奥さんお独りですか
【前回のあらすじ】
各国首脳が宇宙人の存在と、彼らが既に地球上に到来していることを公式に認めた直後…
世界各地で暴動が発生し、地球は未曾有の大混乱に陥りました。
未知なる事態に直面した時、人は直接的な力の行使に訴えざるを得ないのでしょうか?
それで現状の不安が解消されるはずもないのに…。
そして我が家の周辺では、うちへ避難してきたミユちゃん一家が、暴徒と化したご近所の方々に暴行を受ける事件が発生。
さらには私自身も大学までの通学中、マスコミ記者らしき男から陰湿な強行取材を受けるなど、周辺にまで危険が及び、他人事とばかり言ってられない事態に発展しました。
もう、このままではいられません!
ネットを介して生配信を敢行した私は、自分も宇宙人であることを認めた上で、私達には地球侵略の意思など毛頭なく、ただ今まで通り、此処で平和に暮らしたいだけなのだ…と涙ながらに訴えました。
世論はすぐさま大きく動き、私たち宇宙人も地球人の仲間として受け入れようとする動きが急拡大。
世界は再び落ち着きを取り戻しつつあります。
ですがその際、自身が絶滅希少種族『ルナリアン』であることを公言してしまった私は、今度は宇宙中から狙われる身となってしまい…。
今まで以上に身を挺してでも私を守り抜くと決意を固めた旦那様・シドさんのお気持ちは本当に嬉しかったのですが…それがまさか、こんな事態を招いてしまったなんて…!
街中で夫婦デートの真っ最中、先日のマスコミ記者とバッタリ出くわしてしまった私は、彼が警官から強奪した拳銃で撃たれかけて…!
絶対絶命なその時、約束通り私を守り抜いたシドさんは、身代わりとなって凶弾に倒れ…。
嘘…ねぇ、こんなの嘘でしょ…?
嘘だと言ってよッ、シドさんっ…!!
◇
街中をノンストップで走り抜ける救急車。
サイレンとロードノイズがけたたましく鳴り響く車内で…
「シドさん…シドさん…っ!!」
同乗した私はすっかり取り乱して、ただただうわ言のように彼の名を呼び続けるだけ。
目の前には、横たえられたストレッチャーにベルトで固定された彼の身体が、車にフラフラ揺られています。
胸元にパックリ穿たれた銃創には、止血ガーゼが幾重にも貼られていますが、溢れ出す鮮血ですぐに真っ赤に染まって…。
外傷が酷すぎるため、救急隊員たちもそれ以上の処置はできず、搬送先への到着をひたすら待ち侘びています。
「奥さん、気をしっかり持って!」
油断すれば、すぐさまシドさんにすがりつこうとする私を、隊長さんが辛抱強く取り押さえながら励まし続けてくれます。
「で、でも…もう、こんなに冷たくなって…!」
救急車に運び込まれる前に、激しく揺さぶってしまった彼の傷口から、私の顔に飛び散った返り血のゾクリとするような冷たさに、思い出すたび震えが走って…
「そう…それです!」
「…え?」
「いくらなんでも、短時間でこんなに急激に体温が低下するなんてあり得ない」
…思えば、確かに隊長さんの言う通りです。
考えたくもありませんが…仮にシドさんが死亡していたとしても、わずか小一時間で、触れた他人が冷たさを感じるほどになるなんてことは、普通の人間なら考えられない状況です。
「私も、宇宙人の方を搬送するのはこれが初めてですから、憶測の域を出ませんがね…。
これは傷病者が自ら、あえてそうしているとしか思えない…!」
体温を下げて…仮死状態…『コールドスリープ』!?
シドさんは、絶対絶命下での生命維持のため、あえてその状態に…?
「ご家族にこんな不確実なことを伝えて、いたずらに希望を持たせようだなんて、プロ失格もいいところですがね…。
この方は地球人ではなく、我々にとっては未知の宇宙人…となれば、まだ一縷の希望が…」
「…え?…う、嘘だろ…!?」
私を勇気づけようとする隊長さんの言葉を遮り、新米隊員さんが素っ頓狂に叫びます。
「どうしたっ!?」
「み、見てください…コレッ!」
つられて叫んだ隊長さんに、新米さんはブルブル震える指先で…シドさんの銃創を指し示します。
彼は鮮血に染まった患部の止血ガーゼを、新品に交換しようとしたようですが…
見れば、凶弾に深々と抉られたはずの、その傷口が…
「傷が…治りかけてるっ!?」
そう…先日、エイラス人の触手に肩を貫かれたラリスくんと同様、普通はそう簡単には治るはずもない傷口が…ほんの短時間で周辺から盛り上がり、ほとんど塞がりかけているのです!
「そ、そうか。やはり、この患者さんは…
奥さん。あなたの旦那さんは、まだ生きてます。」
…!
「懸命に、生き抜こうとしているんですよ。
あなた一人だけ遺してなるものかって…!」
「あ…あは…っ!」
思いがけない吉報に、とうに涸れかけた涙が再び込み上げてきて…私は泣き声とも笑い声ともつかない声をしゃくり上げます。
「あ、いや、ですけど…この出血量じゃ…」
廃棄バッグに堆く積み上がった大量の止血ガーゼを見て、新米さんは声を落とします。
確かに…現場に残してきたシドさんの血溜まりはかなりの大きさでしたし、車内での出血も相当なもの。普通の人間ならとっくに死んでいてもおかしくありません。
せっかく希望の地が見えた途端、暗礁に乗り上げてしまった船乗りの気分です。
「それに…宇宙人に輸血ったって、何をどうすればいいんですか? こんなの、普通の病院の手には…」
新米隊員さんの素朴な疑問に、皆ハッとさせられました。
宇宙人にも血液型は当然あるでしょうけど、それが地球人のものと一致する保証はありませんし…
そもそも、血管の位置は地球人と同じなのか? そこから普通に輸血して良いものか? それすら判らないのです。
下手をすれば、ストーブにガソリンを注いで爆発炎上させるような事態になりかねません。
根本的なところで躓いてしまいました。
某SF映画だと、見るからにもうダメかに思われた宇宙人が、終盤あたりで突然なんの説明もなく、超能力的な摩訶不思議パワーで完全回復したりしますけど…そんなご都合主義、現実にはあり得ません。
あぁ、このままじゃ…シドさんが…っ!?
