第22話:左京<2>
晶は、左京と疾風のやり取りを見ながら一人溜息をついた。部屋に入ってきた左京を見た瞬間、この人物は一筋縄ではいかないと思った。
これも一種の接客業だからか、表向きの態度はどちらかというと紳士的で好印象を与えるものだ。しかし、いざ話し出すとそれとは逆。しかも、あからさまに疾風を怒らそうとあおっている。
(ここは、さっさと話を終わらせて帰るべきでしょうね)
そう判断した晶は、疾風から会話の主導権を奪うことにした。
「今回は、ある女性達を探して欲しいのです」
「あぁ、水鏡の姫のお付きの方々ですね」
「ずいぶんとお耳が早い」
「当然です。一応、この東京で一番の情報屋だと自負しております。それに大分噂になりましたから、あの水鏡の姫が里を飛び出しこの東京に潜伏しているらしいと。そして噂の真偽を確かめるのが我々の仕事ですから」
その言葉に晶は、思わず顔をしかめる。
左京の口ぶりからするにかなり噂になっていたのだろう。という事は、すでに彼女が自分達の元にいることすらも敵には筒抜けかもしれない。
「探して欲しいのは、水木 流衣、水木 流花の二人です。流衣さんの方は、電話が切れる瞬間、爆発音がしたそうです。流花さんの方は任務についている最中でこちらから連絡を取るのが不可能な状態になっています」
「…………いいでしょう。お引受けします。数日、時間を頂けますか?」
「もちろんです。それで、報酬の件ですが」
「とりあえず、これくらいですかね。その他、調査に掛った実費も追加されると金額は変わりますけど」
左京は、電卓を取り出し金額を打ち込むと晶にそれを差し出す。受取ってその金額を確認した晶は思わず声を漏らす。
「…………これは」
その晶の反応を見て興味をひかれた疾風は、脇からそれを覗きこむ。そしてその瞬間叫んだ。
「一千万!? 人探しに? これにあとどれだけ追加されるんだよ!!」
「さぁ? それは動いてみないことには何とも。ただ、この店の調査員は一流の能力者ばかりです。彼等の能力を安くみられては困ります」
そう言って左京は微笑んだ。