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それは現(うつつ)か幻か

 朝の大学のキャンパスは、今日も大勢の学生たちで賑やかです。

 お天気も数日ぶりに快晴。春の陽光も日増しに強さを増して、爽やかな微風そよかぜが木々の葉を揺らし、私の長い髪をくすぐります。

 誰もがウキウキと心躍る季節。

 …なのですが、私の気分は昨日と変わらず薄曇りでした。


「…おっ、竹取たけとりさんだ!」

「今朝も相変わらずお美しい…!」

「なんて艶やかな黒髪…まさに小川のせせらぎだ…」

「スタイルもメチャメチャ良いしね〜♩」

「顔ちっちゃい、背筋もスラッと伸びて、おっぱいおっきい…♩」

「もぉプロモデル顔負けじゃん、業界デビュー間違いナシじゃん!?」

「頭もメチャメチャ良いんでしょ?」

「カンペキ超人ぢゃん!? ズルいっ!」


 キャンパスの方々から聞こえてくる囁き声に、私はますます俯きがちに。

 毎日毎日、皆さんよくも飽きないものです。

 昔から可愛いだの美人だのと周囲に言われ続けてはきましたが、成長するにつれてその声は増すばかりで…

 終いには、こんな変わった名字であることも手伝って『かぐや姫の再来』、さらには『クレオパトラや楊貴妃の化身』などと呼ばれるほどに。

 …言われてる方は、正直に申してただただ恥ずかしいだけで、ひたすら迷惑な肩書きです。

 世界三大美女の名を一人で背負わさる身にもなってください。

 そして私もそんな称賛の声にいいかげん慣れるべきなのでしょうが、とにかく照れ臭いばかりで、なかなか知らんぷりはできません。

 周りがいつもこんな感じなので、自分の異常性には嫌でも気付かされてはいるものの…私の中身は極々普通の地味な女なのですから、華やかな場所には耐性が無くて…。

 それに、嬉しいことは嬉しいのですが、かぐや姫って結末がとても悲しいお話ですし…。

 かくいう私も、つい最近そんな辛い別れを経験したばかりなので…思わずじわりと視界が潤んでしまいます。

 ついつい足早にその場を離れようとしますが…


「…フンッ、お高くとまっちゃってさ」

「いい気なもんよね、挨拶もしないでさ…」


 そんな私の態度が気に入らない人も少なからずいるようで、聞こえよがしに陰口を叩かれます。

 本当に皆、人の気も知らないで…。

 だからといって気さくに挨拶でも交わそうものなら、ますます八方美人だとか男に媚びてるだとか後ろ指をさされるだけですし…。

 そもそもこういった人達は、私が何をどうしようと全てが気に入らないのでしょうし…もう、どうしたら良いのでしょうか?

 などと悩んでいても仕方がないので、とにかくこの場から一刻もはやく離脱を…


竹取美沙兎たけとりみさとサンッ!!」


 突然、背後からフルネームで呼び止められました。

 それもほぼ悲鳴じみた絶叫だったので、キャンパス中の視線がこちらに集中します。

 極力目立たずに生きていきたいと常々切望しているのに…本当になんてコトをしてくれるんでしょうか?

 しかもこんな場所でわざわざフルネームで呼ぶなんてことは…その後の展開が嫌でも予想できます。

 内心げんなりしつつも、務めて平静を装って振り向けば…一人の男子学生が直立不動で私を見つめていました。

 私なんかよりよっぽど芸能人ぽい、今にもテレビに出てきそうな格好いい人です。場慣れしてそうな雰囲気なので、この春入学したばかりの私よりはたぶん先輩でしょうか?

 その彼は若干顔を赤らめながらも、どこか余裕ありげな微笑を浮かべて…


「一目見た瞬間に惚れました! お付き合いお願いしますっ!」


 予想通りの言葉を吐きつつ、颯爽と右手を差し出しました。自分がフラれることなど微塵も想定していない素振りで。

 ああ、やっぱり…それもなんでこんな賑やかな場所で?