「はい…はい、そうですが…えっ!?」
そのとき、助手席でどこぞと無線連絡を行なっていた別の救急隊員が、意外そうな声を上げました。
「…り、了解。至急、そちらへ向かいます!」
「…今度は何だ?」
度重なる想定外な事態に辟易していた隊長さんが、うんざりした様子で問うと、
「本部から搬送指示が出ました。『永蘭病院』が受け入れるそうです!」
「永蘭だと?…解った、行け!」
病院名を聞いた隊長さんは、助手席の隊員さん同様に怪訝な顔色を浮かべつつも、渋々了承します。
とにかく行ける治療場所があれば、すぐに向かうのが救急搬送の原則ではあるものの、
「永蘭て…あの? でも、あそこって…」
私を散々不安がらせてくれた新米隊員さんまでもが首を捻りはじめたことで、やっと搬送先が決定したというのに、車内を微妙な空気が支配します。
「あ、あの…?」
大切な旦那様をどこへ持っていくつもりなのかと、私が不安を露わにするよりも早く、
「…見えてきました。あそこです」
隊長さんの回答に呼応して、件の病院の建物が目の前に現れました。
…なる…ほど? これは、また…皆さんが怪訝になる訳ですね…。
◇
ようやく到着した『永蘭病院』は…閑散とした街外れに忽然と建つ、一見して何の変哲もない極々フツーの…いわゆる"町医者"でした。
地上三階建ての小ぢんまりとした病棟に、院長先生の御自宅と思しき古式ゆかしい日本家屋が隣り合った、どこからどう見ても完璧すぎるほどの"町医者"です。
こんな場所に大量輸血などが行える救急設備が、はたしてマトモに備わっているのかさえ疑わしい雰囲気ですが…
「しかし、本部の指示はやけに具体的でしたし…ここには何かあるのかも…」
「はい、もちろん何かございますとも。
ですが今は一刻を争いますので…後はこちらにお任せください!」
すぐさま院内から飛び出してきた医療スタッフが、隊長さんの疑問に手短かに答えます。
緊急という割には、どこか余裕が漂うその様子に、そこはかとない安心感が得られました。
シドさんを乗せたストレッチャーが慌ただしく転がされていく最中…
婦長…現在は看護師長さんですか?らしき、いかにも大ベテランな女性看護師が、落ち着き払った態度で私を案内します。
ここまで助けて頂いた救急隊員さん達にお礼を述べてから、私も急いで皆の後を追います。
「こちらの病院は、一般診療も行ってはおりますが…早い話が、宇宙の方々御用達ですので。」
あぁなるほど、一発で納得しました。
案内がてら聞かされた話では、ここは政府が宇宙人の存在を認識する遥か以前から、そうした方々の治療を担ってきた、知る人ぞ知る名門なのだそうで。
それがこのほど公に認知されたことで、晴れて堂々と表に出られたと、彼女は得意満面に語りました。
「…で、こちらが手術室になります」
「って…え!? 何処ですかここ!?」
ストレッチャーを追ってエレベーターに乗って出た先には…先日、大学の地下で見たのと同様な、いかにもSFチックな大空間が広がっていました。
でもこちらの方は、鄙びた地上部分との落差があまりにも凄まじくて…気分はすっかり『不思議の国のアリス』です。
「地下二百メートルくらいですね。アナタが通われている大学とも繋がってますよ」
どうやら宇宙人たちは地球の地下空間に広大な拠点を築き上げており、各々の施設同士はアリの巣みたいに接続されているそうです。
これは…一部の地球人に侵略云々と非難されても、否定できない規模ですね…。
そして、目の前にある部屋のドアの真上には、お馴染みの『手術中』ランプが赤々と灯っています。
「ご主人はモーント人ですね? 当該する血液は十二分な貯えがございますので、どうかご安心を」
後ほど詳しく聞いたところによれば…
地球の密猟者と同様、武装している場合が常な宇宙中の敵を相手にする『保護管理官』は、命懸けの危険なお仕事。
そして、その構成員の大半は、組織発足の原動力となったモーント人が担っています。
従って、いつ如何なる場所で不測の事態に見舞われようとも即座に対応可能なように、モーント用の医療品は優先的に充実させてあるんだそうで…。
これなら気兼ねなくお任せできます。
「よ、よろしくお願いしますっ!」
「では、私はこれで」
頭を下げる私に気さくに応じた看護師長さんが、颯爽と引き上げていくのと入れ替わりに…
「…お姉さまっ!」
エレベーターを降りたミユちゃんが、私を見つけて駆け寄ってきました。もちろんラリスくんも一緒です。
お隣さんな彼女がお見舞いに姿を見せること自体は、なんら不思議はありませんが…
「…意外な場所で会いますね?」
「ココ、うちの掛かりつけの病院なんですよ。あたしも小っちゃい頃に何度かお世話になりました」
今でもじゅーぶん小っちゃいミユちゃんは、元気そうな今の姿からは信じられないほど、幼い頃には病弱だったそうで…。
でも、身体つきが小柄すぎるのはそれが原因ではなく、多分に遺伝的要因と思われますけど…彼女同様に小柄なご両親を見るに。
「…んで、センセは何やらかしたんだ?」
「やらかされたんですよ。先日、私にムチャ取材を敢行して連行されたマスコミ記者に、私をかばって撃たれて…」
という私の手短かな説明に、ラリスくんはハァ…と頭を抱えて、
「…ま、ここに担ぎ込まれたなら大丈夫だろ。死んだ奴でも生き返る場所だからな」
それを聞いて安心しました。やはり地球の医療技術よりは進歩してそうですね。
「にしても、そいつぁますます穏やかじゃねーな。どーせ、よく駅前でビラ撒いてやがる奴らのお仲間だろ?
あの『宇宙人反対派』の連中、そろそろどーにかしてやんねーと…」
危機感を募らせるラリスくんに、すっかり気が動転して忘れていた記者への怒りが、今頃フツフツと湧き上がってきました。
あの記者が、その団体に所属しているかは現時点で定かではありませんが…似たようなモノです!
「もう既に、説得なんかが通じる相手じゃなくなってますしね…」
出会い頭に一方的な敵意を突きつけてきた、あの記者の不気味な笑いを思い出すだけで、反吐が出そうになります。
単なる個人的主張で済むならまだしも、気に入らない者は強制排除、たとえ犯罪行為に及ぼうとも手段を選ばず…という独裁政権めいた彼らの方針は、到底許し難いですね…。
事実上の犯罪者集団ですよ!
「…あ!」
急に間近で上がったミユちゃんの大声に驚いて、辺りを見回せば…『手術中』ランプが消えていました。
って、え? こんなに早く? シドさんが入ってから、まだ三十分も経ってませんけど…まさか…!?
急に胸がざわめいたところで、手術室のドアが開き、中から執刀医らしきお医者さんが一人で出てきました。
「え〜っと…あなたが奥さん?」
一見して若い子ばかりが居並んでいる様子に戸惑いを見せたものの、その中でいちばん年長者らしき私の、左手の薬指に光る結婚指輪を目ざとく見つけたお医者さんが声を掛けます。
「はっはいっ、私がシドさんの奥さんですっ!」
「ほぉ、これはこれは…何から何まで幸運な旦那さんだ」
緊張のあまり若干キョドッた返事をした私に、お医者さんはマスクを外して…予想外に朗らかな笑顔を見せます。
と、ゆーことは…
「ええ、私が診た時点で、ほとんど治りかけてましたよ」
良かった…シドさん…。
ラリスくんが全然慌てていない時点で、ある程度は安心できてましたけど。
「…で、でもあの、あれだけ大量の出血を、この短時間で…?」
「彼らは思いのほか頑丈ですからね。テケトーに注ぎ口開けて、ありったけの血液製剤ブチ込めるだけブチ込んで、また蓋しとけばすぐ走れるようになりますよ♩」
セルフスタンド方式!?
