第八十二話 激闘の末
「おーい、ルー。入った方がいいよな」
『っ!助かる!」
ルーは一瞬スグルの方を見て、すぐに後退する。
それでようやく気付いたのか、オーガは新しい獲物を見つけたとばかりに大きく吼えた。
『正直あの硬さには参っていたのだ。む、そこに居るのはスー殿か』
「やっぱりルーさんだったのですね〜」
「なんだ、お前ら知り合いだったのか?」
目敏くスグルの肩に乗っかっているスーを見つけたルー知っている風な口調でスーに話しかけた。
『幾度かダンジョンに潜っているたびに知り合ってな』
「そうそう〜。久しぶりです〜」
「感動の再会ってわけでもないがそろそろ来るぞ」
オーガとの距離は既に10メートル程度。数歩歩けば届く距離だ。
「ルーは撹乱、スーは何ができるかわかんないけど出来るならその補助を頼む。俺は正面から行く」
『承知した』
「了解しました〜」
ルーが再度オーガの所に向かって行く。
スーも肩からふんわりと飛び、
「アースバインド〜」
と気の抜けた声でそう言った。
すると、今にもルーに振り下ろされようとしていた棍棒ごと、オーガの腕に向かって天井から土が急速に伸びていき束縛した。
「グォ?グァー!!」
動かない腕を見て戸惑いの呻きを上げたが、顔を真っ赤にしてスーの方を見ると纏わり付いた土を一瞬で粉砕した。
「あらら〜怒らせちゃったみたいですね〜」
「いや、隙には十分だ」
スーの横を走り抜ける。
瞬く間にオーガとの距離を詰めたスグルは「オラァ!」という掛け声とともにオーガの脚に斬りつけた。
しかし、夜鳴を斬りつけた場所には浅い傷しか出来ない。
勿論オーガはそんなもの気にした様子もなくスグルの方に砂を払った棍棒を打ち込む。
「硬すぎだろおい!」
迫り来る棍棒を避けながら自らが作った傷を確認し、思わず愚痴る。
しかし、自分に傷付けたことで初めて敵認定したのか、スグルの方を向き執拗に攻めて来る。
「ええい、ウザいぞ結構!」
棍棒で攻撃は遅いが、不規則に攻め立ててくるのと何も持っていない左腕での攻撃がスグルに向かって振り回される。
スーがアースバインドで拘束するも、直ぐさま破壊され殆ど足止めにもならない。
暫く避けていたが、スグルが後ろに大きく後退してようやく攻撃がやんだ。
「フゥー、よし」
オーガも吐く息が荒くなっているのを確認し腰につけてる一口サイズのお菓子を口に放り込んだ。口の中にほのかな甘みが広がる。
流石に料理ほどではないが、【食は大事!】の効果で疲労が回復した。
『主君、大丈夫か?』
攻撃がさして聞かないことを心配してルーは後ろに下がり、そう聞いてくる。
「ああ、次で決める。スー、一瞬でいいからあいつを固めてくれ」
「ちょっとこめる魔力を強めたら行けますよ〜。少し時間がかかりますけど〜」
「よし、その間はルーとあいつを錯乱するぞ」
『承知!』
スーは後ろに下がり両手を組んで集中し始める。
オーガの息も整ったようで、再度攻撃を開始した。
スグルとルーは避けることに専念しながら時間を稼ぐ。
1分ほどそうしていた頃、二人にスーから声がかかった。
「準備できました〜避けて下さい〜」
オーガから離れたのを確認し、スーは
「アースバインド!」
これまでで一番気の入った声でそう言った。
これまでと違い、オーガの周りの土全てが全身に巻きついて行く。
一瞬でオーガの土人形が出来た。
「これでも長く持たないと思いますよ〜。仕留めるならさっさとどうぞ〜」
「ああ!」
土の人形に気をとられていたスグルだが、人形に既にヒビが入ってきているのを見て普通に近寄る。
そして風の魔力を夜鳴に送り込む。
すると、夜鳴は以前にも増してはっきりと緑色の空気を纏った。
「MP200だ!喰らえ!」
スグルは土を纏っているままのオーガに向かって袈裟斬りを放った。
先ほどのスグルの攻撃を止めたその筋肉は、しかし、なんの抵抗も残さないまま夜鳴を振り抜かせた。
そして、オマケとばかりにオーガの周りで小さな竜巻が発生し無数の風が易々とオーガの皮膚を切り刻むほどの威力で攻め立てる。
オーガは断末魔さえ残せぬまま、ポリゴンと弾け飛んだ。
スーの身長は15〜20センチを想定しております。