 まぁ、他人を使って人気ひとけのない場所に呼び出したり、何処からか入手した私のメアドやチャットアプリに無遠慮にメッセージを送りつけてくる人よりはマシですけど。

 あーゆーのはメチャクチャ怖いから、いい加減やめて欲しいものです。


『キャア〜〜〜〜ッ!?』


 直後にギャラリーから、女子を中心に黄色い悲鳴が上がります。


「ダンスサークルの釜瀬かませクンよ!?」

「嘘ぉーっ!? 彼も竹取さん狙いなの!?」


 どうやら有名人らしく人気も高いようですが…失礼ながら私は存じ上げません。というか、ただの一度も学内でお見かけした記憶がありませんし。

 告白とは思えないほど奥ゆかしさが微塵も感じられないキビキビした動きも、さすがは現役ダンサーです。

 人によっては心揺さぶる魅力的なお誘いかもしれませんが…私は無論そんな相手に素直に頷けるはずがありません。


「…なんだアイツ、まだ知らねーのかよ?」

「オンナ取っ替え引っ替え、ろくに講義に顔も出さねーせいだぜ」

「たまに来たかと思えば…下半身に脳みそ付いてんじゃねーか、あのアホ?」


 ファンらしき女性陣とは対照的に、あからさまに小馬鹿にした様子の一部の男性陣の囁きから、おおよその事情を察することができました。

 いくら私でも何の躊躇もなくお断りすることなどさすがに出来ず、毎回とても苦労させられるのですが…今回は気兼ねなく出来そうです。

 何の小細工もなく率直に交際を申し込んできた、ある意味では潔い彼に敬意を表して…


「…ゴメンナサイ。」


 私も率直に頭を下げてみせました。相手に誤解を与えないよう、これ以上ないほどにハッキリスッパリと。

 そして、予想外の回答にえっ?えっ?とうろたえ、差し出した右手の行方を彷徨わせる彼に、決して繋がることのない左手を掲げて示します。

 その薬指にキラリと輝く指輪を陽光にかざして。


「…私、結婚してますので。」


 んがぁ!?と奇妙な呻き声をたなびいてその場に崩れ落ちる相手を尻目に、私はうやうやしく会釈をしつつ足早に立ち去ります。


「ハッハハ、ザマァ見ろ!」

「なーんか幻滅ぅ…」


 周囲からの容赦ない罵声を浴びせられて打ちひしがれる彼には可哀想ですが、これで今後はもう少し告白相手へのリサーチと誠意を心掛けてくれることでしょう。


「う…嘘だっ!? だってキミ、まだ入学したばかりだろ! いったい誰と…!?」


 おっと、思いのほか諦めが悪かったようです。

 別に大学に入らなくても結婚する人はいますし、甚だ失礼な線引きだとは思いますが、はてさてどう説明して差し上げたものか…


「ミサさん!」


 思案に暮れていたその時、丁度グッドタイミングでクラクションを鳴らし、正門前に停車する一台の高級車から私に呼びかける声が。

 良かった、これで説明の手間が省けます。


「シドさん!」


 渡りに船とばかり、彼の車へと駆け寄る私の背後で、


「そそそんな…シドゥス教授だとぉ!?」


 フラれたイケメン男子の驚愕の絶叫がこだましますが…


「やっぱり知らなかったのかよ」

「名前見りゃ一目瞭然だろうが」


 周囲の嘲笑が無惨にも彼にトドメを刺します。


「…何かあったのかい?」


 薄々察しているくせに、わざとらしく運転席で微笑むロマンスグレーの素敵な紳士。

 その瞳は今日の晴れ渡る春空のように澄んだ、吸い込まれそうなスカイブルー。

 見ての通り、お生まれは海外の方です。

 シドゥス竹取…私の愛すべき旦那様です♩





 旦那様とは申しましたが…実際には、彼のほうが私の家に婿入りする形式となっておりまして…これには色々と複雑な事情が。


 元々、私はお爺さんとお婆さん二人だけの『竹取家』の養女として育てられました。

 物心つく前に両親を事故で亡くし、身寄りが無かった私を、父の知り合いだった彼らが快く引き取ってくださったとかで…。

 そこそこの資産家だったらしいお二人のもとで、私はつい先日まで何不自由なく育ちました。


 …あ〜いえ、何もかも自由とは言い難かったかもしれません。

 唯一の不都合は、お二人の私への愛があまりにも深すぎるあまり束縛が強くて、一切合財の行動が彼らの管理下に置かれていたことでしょうか。

 毎日の登下校も必ず彼らと一緒だったことに始まり、遠足等の学校行事にも必ず同伴し、よほどの理由がなければ下りない外出許可にもやはり必ず同席…とまあ始終こんな塩梅でしたね。

 そのせいで周囲の子供達にも気を使わせてしまい、親しいお友達が出来た試しもありません。

 幼い頃からずっとそんな感じでしたから、今後もやはりずっとそんな感じだろうと半ば諦めてましたし…

 お二人が私を何よりも大切にしてくださってることは嫌というほど理解できたので、不満を漏らしたことなど一度もありませんが。


 けれども…そんな日常はある日、突然一変してしまいました。

 お二人が珍しく旅行に行こうと言い出して、私も車に乗せて向かったその日に…

 人里離れた峠道に差し掛かったその時、突然、目も眩む閃光が視界を覆い尽くして…

 直後に全身を襲った凄まじい衝撃と、続け様に優しく身体を包み込む不思議な感覚…そして、まるで宙を舞うような浮遊感…。

 どうやら私は車外に放り出され気絶してしまったらしく、事故のショックかその前後の記憶が今も曖昧なままです。

 気づいた時には、お二人は大破した車ごと炎に呑まれ…対向車の姿はすでにありませんでした。

 かくいう私は、投げ出された車から数十メートルも弾き飛ばされたというのに傷一つなく…

 また、現場には加害者と思しき対向車の痕跡はブレーキ痕等も含めて何も残されてはおらず、駆けつけた警察も首を捻るばかりでした。

 本当に何が起きたのか判然とせず、釈然ともできないまま…今日まで来てしまいました。

 お二人ともかなりお年を召されていたので、いずれ近いうちに似たような状況に置かれたのかもしれませんが…まさか、こんな唐突に。

 人間って、喪失感が大きすぎるとかえって泣けないものなのでしょうか?

 心にポッカリ穴が空いたみたいで、残された私はただただ呆然とするばかりでした…。


 ですが救いが無かったわけではありません。

 天涯孤独の身となった私にすぐさま手を差し伸べてくれたのが、昔からお隣に住んでいたシドさんです。

 とはいえ私個人はろくに外出したこともなかったため、隣にこんなに素敵な方がいらしたことすら知りませんでしたけど。

 お二人とは日頃から親しくお付き合いされており、自分達に何かあったら私をよろしく頼む…と頼まれていたのだとか。

 幸いお二人が残してくれた遺産が当面は生活に困らないほどのものだったことに加え、シドさんも元から恵まれた暮らしを営まれていたので、私は何の不安もなく彼のお言葉に甘えることに。


 けれども、ここで困った事実が発覚します。

 日本語も堪能なことから、この土地での生活がかなり長そうなシドさんでしたが、いまだ日本国籍を取得していらっしゃらなかったのです。

 それでも私の後見人にはなれるでしょうが、日本という特殊な国の制度的に、何かと面倒なことになりそうで…。

 と、そこでさる人からの予想だにしなかったナイスな提案が。


「そんなの簡単じゃん?

 『結婚』すりゃいーんだよ、お前らが。」





 その大恩人こそが…


「…ねぇねぇ、誰? あのカッコイイ子♩」

「うわっ、まんまジャ◯ーズぢゃん!」

「教授の息子さんよ。『ラリス』くんだっけ♩」


 車の後部座席にふんぞり返ってスマホをいじくっている男の子に気づいた学生達から、先程のイケメン君を遥かに凌ぐ黄色い歓声が。

 近所の中学校の制服を着た、サラサラの金髪に宝石のエメラルドみたいな深緑色の瞳が特徴の、母親の私から見ても超絶美男子な自慢の息子です♩

 本名は『ポラリス』ですが、本人的にはあまり気に入っていないらしく、面と向かってそう言うと機嫌が悪くなるので、周りの人は愛称の『ラリス』と呼びます。


「…チッ。」


 皆の注目を一身に浴びていることを知るや、彼は車外まで聞こえよがしに舌打ちして、プイッとこちらに背を向けてしまいました。

 こんな具合に元々かなり気難しい性格なことに加えて、只今絶賛取り扱い厳重注意なお年頃なので、なにかと気を遣いますが。

 彼に黄色い悲鳴を上げるギャラリーとは全然違う理由で、私的にも非常に気になる存在ですし…。


 私だってまだまだお年頃の女の子なので、最初はいきなり結婚とか言われてもさすがにすぐには頷けませんでした。

 シドさんは確かに素敵な男性ですが、私とは見るからに年齢差がありすぎますし…交際経験すらろくに無い私にはいきなりハードモードすぎます。

 ですが…試しに彼らと何日か同居してみて、私の心はすぐに決まりました。

 私の興味を強く惹いたのは、シドさんよりもむしろラリスくんの方でしたから。

 彼のことがどうしても気になって、放ってはおけなくなったのです。


 …あっ、誤解しないで頂きたいのですが、『異性』としてではありませんよ!?

 あくまでも『母親』として、です!

 だって、シドくんってば…女性に興味が無さすぎるんですものっ!!


 普通、いきなり異性と同居することになれば、少なからず相手のことが気になって、どうしても挙動不審になったりするじゃあないですか?

 私はもちろん、彼らの一挙手一投足が気になって最初は全然眠れなかったですし、結婚からしばらく経った今でもドキドキさせられっぱなしです。

 …でも実は、シドさんとはあくまでも単に籍を入れただけで、式なんて挙げる余裕はなかったですし、なんてゆーか…ふ、夫婦らしいコトなんてまだ一ミリもしてませんからっ!

 曲がりなりにも伴侶になったんだからと、少しは期待…あっいえ、覚悟を決めてたんですけど…本当に指一本触れてこないどころか、寝室も別々ですし。

 なんだか拍子抜け…いやモゴモゴ。

 えっ、具体的にはどーゆーコトかって…あんまりいぢめないでくださいっ!!

 

 そんな実質的には何もない仲でも、同居というだけでやっぱりお互い気になって、いまだにぎこちないままだというのに…

 ラリスくんの場合は真逆というか、もっと根本的で致命的な問題を抱えていました。

 彼の部屋にはお掃除という名目で何度かお邪魔して、あぁこれが思春期の男の子のお部屋か…と感慨深げに徹底的に家捜やさがしてみたんですけど…

 なぁーんっにも! 出てこないんです。

 お年頃の男子には必要不可欠と思われる、なんてゆーかその…不純物が、本当に何一つ!

 私とはあまり年が離れていないものの…いいえ、だからこそ、同世代の異性がすぐそばにいるだなんて落ち着かなくって仕方ないはずじゃあないですか!?