確かに地球の現代医療も、要は切った貼っただけとはいえ、なんってテケトーな…。
「あーそうそう。弾もキレイに貫通してたんで、取り出す手間も省けましたよ」
と、血まみれの凶弾がコロンと転がったシャーレを取り出し、お医者さんは私をからかうように、
「記念に取っときます?」
要りませんよっ、そんなモン!と首をブルブル真横に振る私の様子に、お医者さんはますます陽気にカラカラ笑いました。
◇
シドさんを執刀した彼は、やはり永蘭病院の院長先生でした。
純然たる地球人とのことですが、先祖代々ここで宇宙人の治療にあたってきたおかげで、普通の医師の比ではないほど高度な知識と技術と経験を得られたそうです。
「旦那さんは、被弾する直前に擬態を解いたようですね。それが良かった」
「え…意識がなくなったから擬態が解けたんじゃ…?」
「その程度じゃ解けませんよアレは。それなら今頃、地球はとっくに正体がバレた宇宙人の死体だらけになってますよ。ワハハッ」
納得はできました…けど、言い方!
笑って言うことでもないですし…医師としてのモラルには甚だ疑問が残る人物ではありますね。
「実はモーント人てね、見た目は地球人に近いものの、体組織や臓器の位置関係には結構な違いがあるんですよ」
そのおかげで、凶弾にあれだけ胸を抉られながらも、心臓や主要臓器はことごとくダメージを被らずに済んだようです。
「そうなることに期待して、あえて自ら擬態を解いたんでしょうな。さすがは著名な生物学者さんなだけのことはある」
加えて、出血した血液の凝固時間が地球人よりも幾分早かったことや、仮死状態化して体機能を維持できたこともプラスに作用したとか。
てゆーか…やっぱり、宇宙って広い。そんなファンタジー世界みたいなあり得ない身体機能の持ち主が、普通に存在するなんて…!
そして、あの一瞬でそれだけの判断を咄嗟にこなせるシドさんって、やっぱりスゴイ…!
「逆に言えば、仮に地球人形態のまま被弾していたなら、今頃はもう…。
そうまでして身体を張ってでも奥さんを守り抜いただなんて…いやはや、ラブラブですなぁ♩」
シドさん…。
"僕の命に代えてでも、絶対キミを守り抜く…!"
誠実な…誠実すぎる彼は…本当に、私に誓った約束を、愚直に守って…。
「…おっと。縫合が無事に終わったようですな」
院長さんの言葉に合わせて再び手術室のドアが開き、ストレッチャーが運び出されてきました。
その上に寝ているのは…シドさん。
救急搬送時の生死不明な状態から、見違えるほど穏やかな、いつもの彼の顔つきに戻って…。
「良かっ…た…」
心の底から安心できた途端、全身の力がガクリと抜けて…
「お姉さまっ!?」
「ウサ子っ!?」
ミユちゃんとラリスくんが慌てて私を助け起こします。
あ…ラリスくんに名前呼んでもらったの、初めてかもしれませんね。といってもニックネームですけど。
てゆーか、ウサ子って何?…あぁ、美沙"兎"だからか。
カワイイとは思うけど…私のことは、ちゃんと『お母さん』って呼んで…。
「だいぶん心労が溜まってたんだろうね。
旦那さんと一緒に、ゆっくり休んでもらおう」
院長さんの優しい気遣いに癒されながら、私は意識を失っていきました…。
◇
「…知らない天井だ…」
お約束のセリフとともに視線を彷徨わせれば…ここはどうやら、病室みたいですね。
あぁ、そっか。私、手術室前で倒れて…。
窓の外はもう、穏やかな西日に覆われていて…結構な時間、眠ってしまったようです。
「お目覚めかい、お姫様?
…うわ、いざ口にすると照れるねコレ」
いまいち決まりきらないキザなセリフ回しに、ハッとして見上げれば…
「すっかり立場が逆転してしまったね。僕達らしいけど」
付き添い用ベッドより一段高い患者用ベッドの上から、シドさんが私に微笑みかけていました。
「ついさっきまで、ラリスとミユちゃんもいたんだけどね。気を利かせて、先に帰っちゃって…」
「シド…さん?…シドさんっ!」
説明そっちのけで思わず跳ね起きた私は、そのまま彼のベッドに飛び込んで…!
「ア痛タタちょっと待ってちょっと待って! まだ傷が塞がりきってないんだから…」
「ごめんなさい…ごめんなさい…っ」
もう何に謝ってるのか、自分でも解りませんけど…それでもシドさんにしがみつくのを止めない私は、彼の温もりを存分に味わっていました。
もう二度と会えないと思っていた彼を…
もう、絶対に手放したくなくって…。
「僕のほうこそ…ごめん。どれだけ守り抜いたところで…キミをそんなに悲しませてしまうようじゃ、何の意味もなかったね…」
いつもみたく、子供をポンポンあやすように私を慰める彼の手が…次第にブルブル打ち震えます。
「本当…カッコなんてつけるもんじゃないね。
今度こそ…ダメかと思った…」
今まで何度も危機的状況を乗り越えてきた彼でも、ここまで深手を負ったのは初めての経験だったようです。
「こうして目覚めるまでの間…ずっと夢の中を彷徨ってたんだ。
何も無くて、誰もいない…いくら探しても、キミがいない…夢の中をね…」
震え続ける手で、シドさんは私の身体を抱いて…自らのベッドの中へと誘います。
「そして…やっと気づいたんだ。
たとえどちらかが助かったって…キミがいなきゃ…僕がいなきゃ…二人揃ってなきゃ、ダメなんだって。
僕はね、ミサさん。キミを失うことが…いつの間にか、他の何よりも…怖くなってたんだ」
空色の瞳の端に涙を浮かべて、私の顔に頬を寄せた彼は…その唇で、私の唇を塞ぎました。
いつもの子供じみた、軽い口付けとはまるで違う…とても情熱的な、大人のキスを…私達は初めて交わしました。
「目が覚めて、隣にキミがいるのに気づいて…ホッとすると同時に、僕は心に誓ったんだ。
もう、後悔なんて…絶対にしない。したくない!…ってね」
幾度となく私の唇を求めながら、彼の両手は私の身体をまさぐり続けます。
やがて、その手は服の中まで潜り込んで…邪魔な下着を押し除けて…。
そこにはもう、いつものオドオドした頼りない彼はいませんでした。
本能の赴くままに私を追い求める、一人の立派な…私が期待してやまなかった、大人の男の人でした。
「今さら…嫌だなんて言わせないよ」
「言いませんよ、今さらそんなこと。
でも…傷の具合は? さっきもあんなに痛がって…」
すっかり傷は塞がったものの、いまだに痛々しい痕が残る彼のたくましい胸板を、私はそぉっと撫で回して…ツンつくツンッ。
「ぉごぉあ…っ!?」
あ、やっぱり痩せ我慢でしたか。
「で、でも…キミを抱いてたほうが、きっと早く治ると思うよ?」
さすがに苦しい言い訳ですけど…嬉しいコト言ってくれちゃって♩
「クスッ。私はアナタの特効薬ですか?」
「あぁ。それどころか…全知全能の『女神様』だよ。」
またソレですか。まったくもう…。
「しょうがない仔羊さんですね。
でも、今は…狼さんのほうが恋しいかも」
「そうかい? じゃあ、遠慮なく…戴くよ。」
にわかに野生味を増した彼に求められるまま…私は身体を委ねました。
◇
病院が手配したタクシーに乗って自宅に帰り着いた頃には、とっぷり日も暮れていました。
宣言通り、私の身体を解放した頃にはすっかり回復していたシドさんでしたけど、経過観察のため、今夜はこのまま病室にお泊まりです。
本当は私も、愛しの旦那様と一緒にお泊まりしたかったんですけどね〜。
なんてゆーか、そのぉ…『行為』の真っ最中、様子を見に来た看護師長さんにエライとこ見つかっちゃいまして。
「ここはそーゆー場所じゃありませんっ!!」
って、追い出されてしまって…てへぺろっ♩
いーじゃないですかねぇ、今日はもともとその予定だったんだし、私たち夫婦的には治療の一環なのに…どケチBBA☆(←DQN夫婦的反論)
…でも、今夜一晩くらいなら、シドさんがいない独り寝の寂しさにも耐えられそうです。
だって…お腹に手を当てると、まだ、こんなに彼の温もりが…♩
…意味が解らないって人は、お父さんお母さんや学校の先生、お隣の優しいお兄さんお姉さんに訊いてみてネ☆
あ、でもさすがにまだ、ナカニ ダレモ イマセンヨ?
