて可愛いねぇ」

 僕の頭を撫でながら、雪村さんは少しだけはなれた。

「雪村さん、暑苦しいです」

「雪村さん禁止!かえでちゃんって呼ぶように言ったよ」

 正直、僕は参っていた女性を「ちゃん」付けで呼んだことなどない、それに他の皆はこの人を「ちゃん」付けで呼んだ所を見たことがない、「ちゃん」付けするかどうか迷ったあげく僕は答えた。

「僕を東君って呼ばずに、アズって呼んでくれたら、言います」

「アズ」

 躊躇なし、そりゃそうだ。ちゃん付けと、僕のあだ名じゃ天と地の差があるのだから。

「うぅ…恥ずかしい!」

 顔を物凄く赤くして、雪村さんは僕から更に離れる、急にどうしたというのだろう。

「男の人の名前なんて初めて言ったよぉ!」

 いえ、あだ名ですしかも僕の名前は東ですそれに「君」付けで普通に呼んでました、人と違った感覚の持ち主ってのは多分こういう人の事だと、僕は思う。

「言ったよ、アズ…さぁどうぞ」

「か、かえ…かえでちゃん」

「よくできました☆」

 無邪気な人だ。

 彼女は部屋の中央に置いてあった、無線タイプのマイクを耳に付けると、ノートパソコンを開いてキーボードをカタカタと打ち出す、黒いウィンドウに文字が並ぶ、なにかのプログラムのようだが僕には理解不可能。黒いウィンドウが映像に変わる。

 映像に映っていたのはモエだった、モエがいる場所は何かの建物の中だった、壁紙は剥がれ所々瓦礫で道が塞がれていて、鉄骨が剥き出しの部分が多い。

 かえでちゃんが、無線タイプのマイクのスイッチを入れると話始めた。

「モエ、聞こえる?」

「聞こえる、ターゲットはまだ姿を出さない」

「クエスちゃんが向かってるから、彼女が来るまで待機してね」

「了解」

 映像の向こう側のモエとの会話を終えて、さらに映像を展開していく。まさに凄腕ハッカーという相応しい存在だ。

 そう言えばクエスがここの人間は同じようだとか言っていたが、かえでちゃんは他の人より普通に見える。

「かえでちゃんは、なんでこのサークルに?」

 彼女は無線タイプのマイクをテーブルに置いてため息を深くついたて、怖い目で僕を見て言った。

「人をおとしめる仕事を生きる糧にしてた頃に、クエスちゃんに助けられたの。仕事は個人情報の売却」

 随分物騒な話しだ、世の中は便利になると必ずこういった、ハッカーが皮肉にも活発化する。

「ある日、尻尾を警察に捕まれちゃって逮捕寸前まで行ったよ、その時私を逃がしてくれたのが、クエスちゃん。逃がす変わりにサークルに入って手を貸すって約束で私はここにいるの。」

「へぇ~」

 世界広しと言えど、僕達みたいな変人の集まりは多分此処だけ、アンデッドヒーローズのみだろう。かえでちゃんはノートパソコンから離れて、僕に歩み寄る。

「君はなんで此処に?」

「クエスを助けたんだ、暑さで倒れてたところをね。」

 あの時彼女を助けてなかったら、僕は今頃きっと家にこもりっきりの夏休みを過ごしていただろう、そういう意味では僕を外に連れ出してくれた恩人と言えるだろう。

「ここのメンバー、つまり桐生さん、モエ、私はクエスちゃんに少なからず助けられて、ここにいるんだけど君は特別みたいだね。」

「特別か…」

 


 僕は小さい頃から見たものをそのまま完璧に真似る事ができる、一ミリの誤差もなく。これを僕のおじいちゃんはお前にしかない特別な能力だと言った。僕はその反面自分が怖かった、普通なら喜んだり誇りに思ったりするのに、僕は普通から逸脱した事に物心ついた頃から、怖かったのだ。

 理由はわからない、ただこのままだと、何かを失いそうだと気づいていたような、気味の悪いなにかが自分を押しつぶしにくるような気がして嫌だった。いつしか、特別扱いされるのが嫌いになっていた。