 代替的に何か使…何かにすがりたくなるはずじゃあないですかっ!?

 なのに、ここまで徹底して異性に関心がないなんて…若輩者ですが、それでもこの子の母親として…私、気になります!


 それだけじゃないんです。

 さらに物色を進めるうち、ろくに中身を出し入れした痕跡すらない通学鞄の中から、可愛らしい装丁のお手紙が何通も出てきました。

 どれもこれも明らかに彼の筆跡ではない丸っこい文字で、宛先はもちろん彼の名前で、差出人の名前はいずれも女の子ばかり。

 封を切った形跡すらないので内容は不明ですが…まぁわざわざ確認するまでもないでしょう。

 中学生時分だと、まだ肉筆によるお手紙にも需要があるんですね。デジタル文字のメッセージなんかよりもよっぽど気持ちが伝わるし、なんてったってカワイイ♩

 …などと感心ばかりもいられません。

 封を切ってないってことは、ちっとも読んでないってことじゃないですか!


「あ、あの…ラリスくん…」

「ん? なんか用か?」

「コ、コレ…読んでくださいっ!」

「…チッ、またかよ…。あーうん、後で読んどくよ」

「ぜ、絶対読んでね? お願いしますっ!」

「へーへーわーったわーった…」


 などという会話を経て彼の鞄に放り込まれた愛情こもったお手紙が、そのまま忘れ去られて今日まで放置され続けている様が容易に想像できます。

 まぁ、その場で相手に突き返したり破り捨てたりしないだけマシかもしれませんが。

 中には同じ差出人から何通も頂いてて、便箋の端に書かれた"読んでね♩"という可愛らしい筆跡が、


"返事ないからまた書きました。今度こそ…"

"どうして答えてくれないの?"

"なんで!? どーして!?"

"また答えてくれなかったら死んでやる!!"

"もうダメ、あなたを殺して私も死ぬっ!!"


 などと、便を重ねる度に怨念大爆発で、ゾクゾク寒気が止まりません。

 次第に恨みつらみが籠った暴れ字になっていって、終いには紙面全体に血が滲んで…怖っ!?

 こんな切実な想いにすら無視を決め込むだなんて、ラリスくんは鬼ですか!

 かろうじてまだ死んではいないので、今のところなんとかなっているようですが…そのうちマジで刺されますよ?

 かくいう私も人のことはまったく言えないながらも、なるだけ相手の傷口が広がらないように色々気を遣ってるというのに…。

 しかも彼、普段の態度こそはぶっきらぼうで面倒臭がり屋ですけど、話しかければちゃんと気さくに返事してくれるし、日頃の些細なお願いにも悪態をつきながらもちゃんと応えてくれるから、別に人付き合いが苦手ということでもなさそうだし…

 何より、私達の結婚を提案してくれた張本人なんですから、他人を寄せつけないって訳でもないでしょうに…

 どうしてこうも女心に冷淡なんでしょうか?


 しかも彼、私が時々部屋に入ってることにはとっくに気づいてるはずなのに、文句一つ言わないんです。

 確かに室内にあったのは、後は彼の唯一の趣味らしき夥しい数のゲーム機器だけで…他人に見られて困る物なんて何も無い、ってことなのかもしれませんけど。

 それでも普通、勝手に部屋に入られたら怒って当然じゃないですか?

 私だって、子供の頃は隠し事なんて何もありませんでしたが、それでもお婆さんがいつの間にかお部屋を掃除していたことを知って不機嫌極まりなくなった挙句、根負けしたお婆さんちも次からはちゃんと入室許可を得るようになったというのに…。

 …今は逆に見られて困るモノばかりなので、もぉ絶対誰もお部屋には通しませんけど。

 彼らとの同居が決まったときに、万一に備えて奮発した勝負下着だとか……あ゜。

 ええ〜っと、今のは聞かなかったことにしてくださると幸いですお願いですからっ!


 …コホンッ、閑話休題。

 とにかく、

 このままじゃダメだこの子、

 はやくなんとかしないと…!


 そんな怯えにも似た焦燥感こそが、私とシドさんとの結婚を決意し、彼らを迎え入れる決定打となったのです。

 かつて私の前にいたはずのシドさんの奥様にしてラリスくんのお母さんについて、私はまだ何も知りません。なんとなく訊くのが躊躇われて…。

 そういえばこの二人って、親子という割には全然似てないし、髪や目の色も違うし…一体全体どゆこと?

 …ともかく、彼がこうなった原因はきっとそのあたりにあるのでは?と…

 それなら、せめて私が少なからずその代わりを務められれば…と。

 そう思っていた時期が私にもありました。


 とはいえ。

 同居を始めた後になって、私には他人をとやかく言えるほどの人生経験がなかったことに今さら気づきまして。

 男女交際すら皆無だというのに、これで何をどーしろと!?

 …逆ギレしても仕方ありませんね。

 兎にも角にも、私の今一番の悩みの種が、目の前で悠長にスマホゲーに勤しんでいるこの少年な訳で。

 まったく…可愛さ余って憎さ百倍とは、まさにこのことでしょうか。

 人の気も知らないで…本当、憎ったらしい!

 でもでも…カッコカワイイ♩





「お、教え子に手を出したばかりか…もぉ子供までいるのくわぁ〜〜〜〜っ!?

 チキショーこのロリコンぢぢいぐわぁーッッ!!」


 まだ諦めがついてなかったのか、涙と鼻水を垂れ流しつつ地団駄踏んで悔しがる告白失敗イケメンくんに、


「私達のナイスミドル叔父様♩になんてコトを!?」

「どー考えても計算合わねぇだろがこんタコッ!」

「いっぺんその下半身脳みそ、ケツの穴からぶっこ抜いて湯掻いてきやがれっ!!」


 彼のあまりの罵詈雑言に瞬間湯沸かし器と化した群衆から、殴る蹴るの猛反撃が。

 憐れイケメンくんは成す術もなく、一瞬にして血の海に沈みました。南〜無〜♩

 皆さん、私に成り代わって成敗ありがとうございます。

 ちなみに、私がシドさんの教え子になったのは結婚後なので、今の非難は的外れもいいところです。

 結婚までしちゃったら、さすがに進学はもう無理だろう…と諦めていた私に、


「いや、勉強はできるうちにやっておいたほうがいいよ。後になって気付いたって遅いからね」


 などと何処ぞの歌のような説得をしてくれた優しい彼は、


「大丈夫、後は全部任せて♩」


 と、入学式の前日にここの学長さんに引き合わせてくれました。

 私を見て目を細めた学長さんは、


「では、明日からアナタはここの学生ということで。」


 …ひょっとして、こーゆーのも『裏口入学』って言うんでしょうか?

 でもでも、いつも正々堂々、正門から通学してますし…

 …うん。あまり深くは考えないよーにしましょーそーしましょー。


「ハハハ、相変わらずだねぇ…」

「すみません、朝からお騒がせして…」


 運転席で苦笑するシドさんに、なんでか私が頭を下げます。


「これから御出勤ですか?」


 私と同じ大学で教鞭をとる彼ですが、片や人気者の生物学教授、片やしがない新入生なので、朝の通学時間が一緒になることはまずありません。

 今朝も私が先に家を出ました…が、これくらいのズレなら、一緒に来たほうが良かったでしょうか?