この分だと、割り合い近いうちにご在宅中になっちゃうかもしれませんケド。
改めて、惚れ直しましたよ…旦那様っ♩
…そして、当初の目的だった参考書の購入は、キレイさっぱり忘却の彼方に追いやられたまま帰ってきちゃいましたけどね…トホホォ。
「…やっと帰ってきたか」
私が玄関戸を開けるのを待って、リビングから顔を出したラリスくんが出迎えてくれます。
「はい、おかげさまでゆったり過ごせました♩」
「なーんか温泉行ってきた帰りみてぇだな。手術中は不景気なツラこいてやがったクセに、ちゃっかりくつろぎやがって」
そりゃ〜その後たんまり貯えて頂きましたからね。ンフフ♩
「あ、飯なら要らねーぞ。さっきまでウチ来てたポチ子に、散々食わせてもらったからな」
ミユちゃんもすっかり通い妻状態ですねぇ。
あれで色々気が利くし、なんでも器用にこなす子だから、将来はいい奥さんになりそう♩
「オメーも今日は疲れただろうから、はよ飯食って寝ろ」
いつになく優しいラリスくん…だけど、ちょっとおぢさんっぽいかも?
「その前に、お風呂頂きます。一日中バタバタしちゃってましたし…」
シドさんの残り香を洗い流すのは、ちょっともったいない気もしますけどね。
「あー風呂か…忘れてた。一日ぐらい抜いても良くね?」
「アナタはそれでいいかもしれませんけど…寄ってくる女の子達はどーでしょーかね?
ミユちゃんとか、いかにもお鼻が効きそうですし…犬型なだけに」
彼女を引き合いに出されると、ズボラな彼もさすがに「ムゥ…」と考え込みます。本当に良いお隣さんができたものです。
そこで私のイタズラ心がまたまた鎌首をもたげてしまって…
「なんなら…一緒に入ります?」
晴れてオトナになったからには、オトナの余裕を見せつけなきゃ!ですしね♩(←オトナ気ない)
「ん…そだな。そーすっか?」
……あれっ?
◇
かぽーん…かぽぽーん…。
何話目かぶりに謎の水音が静かに響くお風呂場には、一糸纏わぬ私と愚息の二人っきり。
…いったいどぼぢでこーなりましたか?
いくら"生物学的に"地球の女性に興味がないからって、少しは遠慮や常識ってものを身につけてほしいものですよ、ラリスくんには。
誘った私も、今さら冗談とは言い出せなくなってしまいましたし…。
まぁね、家族なんだから、一緒にお風呂に入るのはそんなにおかしなことじゃないかもしれませんけど。世の中には家族風呂を備えた旅館も多々ありますし。
それに…既に彼には、私の裸、あらかた見られてますしね。…どころか、おっぱいまで触られちゃってますし。
でも他人からは、家族とは全然みなされないティーンエイジでミュータントなニンジャスペースピーポー同士ですけど。
それに…先程までシドさんのアレやコレやを散々見せつけられた身と致しましては…どーしても、こう…必然的に、視線がそちらに吸い寄せられて…。
「…ふぃ〜、俺も入らせてもらうせ。もっと詰めろ化け乳。」
「化け乳ゆーなっ!」
ちょうと身体を洗い終わったラリスくんが、先に私が浸かっていた湯舟に入ろうと腰を上げて…
すかぽぽぽぽぽぉーーーーんっっ!!
瞬間、頭の中で謎の水音が、鼓のごとく超高速で打ち鳴らされました。
ば…化け物はどっちですか!?
な、ななっ…何ソレ何ソレッ!?
私が知ってる…てゆーか今日初めて見たのと全っっっ然違うんですケドぉ〜〜っ!?
確か、擬態後の容姿って当事者の精神年齢に大きく左右されるんでしたよね?
ならば、正統派王子様的に超絶美少年なラリスくんのルックスと完全完璧に乖離した、ヤ◯ザな方々も裸足で逃げ出すほど暴力的なソレは、どう説明つけるんですかーっ!?
「ほれ、もっとそっち寄れって」
「む、無理…こんなおっきいの…ひぎぃっ!?」
湯舟に無遠慮に分け入ってくる彼のソレが、目と鼻の先にっ…ヒィッ!?
嗚呼、なのに怖いもの見たさか、どーしても目が釘付けになって…っ。
お、おおお子様がそんなのお持ちになってて、いいと思ってるんですかっ? 凶器携帯罪でタイーホされちゃいますよっ!?
「あーもー、そのでっけぇ肉袋が邪魔なんだから…こーすりゃいいだろ?」
「化け乳とか肉袋とか、母親をなんだと」
ザパァッ! トプンッ!
「ってちょちょちょお〜っ!?」
憤慨する私を、猫の子みたいにヒョイっと摘み上げてクルッと前後反転させたラリスくんは、私の上半身を湯舟の壁に押し付けて、乳房を縁の外へとこぼれ出させました。
さながら、ネタが器の外にまでハミ出してビロ〜ンと垂れてる海鮮丼です。あーゆーのは見映えが悪すぎて、私はあまり好みませんけど。
というか女体盛りなら、むしろそっちがメイン食材でしょうに、あえて器の外に放り出すという斬新すぎる盛り合わせです。
ちなみに、ひと回しする際に湯舟からネギのように軽々引っこ抜かれた私は、彼に全身余すことなく見られてしまい…ぅぅっ。
そして、その結果…
「ンだよお前、無駄にバカでけぇのは乳だけじゃなく尻もかよ? あ〜邪魔くせぇ…!」
そこまで文句言うなら無理やり入らなきゃいいでしょーが!? そして私もなんで今さら文句言ってますか!?
しかも、このポーズ…私のお尻がラリスくんの両脚にまたがった状態になって…必然的に、お股の付け根に彼のビッグダディがコッツンこっつんノックを繰り返して…途轍もなく危険な状況になっちゃってるんデスけど…っ!?
今さらながら、私は我が子とこんなトコで何やってるんでしょ〜か…ドキドキっ。
「ったくよぉ…センセも物好きだよな。いくらカワイイからって、こんなムダ脂肪の塊に命まで賭ける必要あんのかよ…?」
ムダ脂肪…っ。私いちおー、宇宙規模でありがたがられてる女神的美貌の持ち主らしいんですけどね?