「クエスちゃんが配置に付いた、モエ状況は?」

「変わらない」

気がつくと、かえでちゃんはノートパソコンに戻り無線タイプのマイクをまた装着していた。

「アズ、みてて吸血鬼狩りが始まるから! モエやっちゃって!」

 嬉々とした表示でかえでちゃんは言った、映像の向こう側のモエは、しばらくしてからビルの中でナイフを構える。

「来たわ! 二体! 上の階から」

「了解!」

 映像の向こう側のモエのいるビルの上の階から人影がものすごい速さで降りて来る。

「そこ!」

 モエが片方の人影の胸にナイフを投げて仕留める、もう片方は近寄り足を蹴りで払って、ひざまずいた所で顔を両手で捕まえてから、嫌な音が響くまでひねった。

「お疲れ様モエ、もう一体はクエスちゃんが見張ってるから戻っていいよ!」

「了解」

 モエが倒した人影は、砂となって消えた、人間は砂にはならない…これが吸血鬼、本当にいるとは驚きだ。

「あと一体か、クエスならやれるよね?」

 僕は心配だ、彼女は力もなさそうに見えるし、身長も僕より少し低い、そんな女の子が奇妙な奴と殺し合うのだから。

「大丈夫だよ、クエスちゃんには目があるから。そろそろ夏コミだなー同人誌仕上げないと」

 なんだ? いきなり緊張感のないセリフに少し驚く、そういえばクエスが「普段は、同人誌や同人ゲーム」を作ってるなんてセリフを吐いていたのを思い出した。

「どんな同人誌?」

 興味本位に質問を投げかけてみた。

「よくぞ聞いてくれました! VOCALOIDのR18指定の同人誌さ!」

 聞くんじゃなかった、そんな事に少しだけ興味引かれた自分が嫌になる。別の部屋で少しくつろごう。

「なんじゃこりゃ!」

 僕が他の部屋の扉を開けて、中に入り扉を閉めてから叫んだ。視界に入っきたのはエロゲーの山、キャラクターのタペストリー、今までの創作物と思わしき同人誌それも全てR指定!

 ダメだ、こいつら早くなんとかしないと。ちょっとした新世界の神になりそこなった人間のセリフを頭の中に連想する。


 それから数時間


「戻った。」

 クエスが、玄関を開けてすぐに、リビングのソファーに寝転ぶ。服が汚れていて、かなりボロボロだ。

「逃がした! 不覚!」

「逃がしちゃったの? 仕方ない明日また探し直そう、今日は同人誌仕上げちゃお?」

「わかってる」

 かえでちゃんとクエスは先程僕が見てしまった、いかがわしさ満載の部屋へ入っていく。

 窓から夕日が差し込む、もうこんな時間か、僕は二人に帰宅を伝えビルを降りた。

 「今日はなにもしてないのに疲れた感覚がする、ふぅ」

 夕暮れの帰り道、蒸し暑さの中人気の少ない道路をフラフラと歩いていると、紫色の髪の色をした珍しい恰好の女の子が道端で倒れていた。前に見たことある光景だ。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だ、問題ない」

 このくだりは二回目だ、ヤレヤレ勿論このミステリアス極まりない人も、どこかの誰かさんの如く、大丈夫じゃない、大問題だ。自分の家まで運ぶ事にした。


「生き返ったー」

 このミステリアス極まりない人は僕の背中で顔だけを上げて、そう言うと背中から降りて靴を脱ぎ、僕の部屋でくつろぎだした。

「あ、そうだ ありがとうございます」

「別に気にしなくていいよ、なんであんな所で倒れてたの?」

「私、吸血鬼で日の光に弱くて」

 勘弁してくれ、吸血鬼? クエス並みに危ない厨二病か? 

「さっきまで両目の色の違う子に殺されかけてて、そのせいで外に出る事になっちゃって」

 まてよ? 両目の色が違う? おいおいクエスが退治しようとしてた吸血鬼ってまさかこの人か、吸血鬼には見えないな。

「仲間も随分減らされちゃった」

「仲間って吸血鬼の?」

「あれ? 信じてるんですか? 意外です。」

「君が吸血鬼なら僕は殺人鬼だよ、仲間だし、似たようなもんだ」

 心にもない言葉、最近有り得ない事につきまとわれてるせいかな? 

 僕は彼女に軽く自己紹介をした、彼女の名前は吸血鬼には似合わない、至って普通の名前「吉野春」というらしい。

「はぁ、これからどうしよう」

 吸血鬼が深く溜め息をついた、そのセリフは僕も言いたいが、今は止める事にした。

「血が吸いたい…」

 わーお、さらっと怖い発言を言わないで欲しいな。吸血鬼は僕を亀のような目で見つめだす。

「冗談だよー私は血必要ないし」

「ん? 吸血鬼って普通は血を吸うのが食事じゃ?」

 彼女は首を思いっきり横に振る、長い髪が大きく揺れる。

「私は吸血鬼だけど、半分人間なんだハーフって奴だよ。お母さんお父さんはついさっき殺されたけどね」

 またさらっと怖い事を言う、父と母がいないと言う話はもう聞きたくない。嫌気がこみ上げてくる。

「これからどうするの?」

「かくまってくれない? 殺人鬼…」

 僕を殺人鬼と言った吸血鬼の顔は少し困った様子、匿うのは構わないが、明日にでもクエスは彼女を殺しに来るだろう。

 なんとかしないとな、彼女は血を吸わないらしい、なら危険性は皆無だ事情をクエスに説明すればいい。

「わかった、しばらくここにいていいよ。」

「ありがとう、あなたいい人なんだね」

 そういうと彼女は壁の方に背中をよりかけて目をつぶった。

「布団ならあるけど?」

「初対面の人とは寝ないのが普通」

「いや、使っていい僕は布団で寝ないから」

「そう、ありがとう」

 僕は布団を床に敷いて、彼女が眠りに着いたのを確認してから、壁に背中をよりかけて眠る事にした、外は既に夜で月灯りが窓から静かに部屋に、差し込んでいた。

 

「そろそろ寝たかしら」

オキロ、エモノダ

「それじゃ、いただきます」

コロセ!


 



 




殺人鬼と吸血鬼のお話しが次回からメインになります、多分ですが。


また次回で

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