 そのほうが朝っぱらから面倒ごとに見舞われることもなかったでしょうし…。


「いや、講義までまだ間があるからね。その前にコイツを学校に放り込んでくるよ」


 そう答えるシドさんの後ろで、またもや忌々しげに舌打ちするラリスくん。

 もう中学生なんだから一人で登校してほしいところですが、こうでもしないと学校に行きたがらないから仕方ありません。

 そういう私もつい先日までずっとお爺さんお婆さんの送迎つきでしたから、人のことは言えませんけど。

 …正直言って、友達なんて一人もいない学校に通うのも憂鬱なだけでしたけど…それでも、必要なことだから…。

 もしかしたら、ラリスくんも…?

 でもダメですよ、サボリは。

 中学生までは義務教育なんですから。

 母親として、嫌でも何でも通わせなきゃ。


 とか言ってる私自身は、この大学に通うようになってから、やっと一人だけでの外出を覚えました。

 やっと自由になれたはずなのに、最初は不安しかなくて…今でも、まだ…。

 なんて、贅沢な悩みですよね。

 それまでは、よもや自分がこんな場所にいるなんて思いもしませんでしたし。

 お爺さんお婆さんは私の進学に否定的でしたし、それでなくてもあの事故からずっとバタバタしてて、受験どころじゃなかったですし…。


 だから無事、進学できて本当に感謝してるんですよ私は。

 ラリスくんも、普通に学校に通える現状に少しは感謝してほしいものです。

 学校なんて本当に必要?なんていう人もいるけど、じゃあどうして学校に行かないのが当然って考えられるんでしょうか?

 地球で生きていくには息をしなければ死んじゃうけど、酸素を取り込まず単に口をパクパクやってるだけでも結局は酸欠で死んじゃいますよね。

 お家で勉強だけしたって、今後の生活に必要なノウハウは何も身に付かないんです。

 自分のことは棚に上げてでも育児への信念を貫くことこそが、親の務めなんです!

 そう…親は子の『ラスボス』たるべきなんですっ!


「ラリスくん。ちゃんと学校に行ってきなさい。じゃないと、お夕飯抜きですよ♩

 それから学校に行く気になるまで、お庭の木に縛り付けてお尻ペンペンし続けます!」

「…意外と鬼だねぇキミは。それもう児童虐待だから…」


 車窓越しに満面の笑顔で語りかける私に、シドさんが引き攣った微笑で応えます。

 アナタがそんなふうに甘やかすから、子供がこーなっちゃうんですよ。「親にもぶたれたことないのにぃっ!」って。

 右の頬を打ったら、ついでに左の頬も打っときなさい!(←?)


「チッ…わーったよ。

 後で覚えとけよコンニャロ…」

「ゔ…親に向かってなんて態度ですか!?

 私はアナタをそんなふうに育てた覚えはありませんよっ!」

「俺だってオメーに育てられた覚えなんかねーよっ!!」


 ですよね〜。私にもありませんけどっ!

 あー言えばこー言う…まったくもぉっ!


「ま、まぁまぁ二人ともそのへんで…。

 じゃ、また後で。キミの講義が終わったら、一緒に帰ろう」


 適当なところで横槍を入れたシドさんは、逃げるように車を発進させました。

 後部座席で振り返ったラリスくんが、窓越しにベロベロバーをしながら遠ざかっていきます。


「ホントにもう…カワイイのにカワイくない…っ!」


 ブツクサ呟く私の背後で、完璧に血の気が引いた学生たちが…


「…竹取さんが怒るトコなんて初めて見たぜ…」

「彼女でもキレることあんだな…」

「美人がブチギレるとマジ怖っ!」

「意外と攻撃的で獰猛だし」

「てか、お尻ペンペンって久々に聞いたな…」


 …どうやら私の新たな伝説がまた一つ加わったようですね…ぐっすん。





 悶々とした気分のまま受けた講義も滞りなく進み、今日の私の予定は午前中ですべて終了しました。

 その頃にはシドさんの講義も終わっていたので、大学構内の駐車場で待ち合わせて帰宅の途につきます。

 行きは別々でも帰りはたいてい一緒になり、休日も私が行きたい場所があれば同伴してくれて…。

 思えば以前とさほど変わりばえしない束縛生活ですが、お相手が愛しの旦那様というだけでもずいぶん気持ちが安らぐものです♩

 …ま、たいていは余分なお邪魔虫もくっついてきますけど。


「…で、なんでアナタがここにいるんですか?」


 助手席の背もたれ越しに、今朝と同じく後部座席にふんぞり返ってスマホゲーにいそしむラリスくんを睨みつけると、


「今日はガッコの創立記念日だから半日終業だったんだよ」


 彼はスマホに視線を落としたまま、しれっと答えます。


「へぇ〜。アナタの学校の創立記念日は年に何回もあるんですねぇ?」

「あぁ、おめでたいガッコだろ?」

「おめでたいのはアナタのオツムでしょ!?」


 こんなふうに、せっかく登校しても何だかんだと理由をつけては早退しちゃうんですよ、この子。


「でもちゃんとガッコに行ってきてやっただろ? 教育義務は果たしてやってんじゃん。

 これで飯抜きはチャラだな♩」

「そーですねぇ、よく頑張りまちたねぇ〜オホホホホ…。

 って、んなワケあるかぁーーーーいっ!!」

「ちょちょっミサさん落ち着いてっ!」


 興奮のあまり助手席を蹴って立ち上がった私のせいでハンドル操作を誤りかけたシドさんが、青ざめて必死になだめかけます。


「ま、まぁ、勉強するかどうかは個人の自由だし…」

「中学校は義務教育ですっ!」


 いまだに勘違いしてる方(特にモンスターペアレンツ)も多いでしょうけど、それは国が国民に教育を与える義務…などではなく、"国民が教育を受ける義務"ですからっ!

 そしていまだに度々問題になる学校給食はあくまでも生徒の健康管理やマナー教育を担う『サービス』であって、学校側の義務ではありませんからっ!


「ケッ。必要あっかよ、こんな低レベルな糞の役にも立たねぇ知識…」

「こぉーのぉー子ぉはぁ〜〜〜〜ッ!?」

「ハイハイ、親子ゲンカはそのへんにして…

 丁度いい時間だから、皆でどこかで昼食にしよう」

「ヘヘッ、そーこなきゃな!」


 アッッッマァーーーーッイ!!

 激アマざますよ御父様っ!!

 でもせっかくだから、戴きますっ!


 そして車は一路、大学のある郊外から、様々な店舗がひしめく街中へと。

 お婆さん達のときは滅多に来なかった活気溢れる賑やかな光景に、私は思わず車窓に顔を貼り付けてワクワクと……パシャリ。


「ッ!?」


 不意に窓ガラスに反射したフラッシュ光とシャッター音に、驚いて顔を上げれば、


「…いつもそーしてりゃあカワイイのになぁ」


 のほほんとした囁きが背後から鼓膜をくすぐります。

 見れば、スマホを構えたラリスくんが、はしゃぐ私の横顔を見つめてニマニマ微笑んでいました。

 日頃から散々美人だの綺麗だの言われ慣れてるので、それなりに自覚はしてますけど…カワイイなんて感想は割と珍しく…って、えっ!?


「か、からかわないでくださいっ!

 てゆーか今、撮りました!?」

「あぁ、バッチリな。待ち受けにしとこっと♩」


 やーめーてぇ〜〜〜〜っ!!


「自分のオカンの盗撮写真を待ち受けにする男子中学生がどこの世界にいますかっ!?」

「別に変じゃねーだろ家族写真なんて?