などと反論したいのも山々ですが…
「俺より全然弱っちいクセに、無茶しやがって…」
背中越しに伝わる彼の声のトーンが、急に湿り気を帯びてきたことに気づいた私は…思わず押し黙りました。
そういえば、ラリスくんとシドさんはもうずいぶん長くコンビを組んできたらしいですけど…その辺のお話、まだ聞いたことがなかったですね。
私としても、彼の過去話は旦那様のことと同じくらい気になるし、妻として知っておいたほうがいいかもしれません。
「…教えてください。シドさんのことも…アナタのことも」
「ヘッ…つまんねー話だぜ?」
◇
遥か昔、銀河の彼方…ではなく、渦巻く銀河のほぼ中心に、ラリスくん達『グラビス人』のかつての母星が位置していました。
それは地球とは比較にならないほどの大質量を誇る超重量惑星で…それ故にそこで生き抜く生命体は、過酷な環境に耐え得るだけの強靭な巨体を手に入れました。
けれども…やがて、肥大しきったその星は自重に耐えきれず…ついには自滅し、巨大なブラックホールに成り替わりました。
ラリスくんがこの世に生を受ける、何千年も、何万年も…気が遠くなるほどの大昔です。
以来グラビス人は、宇宙の星々を渡り歩く宇宙難民と化します。
宇宙にはこのように、自らの母星を失った種族が無数に存在し、特定の星に定住する種族よりも遥かに多いほどです。
故にこの物語では、宇宙人を『異星人』や『◯◯星人』と呼称することは極めて珍しいのですが…閑話休題。
もちろん、どこぞの特撮ドラマに出てくる悪い宇宙人みたいに、単独で他の星を征服しようと目論むような身の程知らずなんて、現実的にはいる訳がありません。
たとえどんなにファンタジックな世界であろうとも、皆、堅実で地に足のついた生活を送っています。剣や魔法や腕っぷしの強さだけでヒーローになれる訳がないのです。
当時のラリスくんもそうした放浪生活を続け、なんとか食い繋ぐ日々を送っていました。
父親は物心ついた頃には既になく、女手ひとつで息子を育て上げた母親も、貧困生活による心労の末、彼が仕事に就ける年齢に達したのと入れ替わりに病死しました。
天涯孤独となったラリスくんですが…考えようによっては自分が生き延びることさえできればそれで良いため、悠々自適な日々を謳歌していました。
それでも、まぁ…他に身寄りも後ろ盾も、親しい友人もいない彼には常に、孤独な寂しさが付き纏ってはいましたが…。
「…よっと。こんなもんでいいのか親方?」
「ご苦労さん。いやー助かったぜ、さすがはグラビスだな!」
大きな岩をこともなげにどかした巨人形態のラリスくんに、工事現場の現場監督から賞賛の声が飛びます。
学も技術もない彼が唯一就けるのは、こうした土木工事の作業員。重機や爆薬を必要とせず、力尽くで地均しが可能な彼らは、この手の仕事では重宝がられていました。
「これでお前の仕事は終わりだ。今日までよく頑張ってくれた。給料は多めに付けといてやったからな。機会があったら、また頼むぜ」
しかし、大まかな整地ができてしまえば、大飯食らいで燃費が悪い彼はすぐさまお払い箱。
長続きする仕事はなく、こうして方々の現場を渡り歩いていました。
その日も、仕事帰りに市場でさっそく様々な料理を大量に買い込んだラリスくんは、街外れの森の片隅へと帰ります。
そこで見つけた穴ぐらを寝床として、野宿生活を送っていたのです。頑丈な身体を持つ彼は、どんな場所でも生き延びられます。
ちなみに、穴ぐらの中はグラビスの巨体には狭すぎるので、現地人に擬態して過ごします。
以前にも説明しましたが、擬態に必要な器具は宇宙では一般的に市販されており、それで変身した姿は現地の環境や本人の精神年齢に大きく左右されます。
この地でのラリスくんは、現在の男子中学生よりは幾分大人びた、屈強な青年の姿をしていました。
「…ぅをっ!?」
食事中、なにやら気配を感じて振り向けば…そこでは一匹の巨大なトカゲが、彼が頬張る料理の数々を、細長い舌でチロチロ舌なめずりしながら物欲しげに見つめていました。
背丈はラリスくんと同程度ですが、いかにも爬虫類然とした長い尻尾や、まるで女性モデルのように高い頭身、細くしなやかな手足を有する分、身体の端から端まで含めた全長は一回りも二回りも大きく…
よくよく見れば、そこはかとない気品すら漂う、とても美しい生き物です。
トカゲというか、細長い首に大きな翼を持った…いわゆるファンタジー作品における『ドラゴン』そのものな見た目です。
実はそれは、現地で恐れられる伝説級の珍獣だったのですが…ラリスくんにはもちろん、そんな知識はありません。
ですが、それは一向に襲い掛かる気配も見せず、ただひたすらに彼が手にした料理の数々を見つめ倒しています。
「…お前も食いたいか? なら、こっち来い」
たった一匹で腹を空かせた獣に、自分と同じ孤独の影を感じ取った彼は、気兼ねなく食事を提供しました。
餌付けされた獣はすぐに彼に懐き、以来、毎日のように穴ぐらを訪れるようになります。
言葉は一切通じませんが、獣がラリスくんを信頼しきっていることくらいは伝わります。
こうして互いに孤独だった一人と一匹は、この地で初めての友人…いえ、もはや家族と言っても良い、かけがえのない存在を得たのでした。
養う者ができれば、仕事探しにも俄然力が入ります。
ラリスくんは毎日のように市場に出かけ、自分にできる仕事であれば何でも請け負い、次第に町の人々の信頼を集めていきました。
「…なんだ?」
その日も、いつものように市場へと出向いた彼は、町の様子がいつもと違うことに気づきました。
町外れに集まった大勢の人々が、なにやら口々に叫んでいます。
「やれやれ、やっと倒せたぜ…」
「なんてしぶとい奴だ!」
「こんなトカゲ野郎に、いったい何人やられた?…クソッタレがッ!」
トカゲ野郎…?
嫌な予感がして、群衆を掻き分けたラリスくんが見たものは…
寄ってたかってなぶり殺され、既に生き絶えた、あのドラゴンの亡骸でした。
「おう兄ちゃん、アンタは大丈夫だったか?」
「コイツが突然、町を襲ったんだよ!」
「畑は潰されるわ、何人も引き裂かれるわ…えらい騒ぎだったんだぜ」
「ったくよぉ…なんでいきなり町中に入ってきたんだ?」
「今までは森の中でも、出くわした奴は滅多にいないほどの臆病な獣だったじゃねーか?」
「さぁな。誰か餌でもやっちまったんだろ?」
…町の人々の話で、大体の事情は察しました。
要は、ラリスくんが餌付けしてしまったばかりに…人里の味を覚えた獣は、空腹に耐えかねて町を襲ったのでしょう。
ならば悪いのは明らかに獣側であり、町の人々はそれを退治したにすぎません。当然の成り行きです。
たしかに理屈は解ります。
けれども…大切な家族を殺されて、黙っていられる人なんて、いないでしょう。
巨人化したラリスくんは、手当たり次第に暴れ回り…駆けつけた兵士達に取り押さえられた頃には、馴染みの町は半壊していました。
それでもいくらかの理性は残っていたのか、犠牲者が一人も出なかったのは幸いでしたが。
こうしてラリスくんは、せっかく築き上げた町の人々の信頼を、一瞬にして失ってしまったのでした。
「…面会だ。出ろ」
見張りの衛兵に突然そう命じられたのは、彼が町外れの砦の地下房に放り込まれてから、ほんの数日後のことでした。
犯した罪を考えれば、最悪、死罪になっても仕方がないと思っていたのに…。
しかも、こんな場所から自分を連れ出してくれそうな親しい人物など、天涯孤独の彼には誰一人思い当たりません。
半信半疑のまま衛兵に連行されて向かった面会室には…やはり、まったく見覚えがない一人の男。
超体育会系のラリスくんが最も苦手とする、彼とは真逆のいかにもエリート風情な印象の、見た目には同じくらいな年頃の優男です。
「…何の用だ?」
どのみち死罪だろうに、何を今さら…とぶっきらぼうに問うラリスくんに、
「いやなに、キミに色々訊きたいことがあってね。ついでに、キミの身柄は僕が預かるってことで、釈放させてもらったよ」
はぁ!? 単に質問するだけで、釈放までさせるとは…何者なんだコイツは?
ますます警戒を強めるラリスくんに、優男は自己紹介を始めました。
「僕は『保護観察官』にして、少しは名の知れた希少種族研究家…シドゥスさ。」
◇
現場検証がてら、ラリスくんとあの獣が初めて出会った森の穴ぐらへと向かいながら…シドさんはなおも自己紹介を続けます。
「僕は希少種族研究の傍ら、いわゆる絶滅危惧生物についても調べててね。
この近辺まで来たついでに、この星に生息するという『ドラコロナタス』の現地調査に出向いたんだけど…タッチの差で手遅れだったよ」
自称研究家の優男…シドさんは悔しげに唇を噛みます。
『ドラコロナタス』というのが、あの獣の名称であることを、ラリスくんは初めて知りました。
「実はアレ、宇宙ではもう、ここに残った一匹だけという超希少種だったんだよね」
かつては星域一帯で見受けられ、その流麗な見た目から『霊獣』と持て囃され、星団国家の国旗にシンボルとして描かれるほどだったというドラコロナタス。
しかしその数は、近年の人口増加による宅地造成の影響で急速に減り続け…現在ではあの一匹こそが、ここ数百年内では唯一の目撃例となっていました。
「それを町の人達が総出で退治してしまったもんだから、見事に絶滅してしまったよ。
宇宙連盟法では最悪、関係者全員『死刑』相当だけど、どうします?…って町のお偉いさんの"ご協力"を仰いで、キミの自由を勝ち取ったって訳さ♩」
なるほど…そう考えれば、ラリスくんが大暴れした甲斐もあった…んでしょうか???
それにしても、シドさん…なかなか食えない人ですね♩
それに、今まで出会ったお役人は大概、ラリスくんのような余所者を格下に見て高圧的な態度をとるのが常でした。
けれども彼は、若干鼻にかけたような話し方こそ気になるものの、さっきから至って対等な立場で接して、微塵も小馬鹿にしません。
加えて、未知の生物に対して熱っぽく語る、少年のように好奇心旺盛な姿勢が、実に情熱的かつユーモラスで…つられてこちらまで微笑ましくなるような、実に不思議な人物です。
「で、ドラコロの死骸を引き取る際に、町の人からキミの噂を聞いてね。ちょっと引っ掛かったんで、直に話を聞いてみたかったんだ」
ドラコロ…急にどこぞの冷凍惣菜っぽくなりましたね。
「…つっても、俺は何も知らねーぜ、アイツのことは? 毎日のように飯をたかりにくるから、食わせてやってただけで…」
「そう、ソレだよ。」
ラリスくんの答えにシドさんは目を輝かせます。
「ドラコロは非常に警戒心が強くて、滅多なことじゃ人には懐かないとされてきたんだ。
それが、こんなに簡単に…。
…本当に、たったそれだけのことで?」
「お、おぅ…」
興味深げかつ無遠慮に顔を寄せてくるシドさんに、ラリスくんは若干引き攣りながら頷き返します。
「ふぅむ…さては、グラビスであるキミの強さを本能的に見抜いて、服従した…?
いや、でもそれなら、向こうから積極的にキミに付き従う理由にはならないか?…むぅ」
「…ンな小難しく考えなくてもよ。
俺が町で買った飯を食わせたから、人里の味を覚えちまったんだろ?
誰かが言ってたぜ、アイツに餌付けしたのが町を襲った原因だって」
ラリスくんは肩を落として呟きます。
「そうだよ…全部、俺が悪いんだ…」
しかし、シドさんは静かに首を横に振ります。
「…いいや。それはただのきっかけに過ぎないよ。
それが証拠に…解剖したドラコロの胃の中には、半ば未消化の餌かたんまり入ってた。
だから、空腹や餌の味が原因じゃないんだ」
「??? じゃあ、なんで…?」
首を傾げるラリスくんに、シドさんは「でもある意味では、やっぱりキミのせいかもね」と前置きして…懐から丸い石のような塊を引っ張り出してみせました。
「…"彼女"の『子供』だよ。」
"彼女"??? それに、子供って…?
「ドラコロは本来、雌雄同体の生物なんだけどね。あの個体はれっきとした『雌』だった。
そしてコレは…産卵直前だった彼女の胎内にあった『卵』だよ。
…残念ながら、もう孵ることはないけどね」
!?