 つーか実際、血は繋がってねーんだし、カワイイもんはカワイイしな♩」


 そう言いながら身を乗り出したラリスくんは、照れまくる私のほっぺを人差し指でツンツンと…。

 言われてみれば、戦地に赴く兵隊さんとか大概、家族や恋人の写真を持ってますし…確かに変じゃないかも。

 …いえいえっ、だけど私の立場的には問題しかないですよっ!?

 彼ってば、いつも異性には全然興味ないよーなそぶりを見せてるくせに、家でもふと気づけば私のほうをニヤニヤ眺めてたりして…

 もしかして…重度のマザコン!?

 お部屋にそれらしきブツがなーんもナイと思ったら…ま、まさか、夜な夜なソレを使って…?

 あぁああダメよダメダメ(懐)イケナイわイケナイコトだわでもちょっとイイかもハァハァハアハア☆

 …ハッ!? と、ともかく、これはますます早急に手を打たないと…!


「あ、あのですね。私は母親で、アナタは息子なんですよ?」

「だよな。ほとんど年が違わなくても、親子は親子だよな」

「…ちゃんと解ってるじゃないですか」


 なーんか引っかかる発言でしたけど…。


「けどよ…」


 ますますこちらに身を寄せた彼は、座席越しに伸ばした手で私の顎をクィッと手繰り寄せて…


「…俺、アンタを母親だと思ったことなんて、一度もねーんだぜ…?」


 急に真顔に戻った彼の深緑色の瞳が、私の心の動揺を見透かすように間近から覗き込みます。

 ずいぶん酷いことを言われてるようで、なんだか意味深な…。

 言われた私は全身が麻痺したように、まったく抵抗できません。

 それをいいことに、ラリスくんは私の顎にあてがった指先で、私の喉元をゴーロゴロッとグルーミング。

 くすぐったいのに、とても優しい指づかいで…カ・イ・カ・ン♩

 とても中学生とは思えないテクニシャンぶりに、私の心は一気に臨界点へと…。


「ほらほら、ココがええのかええのんかぁ〜?

 …もっとして欲しいだろ?」

「あふぅ…そ、そんなコト…っ」

「…素直になれよ、カワイイ兎チャン…♩」


 こんな態勢で女を素直にさせた挙句、いったい何をどうするつもりなんでしょうか…?

 嗚呼…もぉダメッ、亭主がそばにいるのに…イケナイ子ハァハァ♩





 …って、そ、そういえばシドさんは?

 嫁が間近で息子相手に貞操の危機に陥ってるとゆー絶体絶命な状況を放置して、いったい何を…?

 なすがまま、されるがままの乱れ心に一抹の罪悪感を抱きつつ、恐る恐る運転席に目を配れば…

 このボンクラ亭主、私なんてまるで眼中にない様子でぼんやり車窓を眺めてやがりましたよ!?


「…なんだか様子がおかしいねぇ…?」


 オカシイのはアンタでしょーがグキョッ!?


「ホントだな…何だこりゃ?」


 憤慨する私の頭を押しのけて、シートの間に割り込んできたラリスくんが、シドさん同様に車外を眺め回します。

 もう少しでラ◯ボーに首を捩じ切られる敵兵みたいになりかけた私も、頸椎の痛みに涙をちょちょ切らせつつ、ようやく窓の外に視線を移せば…確かに異常事態でした。

 通りを行き交う車という車はすべてその場に停車し、車外に出た運転手たちは近くの通行人と一緒になって、ザワザワと頭上を指差しています。

 そこにいったい何が?とフロントガラスを持ち上げるように首を伸ばして覗き見れば…


「…えっ!?」


 あまりにも非常識な光景に、我が目を疑いました。

 エイです。巨大なイトマキエイ…マンタみたいな怪物が、ここいらで一番高い商業ビルのてっぺんにへばりついていました。

 その屋上は、展望台やイベント会場として日常的に一般開放されているほどの広々とした造りですが…

 陽光に黒光りする、金属やプラスチックにも見えるヌルッとした質感の怪物の身体は、その四方から優にはみ出すほど巨大です。

 そこからエイとは明らかに異なる、ナメクジやデンデンムシみたいな細長い二本の触手をビュルビュル伸ばして…先端についた真っ赤な目玉を縦横無尽に動かして、辺りを観察しています。

 まるで現実味がないのに、その圧倒的な存在感と畏怖感には、未知への恐怖をも上回る好奇心をギュンギュン刺激されて止みません。


「な、何なんですかアレ!?」


 興奮のあまり車窓から身を乗り出して叫んだ私を、


「ッ!? マズいぞっ、隠せっ!」

「はよ引っ込めやアホンダラッ!」


 慌てたシドさんに急かされたラリスくんが、私の頭を無理やり掴んで車内に押し込めます。

 って、また首ぃーっ!? あと母親をアホンダラ呼ばわりすんなやアホンダラぁ〜っ!

 けれども時すでに遅く、グルグル振り回されていた怪物の目玉は瞬時にビュルンッとこちらに伸びて…

 またもや遅い来る頸椎捻挫の痛みに涙する私に、バッチコンと目が合った真っ赤な目玉の瞳孔が、メキョッと大きく広がりました。

 えっ…なんで私!?


「グルゥォアアアァァァーッ!!」


 巨大の前面?がバックリ割れて、恐らくは口と思しき真っ赤な肉ヒダをブルブル震わせ、怪物はこの世のものとは思えない咆哮を上げます。


《見つけたぞ…ッ!!》


 その言葉が私には、何故だか同時通訳みたいにハッキリと理解できました。

 ですが、それが出来るのはどうやら私だけらしく、


「ぅわわあぁあ〜〜〜っ!?」

「な、なんて鳴き声…鼓膜が…っ!」

「に、逃げろ…はやく逃げるんだァーッ!!」


 怪物の遠吠えに恐れをなした街の人々は、蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出しました。

 まさに怪獣映画のエキストラシーンさながらですが…どうやら皆には単なる鳴き声としか思えなかったようです。


《もう逃がさんぞォ…小娘がァッ!!》


 それに、あの怪物の目的は明らかにこの私…って、なんで? どーして!?


「やれやれ…早々と見つかってしまったねぇ」

「取引相手って『エイラス』だったのかよ。しつっこいんだよなぁアイツら…」


 怯える私と頭上の怪物を交互に見比べて溜息をつくシドさんに、ラリスくんが呆れたようにぼやきます。

 って、この二人…あの怪物を知ってる…?


「どーすんだよセンセ? アイツ、もうなりふり構わずだぜ?」

「何が何でもミサさんを手に入れたいみたいだねぇ」


 どうやらこの二人にも、あの怪物の言葉が理解できているようです。

 それに今、ラリスくんはシドさんを『センセ』って…。

 たしかにシドさんは大学教授だけど、息子のラリスくんは私の前では一度もそんなふうに呼んだことなくて…

 私も含めて、いつも「おい」とか「お前」とか、倦怠感の夫婦みたいにぞんざいな呼び方しかしないのに…。

 それに、『先生』なんて家族にしちゃ他人行儀な呼び方な割には、年季が入った親しみすら感じるよーな…?


「…ま、あの程度ならキミの相手じゃないだろ?」

「ったくメンドっちいな…」


 ブツクサ言いながら、この非常時にもかかわらず後部ドアを開けて車外へと出かけたラリスくんは…

 そこで私とハタと目が合うなり、アチャア〜ッと被りを振って、


「…いいのか?」

「…ま、そろそろ潮時だろうしねぇ」


 何なんでしょうか、この二人?

 これだけの騒動を目の当たりにしても全然慌てないばかりか、今までとは雰囲気が全然違うし…いったい何を?


「…フッ、心配すんな」


 そんな私の不安気な顔を見つめたラリスくんは、安心させるように微笑んで…


「お前は、俺が守ってやる。」


 トクン…と、私の胸の奥で、何かが小さくときめきました。

 何が何だかわからないままなのに…それだけで安心感と嬉しさが心を満たします。

 自然に頷き返した私の顔を見届けて、ラリスくんは再び車外へと飛び出し…

 辺りをキョロキョロ窺って、誰もいないことを確認してから、付近の茂みの中へと駆け込みました。

 瞬間…目も眩む凄まじい閃光が辺りにほとばしります!


「…この光って…!?」


 記憶を呼び覚まされた私の呟きに、シドさんは「思い出したかい?」と頷き返して、


「あの時、キミが見た光の正体は僕達だ。」


 え…それって…


「キミのお爺さんとお婆さんは…そのせいで死んだんだ。」


 ッ!…薄々解ってはいましたけど…面と向かってハッキリ言われると、頭の芯がカッと熱くなりました。

 なんで…どうしてお婆さん達をッ!?


「だけど、よく思い出してほしい。

 …キミ達はあの時、なぜあの場所にいた?」


 シドさんにそう問われた途端…それまで薄靄に包まれていた当時の記憶が、ハッキリ鮮明に甦りました。

 そう、あの日…私達は、珍しく旅行に出掛けて…

 その目的は…私をある人に"売り渡す"ためで…

 …え?…アレ?


 お爺さんが運転する車の後部座席には、私とお婆さんが座ってて…

 私は…ちゃんと起きてるのに、ずっと夢の中にいるようにボンヤリしてて…

 そんな私の様子に満足気にほくそ笑んだお婆さんが、私に囁きかけて…


"今まで苦労した甲斐があったってもんさね…フヒャヒャッ"

"本当に良い子に育ってくれたよ、お前は"

"その調子で、今日は…"


"…アタシ達をたんまり、

 儲けさせておくれよ。"


 何これ…なんなんですか、コレは?

 こんなの、私が知ってるお婆さんじゃ!

 お婆さんじゃ…

 …………?

 …お婆さんって…どんな人でしたっけ?


「…洗脳が解けたみたいだね。それがあの連中の常套手段さ」


 混乱する記憶の中から、シドさんの声が私を現実に引き戻しました。


「…種明かしをするとね。

 キミを育てたあの二人は…

 この星の人間じゃなかったんだ。」


 甦った当時の記憶の辛辣さに身震いする私に、シドさんはさらに衝撃的な事実をたたみかけました。


「彼らだけじゃない。僕も、あの怪物…『エイラス人』も…『アイツ』もね」


 その言葉に呼応するように、今まで視界を覆っていた閃光がにわかに薄れると…

 茂みの中から天空に向けて巨木のように聳え立っていたのは、見上げるほど大きな巨人でした。

 ついさっきまで充分大きいと思っていた怪物…エイラス人がへばり付いたビルと同じくらい背が高くて…

 たとえばテレビゲームで、画面に収まりきらないほどのデカキャラが出てきたときの処理にありがちな、相対的にプレイヤーキャラを含めたあらゆるモノが急にズームアウトして縮小表示されたせいで、遠近感と当たり判定がバグりまくるよーな…そんな非常識極まる巨大さで…

 要するに、


「…すごく…大きいです…!?」


 その全身は陽光を反射してか、はたまた自ら発光しているのか、薄ぼんやりと輝いています。

 あまりにも巨大すぎて影になっている部分が多いため、白いのか黒いのか、はたまた銀色なのかすら判然としませんが…一切なんの飾りっ気もない、のっぺりした人型。

 その顔には、ハニワのような穴ボコが二つ並んで開いてるだけで、他には何もありません。

 その穴の奥から、エメラルドグリーンの光が洩れて…


「…エメラルド…グリーン!?」


 ソレを見れば、たとえシドさんの説明が無くてもすぐに判ったことでしょう。

 あの巨人が…ラリスくんだって。


「それから…」


 呆然と巨人を見上げていた私に再び語りかけたシドさんの声に、ハッと我に返ってみれば…

 彼の容姿にも劇的な変化が生じていました。

 常に優しい微笑みを湛えたそのお顔は、確かにシドさんそのものなんですけど…

 全体的な印象が大幅に若返って、まだ十代の私よりも少し年上の、まるでモデルか映画俳優のようにハンサムな顔立ちに。

 それ以外はほとんど人間と変わらないのに、どこか近寄り難いのは…淡く虹色に輝く、人間にはあり得ない髪色のせいでしょうか。

 それまではキッチリ整えられていたその髪が、カーエアコンの風にそよいで…長さもかなり増しているようです。


「…キミもだよ」


 思わず見とれていたシドさんにそう言われた私は、遅れて「…え?」と我に返ります。

 私が…何ですと?


「キミは、この星の人間じゃない。

 『ルナリアン』と呼ばれる…いわゆる普通の地球人が言うところの『宇宙人』だ。」


 …はいぃ〜〜〜〜っっ!?





 などと驚きたいのも山々ですが、その一方でもはや驚き疲れた私の理性は、早々とあらゆる疑問の答えを模索し始めていました。

 いずれにしろ、こんな非常識な光景を目の当たりにしてしまっては…もう何を聞かされようと受け入れるしかありません。

 もっと女の子らしくパニックに陥ってキャアキャア騒ぎ立てていたほうがカワイイのかもしれませんが…スミマセン可愛げのない女で。


《『ガーディアン』カ!? クソッ…》


 巨人の登場に露骨にうろたえたエイラス人は、動揺が表れた触手をブルブル震わせて視線を彷徨わせましたが…

 やがて、再び私と目が合うと、思い切ったように顔…ではなく触手を跳ね上げて、


《今すぐソイツを寄越セ! その『ルナリアン』は吾輩が買ったものダ!》


 彼が言う『ルナリアン』って…まぁ考えるまでもなく、この私のことでしょうね。


「アレの言葉が聞こえてるなら、キミは間違いなく『本物』だよ。

 この同時通訳は宇宙連盟に登録されている種族にしか理解できない。

 いまだ未開惑星な普通の地球人には、ただの遠吠えにしか聞こえないはずさ」


 シドさんの遅ればせながらの解説に、あぁやっぱりそゆこと…と私も納得がいきました。


「僕ら『保護管理官ガーディアン』の最優先任務は、キミたち希少種族の保護。

 次いで、ああいった聞き分けのない『密猟者』の取り締まりさ」


 私を安心させようとしてか、シドさんが自らの正体を明かしました。いわゆる自然保護官レンジャーと同等でしょうか。

 そして、自分が地球人じゃなかったことを知った私があっけに取られている間にも、怪物と巨人の対峙は続いていました。


《貴様らなんぞにすんなり渡せるものカ!

 すんっっっごク、高かったんだゾ!?》


 おっと、エイラス人がなんか語り始めましたよ?


《ソレの購入資金を確保するために不動産も株も全部売っ払っテ…

 そのドサクサに紛れて会社の経営権をブン盗った部下にも裏切られテ…

 愛想尽かした女房と子供にも三行半みくだりはんを突きつけられテ…!

 なのに貴様らァッ…よォくも受け渡しの邪魔をしおってェーッ!》


 泣き落とし…"しつっこい"って、そっちの意味でしたか…。

 あんな見てくれにもかかわらず、思わず同情を誘う聞くも涙、語るも涙なお気の毒すぎるお話ですケド…

 『三行半みくだりはん』って、宇宙でも通用するんですね?