「貴重な"最後の二匹"を失って、絶滅させてしまったのと引き換えに…今まで誰も知らなかった『新事実』が得られたよ…」
時には、何かを失ったおかげで、何かを得ることだってあります。
けれども…その代償は、あまりにも大きくて…。
「詳細な理由は不明ながら、キミに惹かれた彼女は、自分達を『つがい』と認識した。
元々が雌雄同体だった彼女は、単独で卵を身籠った。
そして、それがもうすぐ産まれることに気づいたため、今まで一度も近づいたことがなかった町へと向かったんだ。
…『夫』である、キミを探すためにね。」
そして、それが彼女の命取りに…。
「ドラコロが町に近づいてきたことを知った人々は、必要以上に騒ぎ立てた。
だから彼女も対抗せざるを得なかったんだ。
自分と、自身の『子供』と…『夫』のキミを守るためにね。」
事の真相を知ったラリスくんの目から、不意に一筋の光がこぼれ落ちます。
「なんだよ、それ…。
結局、悪いのは俺じゃねぇか…っ!」
たとえどんな不運に見舞われようとも…母親の死に目にすら涙を見せなかったラリスくんは、生まれて初めて号泣しました。
それは、自分独りのためだけに生きてきた彼が、初めて他者から向けられた『思いやり』を味わった瞬間でした。
泣き続ける彼を、シドさんはただ黙って…ずっと隣で待ち続けてくれました。
◇
「ほぉ、ここが…」
目的地だった、ラリスくんとドラコロが初めて出会った森の穴ぐらに辿り着くと、シドさんは興味深げにその場所の隅々までを検証して回りました。
あらゆる生態が謎に包まれていた絶滅種の暮らしぶりが、ラリスくんの協力によって次々に判明しました。
残念ながら、研究対象は既に『絶滅』した後でしたが…。
その間に、ラリスくんは…
「なぁ…その卵、俺が貰っていいか?」
「コレかい? コレも貴重な研究資料ではあるんだが…まぁ、仕方ないだろう。既にあらゆる解析は済んでいるしね」
渋々シドさんが手渡したドラコロの卵を、ラリスくんはうやうやしく受け取ります。
「…どうするんだい?」
「…墓ぐらい作ってやらなきゃ、アイツも浮かばれないだろ?」
「……なるほどね」
そして二人は、穴ぐらの中に窪みを見つけると、そこに死産された卵を安置しました。
ラリスくんは拾ってきた適当な石ころに、別の尖った石の先で文字を掘り込んでいます。
「器用だねぇ」
「無い物は自分で作るしかねーだろ。大概のモンは持ってねーしな」
などと言っているうちに、ドラコロの『墓石』が掘り終わりました。
"ロナとその子供の墓"
ドラコロの卵を、そう記された墓石が覆い隠します。
「ドラコ『ロナ』だから『ロナ』かい? 意外とネーミングセンスいいね」
「うっせ」
「ついでと言っちゃあ何だが…まだキミの名前を聞いてなかったね?」
ラリスくんは、自分の本名を気に入ってはいませんが…ここまで長々と付き合ってくれた相手には、それくらい教えてあげてもいいでしょう。
「…『ポラリス』だ。あまり好きじゃねーけど…親から貰った名前だからな」
「フム? 難儀だねぇ…」
と、シドさんはしばし考え込んで…
「それじゃあ…これからもよろしく頼むよ、『ラリス』くん?」
「…なんだそりゃ?」
「キミのネーミング方式を真似てみたんだが、気に入らなかったかい?」
実は今まで、他人にろくに名前を呼ばれたことも無かったラリスくん。ものすごい気恥ずかしさを感じつつも…
「…いいんじゃねーか? 気に入ったぜ」
「それは何より」
「つーか…何だ、"これからもよろしく"て?」
「ああ、本当はこっちが本題だったんだが…」
と、シドさんは片手を差し出し、
「改めて、ラリスくん…
僕らの『仲間』にならないかい?」
つまりは『保護管理官』へのスカウトでした。
「キミは不思議とあらゆる動物に好かれるし…キミだって嫌いじゃないだろ?」
「…まぁな」
いくら動物が大好きでも、その人が動物から好かれるか?といえば、決してその限りではなく、逆もまた然り…なことは、皆さん身に沁みてご存知かと。
運良く両方揃っているというのは、それだけで非凡な『才能』なのです。
「加えてキミの、グラビスならではの身体能力の高さは、この仕事に打ってつけだと思うんだけどね?」
「…!」
これぞまさしく千載一遇というものでしょう。
ずっと『体力バカ』だの『大飯食らいの穀潰し』だの『図体だけのデクノボウ』と言われ続けてきたラリスくんを、やっと正当に評価してくれる相手が現れたのです。
しかも、それらすべてが活かせる仕事なんて…このチャンスを逃せば、もう二度と巡り会えないかも。
そして何より、これ以上ロナのような悲劇を繰り返さないためにも…!
「…よしっ。俺のほうこそ、これからよろしく頼むぜ…『センセ』。」
こうして、ロナの墓前で固い握手を交わし合った二人は…
以来、今日まで変わらないベストパートナーとなったのでした。
ぱっくりこ、柿の種二つ♩
◇
「…えぇ話やなぁ…っ」
「って、なんでオメーが泣いてんだよ?」
だって、あんなに単純バカだと思ってたラリスくんに、よもやこんなに複雑で深い過去があっただなんて…っ。
「泣きたいのはこっちだぜ。あんにゃろ、そーゆーメンドっちい仕事は全部俺に任せろって、いつも言ってんのによぉ…」
彼とシドさんとの信頼関係は、私が思っていた以上に深く強く結ばれていたのです。
それはもう…にわか嫁の私が羨ましくなってしまうほどに。
そして…すべての悲しみを押し殺して、いつも陽気なラリスくん。
ぶっきらぼうでいて、誰よりも情に深くて、優しくて…。
それはもぉ、種族を問わず彼がモテまくるのも解るような気がしてきました。
そんな彼が…今、私の前で、こんなにも素直に自身の弱さを曝け出して…。
病院では私やミユちゃんの手前、気丈に振る舞ってましたけど…やっぱり、シドさんのことが心配だったんですね。
「ごめんなさい…シドさんに無理させちゃいましたね」
「ああ、まったくだぜ。あんにゃろ、お前のことになるとマジで目の色変わっちまうからな。
あんなに必死こいてるアイツは初めて見たぜ…」
ゔゔ…ホントにごめんなさい。
…でも、それだけ愛されてるんだって思うと、やっぱり嬉しかったりして…♩
「…ま、アイツはまだ大丈夫だろうけどよ。
お前も大概ムチャばっかやってんだろ?
いいかげんにしとけよマジで…!」
むぎゅうぅう〜〜〜〜っっ!!
湯舟の中で彼の膝に腰掛けさせた私を、背中越しに腕を回して、あろうことかおっぱいを搾り上げるとゆー信じられない凶行に出たラリスくん!?
「ひぎぃっ!? 痛い痛いおっぱいつねらないでぇーっ!?」
そして何気に先っぽ捻らないでぇっ、ちぎれるちぎれちゃう〜っ!?
今日一日で突然変異のごとく究極進化したシドさんにも、こんなにヒドイコトされてないのに…でもちょっとワイルドで刺激的かも♩
って嗚呼、ただでさえ彼のカラダと私のカラダが紙一重な部分で感じて、キワドすぎる状況なのにっ…色々おかしくなちゃーうぅ〜っ!?
「アイツには敵わねーだろうけどよ…俺もお前のこと、それなりに気に入ってんだからよ…。
ロナみたく、勝手こいて急にいなくなるんじゃねーぞ…?」
急に腕の力を抜いて…でもちゃっかり私の乳房を握ったまま、ラリスくんは肩越しに私の顔を覗き込んできます。
この体勢でそんな構ってチャンな顔されたら…構わない訳にはいかなくなるじゃないですか…っ。
「それなら…アナタも命懸けで、私を守ってください。そのために、ここに来たんでしょ?
だから、これは…ほんのささやかなお礼です…っ」
私は…思いきって、彼の唇に私の唇を重ね合わせました。
どうしてそんな行動に出てしまったのか、自分でも解りませんけど…
いつになく心細そうな彼の顔を見てしまったら…なぜだか、そうしたくなってしまって…。
裸で息子に胸を揉まれながら、口づけまで交わすだなんて…どう考えてもAVにしか出てこないよーなアレな母親ですけど。
「んむっ…な、何してんだ? 何だこりゃ?」
一方、急にキスされたラリスくんは、いまだ感触が残っているだろう唇を指先で弄びつつ、訳もわからずキョトンとしています。
さては今まで、こんな経験なかったんでしょうね…お相手は人外ばかりですし。
それなら、まだ誤魔化しようもあるかと。
「ひ、日頃の信頼と感謝の証し…ですっ!」
嘘は言ってませんしね、ぇぇ。
でも、その刹那…
「なるほどな…気に入ったぜ。こうか?」
不意打ち的に、ラリスくんからのキス…!
しかも密着体勢のままで、私のよりもずっと情熱的に…!
何処でそんなテクニックを仕入れてくるのか、私の胸まで揉みしだいちゃってるし…っ。
コレ、このままいったらマズいヤツ…!
私達…親子なのに…っ!?