 そして、私の価値って…そんなふうに人生すべてを投げ打ってでも手に入れたいほどの代物なんですね…。


《ケッ知ったことかよ。ぜんぶ自業自得だろ。

 つーか、コイツが星間条約で取引禁止種族に指定されてることぐらい、オメーでも知ってるだろ?》


 負けじと言い返すラリスくんの声は、一次音声では「でゅわっ」としか聞こえませんが…そんな短い一言の中に、どぼぢでこれだけの訳が含まれるんでしょーか?

 見たところ発声器官らしきモノは何も見当たらないのに、どーやって喋ってるのかも宇宙の神秘ですし…。

 あーあと、その掛け声はなんかいろんな方面から怒られそうなので、今後はNGとして二次音声のみでお送りします。


「察しのいいキミなら、今のでだいたい解ったんじゃない?」


 隣でシドさん…だった宇宙人がシニカルに微笑みます。


「は、はぁ…いまだに半信半疑ですけど、一連のやりとりを追ってみれば…まぁ、大体は」


 簡単に言えば、実は私は国際条約で売買が禁止されている、いわゆる『レッドデータアニマル』みたいにメチャメチャ希少な絶滅危惧種で…

 とゆー割には、さっきから結構ぞんざいに扱われてた気もしますけど…

 そんな私を、どうやってか知らないけど見つけ出したお爺さんお婆さんに、いずれ売り飛ばすための『商品』として今まで育てられてきて…

 その購入者が、あの怪物で…

 引き渡し場所に向かう途中、ラリスくん達の妨害を受けて未遂に終わって…

 その後、地球人に扮したシドさん達の保護下に置かれて、今日まで守られてきた…?


「…ご名答。ただ一つ訂正させてもらえば…

 絶滅危惧種ではなく『絶滅種』だ。」


 こんな修羅場でも絶えず柔和だったシドさんの表情が、キュッと引き締まりました。


「ミサさん。キミはかつて完全に絶滅したと思われていた『ルナリアン』の、地球時間で約一千年ぶりに生存が確認された、全宇宙で唯一の末裔なんだよ」


 …………。

 …なる…ほど。あの怪物が喉から手が出るほど欲しがる訳ですね。あの身体のどこいらへんが喉なのかは皆目不明ですけど。

 てゆーか…なんだか途方もないお話になってきて…しかもそれが自分に関わることだと思ったら、急に震えが…。


「できることなら、キミにはそんな気苦労を背負わせないまま、一生穏便に過ごしてほしかったんだけど…まさか、御購入者様自ら白昼堂々、奪還に来るとはねぇ」


 虹色の髪をうざったそうに掻き上げて、シドさんはビルの上の怪物を見上げます。

 確かに…あれだけの巨体を白日の下に晒せば、地球が大騒ぎにならない訳がありません。

 彼らにとっては辺境の未開地にすぎないこの星で、原住民相手に正体を現すほどの危険行為は、あの怪物も本来望まなかったはずです。

 それが解ってても本人が直に乗り込まざるを得ないほどの焦りと、そうさせるだけの価値が、この私にあるのだと…。


「…大丈夫かい? 怖かったら、他の場所に避難して…」


 怖いことは怖いけど、もはやあの怪物とは無関係なレベルでの恐怖感ですし…


「…いいえ。どうせもう逃げ場なんて他に無いんでしょうし…あなたま達は私を助けてくれるために、此処に来たんでしょう?」


 シドさんの気遣いに首を振り、なんとか強がってみせる私に、


「…よし、強い子だ。」


 優しく微笑んだシドさんは、私の頭をそっと撫でて…まるで子供扱いながらも、やっと直に触れてくれました。

 その指先はかすかに震えて、汗ばんでて…まるで私よりも、むしろ彼のほうが、この私に怯えているようで…。

 それで私は悟りました。

 彼が今まで妻の私に触れようともしなかったのは…それだけ、私を大切に思ってくれていたから…ではなく。

 私という『存在』が、彼の立場ではおいそれとは触れられないほどの『希少価値』を秘めていたからなんだ…と。

 それでも、シドさんは…私のために…。


 …あれ? でもそしたら、ラリスくんのさっきの態度は…?


「…アイツはちょっと『奇特』な奴だからね。

 あんな真似、僕にはなかなかできないよ」


 私の疑問を見透かしたシドさんが、呆れたように溜息を吐きつつ、巨人のほうを見上げます。

 あー…なるほど。


"よぉ〜しよしよしよしよしっ♩"


 そうあやしつつ初対面の猛獣たちに不用心に特攻しては、大蛇に絞め殺されかけたり、肉食獣の牙にかかりかけた某有名動物学者さんのある意味勇姿が、朧げながら脳裏に…。

 そっか…だからラリスくんは、この私にも…。


「…もっと詳しく知りたいかい? キミの出自について」

「…お願いします。」


 ここまで来たらもう、どんな話だろうと受け入れるしかありません。


「それじゃあ…『黄金比』って知ってるかい?」

「へ?…え、ええ、基本的なことなら」


 いきなり話題が飛んだシドさんの問いに、目が点になりかけながらも、私はなんとか頷き返します。

 『黄金比』とは、人間が最も調和や美しさを感じられる比率のこと。

 古代の建築物や美術品の数多くに用いられている他、自然界や生物にも散見される、一定の割合法則を指します。

 私達が日常的にいう『バランス』などの曖昧な基準も、よくよく調べてみれば無意識的にこの比率になっていることが大半です。


「たとえばホラ、この名刺のサイズとかもね」


 と、シドさんは懐から引っ張り出した自分の名刺を、キザな仕草で私に見せびらかしながら、


「コレは実は人間だけじゃなく、この広い宇宙全般に有効な、絶対的な価値観でね。

 世界中に棲息するあらゆる生物の中でも、この法則に最も多く当てはまる生態に恵まれた、まさに奇跡的な麗しの種族…

 それがキミ達『ルナリアン』なんだ。」


 その名刺をポンッと手渡して、羨望の眼差しで私を見つめました。

 超絶美形な旦那様から間近で熱視線を浴びせられて、嫌が上にも顔が火照りますが…なるほど。

 貨幣価値が一般的となる以前の、はるか太古の昔より、現在もなお変わらない絶対的な価値観を誇るモノ…

 それは宝飾品や美術品であり、そのデザインや構図の至るところに『黄金比』が盛り込まれています。

 そんな美の極地をより多く含む生命体が存在するとなれば、その価値もやはり宝飾品並みか、それ以上となることでしょう。

 …それこそが『ルナリアン』。

 私の御先祖様です。





 遥か昔、銀河の彼方で…

 私達が棲まう太陽系から、それはもう気が遠くなるほどムチャンコ離れた辺境星系にて、彼ら『ルナリアン』は産声を上げました。

 宇宙随一の美しい母星にて順調に進化を重ね、その優れた知性と科学技術、そしてなにより稀有な美貌に恵まれた彼らは、瞬く間に近隣星系を制圧し、一時期は一大銀河帝国を築き上げて…彼らの文明は栄華を極めました。