「…そろそろ俺、上がるわ」
かと思った次の瞬間には、ラリスくんは私をポイっとほっぽり出して湯舟から上がり、
「オメーも風邪ひかないうちにとっとと上がって寝ろよ。じゃあな」
逃げるようにそそくさとお風呂場から出て行ってしまいました。
いつもぶっきらぼうな彼ですが、今のは輪をかけて酷かったですね。
…でも、私にはその理由がなんとなく…なんとな〜く解ってました。
だって…体勢上しかたなく、私のお尻にずっと当たり続けていた彼の"一部"が…なんてゆーか、その…悪魔的な肉体変化を催していたことが、嫌でも判っちゃいましたから…。
これが普通の男子中学生なら「あらあら仕方ないわね、男の子だものネ♩」で済みますけど…いや済まないかな?
でも彼はホラ、何かと特殊な子ですし…どう受け取ればいいのでしょうか…?
「…くしゅんっ!?」
あ、思わずくしゃみが。
そうですね、ずいぶん長風呂になってしまいましたから…彼に言われるまでもなく、そろそろ上がらないと風邪をひいてしまうかも…。
でも…さっきからずぅーっと頭がぼんやりして、動悸息切れ眩暈が酷くなってきたから…とっくに手遅れかもしれませんけど。
◇
…翌朝。
「お…おはよーごさいます…」
「おう、はよ。さっさと朝メシ作ってくれよ」
むぅ…いったいどんな顔すれば良いかと散々悩んで起き出したのに、ラリスくんの様子は至ってフツーでした。
昨夜、あんなコトがあったってゆーのに…私ばかりドキドキして、バカみたいじゃないですか…っ。
結局あの後も、ずっと気分がもにょもにょしたままで…なかなか寝付けないから、つい、ベッドの中で、その…もにょもにょ…しちゃったってゆーのにっ。
やっぱり一人寝は寂しいですよシドさん…ぐっすん。
言われるままに準備した朝食を二人で食べてから、二人揃って家を出ます。
昨日まで何やかやと慌ただしすぎましたが、今日からはやっと普通の日常生活に戻れます。
シドさんの退院はお昼頃とのことなので、私は午前中で大学を切り上げてお迎えに行きますが…ラリスくんには、今日こそちゃんと学校に出てもらいますからねっ!?
「ラリスくぅーんっ♩」
私達が家を出るのを見計らって、お隣のミユちゃんがテッテケテッテケ仔犬みたいに駆け寄ってきました。ラブリー♩
でも、私もいるのを忘れちゃってたから、後でおしおきネ☆
「よぉ、ポチ子。今日もカワイイな♩」
「ふえっ!? ど、どしたのラリスくん…何か変なモノでも食べた?」
さすがのバカップルも朝っぱらからお盛んなことは滅多にないのに、いつになく上機嫌で彼女を褒めたラリスくんに、ミユちゃんはびっくり!
でも、私が作る朝食が変なモノな訳ないでしょ? イケナイ子には、おしおき追加ね。ウフフ♩
それにしてもラリスくん…なんで柄にもなく、急にミユちゃんを褒めたり…?
…ハッ…ま、まさか!?
と気づいたところで、時すでに遅し。
「ふぇ…?」
小柄なミユちゃんの身体をヒョイっとお姫様抱っこしたラリスくんは、
「いつもいつも…感謝してるぜ。Chu☆」
と、ごく自然な感じでマウス・トゥ・マウス。だからどこのディ◯ニーアニメですか、いつもいつもっ!?
「ふぇ…ふええぇえぇえ〜〜〜〜っっ!?」
プシュウーーッ!…がくっ。
一瞬でオーバヒートしたミユちゃんは、彼の腕に抱かれながら遠い世界へ逝ってしまいましたとさ♩
いや〜んな予感通り、やっぱりヤリやがりましたぜコイツら…ふぁっきんっ!
「…おい、こりゃどーゆーこった? 日頃の感謝と信頼の証しってんじゃなかったのかよ?」
「え、えーっとそれはそのぉ…」
だから嘘じゃありませんってば、日本人はフツーやんないってだけで!
てゆーか今どきそんな戯言を真に受けるだなんて、いったい何処のゼ◯トラーディですかアータ!?
シドさん、朝っぱらから大事件です…っ!
【第五話END】
今回はまた、なんとも意味深なサブタイトルが付いとりますケド…よーするにそーゆー回です(笑)。
前回終盤は「でもどーせ生き返るんだろ宇宙人だし?」とか思われるのも癪なので、ハラハラドキドキして頂けるようアレコレ工夫しましたが…結局は予定調和ですね、ハイ。
第一話あとがきで「単なる人妻ラブコメじゃツマランから宇宙人ネタ入れた」って書きましたけど、これ正解てしたね。
ラブコメじゃ〜余程のことがないと誰も死なないから、緊迫感が生まれませんから。
てな訳で、やっと一皮剥けた(笑)シドさんには、やっとオトナになれた(笑)ヒロイン美沙兎のよき伴侶として、まだまだ頑張ってもらわにゃ〜なりません。
のっけから夫婦設定になってたこの二人ですが、だからってイキナリそこまでの覚悟が出来上がってるってのは、さすがに「ホワーイジャパニーズピーポーおっかっし(以下略)」と思ったので、誰もが納得できるだろうこのタイミングまで延々ひっぱった次第でして。
でも思えばこの二人って、物語冒頭からずーっとセットで、別々に活動したことがほとんど無かったですし。
常に行動制限が伴ってきたヒロインが、いざ呪縛が解かれた途端にどーなるのかと思ったら…やっぱ色々やらかしとりますなぁ早速。
その"やらかしてる"後半部分は、これまでベールに包まれていたラリスくんの身の上話となっとります。
ここまでこじらせまくった人物像となるからには、それはもう普通の日本人では考えられないほど過酷な道を通ってきたのだろう…と。
でも例えば戦争孤児とか、親に捨てられたとかいった安直なオチにはしたくなかったもので…。
だって、愛情を知らない人間が、他人に愛情を与えられる訳がないじゃないですか?
なので「日頃から無自覚に愛情を振り撒きまくってるけど、他者との付き合いが徹底的に欠如しているため、自身はそうした感情に激烈ニブい」とゆー感じに仕上げてあります。
はやい話が『イイ人』なんですね(笑)。
あとは海外からの研修生問題とか、現代日本のあちこちで散見される社会問題とも意図的にダブらせてありますので、もっと関心を持って頂ければ幸いかと。
日本はもう、彼等の助力なしには成り立たない国になってるんですから、毛嫌いせずに受け入れてあげましょうよアンチの皆さん…と。
「夫婦なんだから」「家族なんだから」といった固定観念に縛られてきたヒロインの心境にも、ここへ来てかなりの変化が出てきたかな〜と。
…ハイ、実はこの物語はここらへんからが真骨頂です。
家族関係や親子関係が最良だなんて、いったい誰が決めたんですか?(笑)
日本人全体が同様な固定観念にいまだにがんじがらめにされてるからこそ、ちょい昔の『ゲス不倫』なんてどーでもイイ話題に飛びついてしまった訳で。
所詮は恋愛なんて当人同士の問題であって、周囲がとやかく言うことじゃないでしょーに…アレのどこがそんなに悪くて日本中で叩かれまくったのか、作者にはいまだに理解不能です。
そしてこの物語は、まさにそんなお話でした、ハイ(笑)。