 しかしやがて、その栄光が周囲に知れ渡ると、何もかもが恵まれすぎた彼らを羨む敵性勢力が次々と襲来するようになります。

 元より平和を愛し、争いを好まない彼らは…


「…ここいらの伝聞に関しては、キミの日頃の言動を見てると、甚だ違和感がねー…」

「オホホホホホ黙らっしゃい♩」


 え〜、彼らルナリアンは防戦一方となり、次第に追い込まれていきました。

 やがて、度重なる敵の襲来や、自らの文明の進歩により環境汚染が進んだ母星を放棄するという苦渋の決断に及んだ彼らは、間近の衛星を丸々巨大な移民船に造り換え、全民族を乗せて放浪の旅に出ます。

 まだ見ぬ新天地を目指して…。


 船内で世代を重ねた彼らは、かろうじて居住可能な星を見つけては移住希望者を下ろして永遠とわの別れを繰り返しつつ、それでも十二分に母星の代わりとなり得る希望の地を目指して、あてもなく彷徨い続けました。

 その間にも敵の襲撃は続き、せっかく見つけた移民星は次々に攻め落とされ、また時折船内に侵入した敵に仲間を強奪されるなどして、急速にその人口を減らしていきます。

 ある時、敵の目的がもはや彼らの物資や技術ではなく、"彼らそのもの"にあるとようやく気づいた彼らは…


「って、そこに気づくまでにえらい時間かかりましたね?」

「当時はまだ全宇宙情報通信ネットワークの構築前だったし…なにぶん逃亡中の身じゃ、得られる情報は極端に限定されてしまうからね」


 要約すると、やはり『ネット検索』は偉大な発明とゆーことで。

 ルナリアンはその美しさから"鑑賞用"として、あるいはその肉体から抽出される各種素材が美容品や医薬品の"原材料"として…

 挙句は、その肉を食せば永遠の美貌と若さを得られるという根拠のない俗説から"食材"そのものとして、宇宙中の人々に珍重され、狙われていたのです。

 世界規模のネット社会となった今日でさえ、得体の知れない噂や嘘に踊らされる輩が後を絶たないのですから、大昔なら尚更ですよね。


 で、どれだけ逃避行を続けようと自分達の乱獲は止まないことに気づいた彼らは、それ以上の放浪を諦めるとともに一計を案じました。

 世間が彼らを求めてやまないなら…彼ら自身が『ルナリアン』であることを止めてしまえば、外敵は興味を失うのでは?…と。

 すなわち、全くの『別種』へと進化…もしくは退化することを決断したのです。


 その時点で到達していた宙域にて、敵の襲来を凌ぎつつ、膨大な時間をかけて周辺環境を整備していった彼らが創り上げた、まさしく『新天地』…

 それこそが今現在、私達が棲まう『太陽系』であり、かつて捨て去った彼らの母星に似せた『地球』だったのです。

 住み慣れた移民船から地球へと降り立った彼らは、土着の生物に生態改造を施し、彼らに似せた人種を人工的に誕生させました。

 そして、その群れの中に自らを紛れ込ませて追手の目をくらましつつ、新人類との交配を重ねて、少しずつ新たな我が家『地球』に溶け込んでいきました。

 言うまでもなく、それこそが『人間』のルーツです。


"神は空と大地を創り、

 自らに似せて人間を造った。"


 旧約聖書の冒頭に記された壮大な物語こそが、まさにこの偉業でした。

 その頃には、彼らが遠路はるばる運航してきた馴染みの移民船はとうに朽ち果て、元の星も同然の姿を取り戻していました。

 それはやがて地球の引力に導かれ、周回軌道に乗って衛星と化していました。

 真夜中には太陽の輝きを受けて淡い光を放ち、足下をほんのり照らすその星のおかげで、彼らの子孫である人類は、もう夜の暗闇に怯えて過ごすこともなくなりました。


 かつての祖先の仮宿だったその星を、その子供である人々は夜な夜な見上げ、親しみを込めてこう呼びます。

 アジア圏では『月』。つき・ユエ・ドゥアン…。

 英語圏では『MOON』。

 他にも『カマル』や『ゲアラハ』等々、国によって様々ですが…本来の意味以外でも季節名や歳月名など、広範囲に渡って用いられています。

 太陽以上の正確さで常に地球を巡り、時を刻む月は、人々の生活基準には必要不可欠な存在なのです。

 今も、昔も…。


 そして、古来より世界の広範囲で用いられてきた、ラテン語では…


 …『LUNAルナ』。




【第一話END】

 去年暮れに公開した前々作『野性刑殺』最終回以来、激烈お久しぶりと相成りました。

 そちらのあとがきには、当時第三話まで公開した前作『SHYなワン畜生(仮)』が近々再開だのと書いた気がしますが…それからまぁ諸々ありまして。

 具体的には、うっかり『フォールアウト4アニバーサリーエディション』にぬっぷりドハマりしてしまいまして(笑)。

 極めようとすれば、それこそ何年あっても足りないほどの膨大なボリュームを誇るそやつのおかげで、つい最近まで他には何も手がつきませんで。

 4ループ目のエンディングを拝んでよーやく飽きが見えたので、やっとこさ執筆を再開できました。


 んが、『犬畜生』はまさに勢い任せで突っ走ってしまったため、今頃になってあちこち綻びが出てきてしまい…。

 なんとか解決できそうなものの、全体的な再構築にはもうちょい時間を要しそうなので…

 その間に、やはり思いつきで勢い任せにでっち上げた(笑)最新作『げんじつ。』を先にお送り致します!


 本作の発想の原点と致しましては…

『いや〜人妻って本当に良いモノですネ☆』

 …ホント、ただそれだけです(笑)。

 親代わりの老夫婦を失い身寄りがなくなったヒロインが、お隣さんのナイスミドルと再婚し、そこん家のショタ息子に散々振り回されてみだらにみだれまくり(あえてひらがな表記)〜の!

 とゆーベッタベタでダメダメな設定は瞬発的に捻り出せましたが…

 ん〜、別にコレでもぢゅーぶんオモロいとは思うけど…なーんか、なーーーんか足りない!


 ちうわけで、実は『野性刑殺』のときにチョロッと考えたものの、使い道がなさそうなので泣く泣く没にした一連の『ルナリアン』ネタを再利用することに。

 コレもネットで「太古に月は無かった」的なトンデモ記事を見かけた途端にひらめいた瞬間芸ですが、その割には説得力ありませんか?

 なのでヒロインのルックスが黒髪・長身・巨乳で超絶美人♩と、『野性』のヒロイン・靖利やすりとダブってる次第です。

 でも中身は全然別物だから、まいっか☆

 とりわけ今回、お話的に超絶美人というポイントは外せませんし。巨乳は単なる嗜好ですけど。


 そんなこんなで第一話を書き上げてから、改めて見直せば…アレ? 自分の作品にしては女っ気が全然無いな…と。

 今回はヒロイン美沙兎みさとの心理描写が重要なため一人称視点にしたせいか、主な女性キャラは他には育て親の婆さんだけで、あとはぜぇーんぶ野郎ぢゃあ〜〜〜ん!?(笑)

 ま、それなりに調和はとれてるしオモロいから別にいいですけど。

 最初は若妻xショタものをやりたかっただけなのに、『異文化と異種族のディスコミニュケーション』なる崇高なテーマまで加わっちゃいましたし、儲け儲け♩(笑)

 あ、今回はそれほど過激なシーンもないんで、よーやく全年齢対象になりました。

 今後はどーなっかワガンネけど♩


 てなわけで、今後ともしばらくお付き合い頂ければ…と。

 あとラリスくんに例のストーカーラブレター送りつけた主(推定JC)に関しては、一回こっきりの捨てキャラのつもりでしたが、何やらオモロくなりそーな予感なので、そのうちちゃんと登場させるつもりです♩

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