十一話
一方その頃ルシエンは、ノアの作った錬金薬を持って、依頼主の待つ部屋へと向かっていた。王立騎士団からの依頼なのに、受け渡し場所が魔導教会なのは、毎度のことながら不思議ではあるが、受け取る側にも何かしらの規則があるのだろうと考えていた。
そして部屋へと辿り着きドアをノックする。すると中から「入っていいぜ」と少々粗暴な言葉が返ってきた。ルシエンはとある人物を頭に思い浮かべながら、一言声をかけながら部屋へと入る。
そこで待っていたのはルシエンの想像通り、王立騎士団の団長であるティスタであった。彼は平民出身でありながら騎士団長であり、言葉使いが少々粗暴である。キチンとした場であるなら言葉使いもちゃんとしているそうだが、ルシエンはその姿を見たことがないため、真偽は不明である。
「お待たせいたしましたティスタ様」
「なーに気にするな。それよりお前さんが来たと言うことは、あの大錬金術師の弟子が作った薬か」
「えぇ、そうですよ。こちらお確かめ下さい」
そう言うとルシエンは錬金薬をティスタに手渡しした。ティスタはその中のひと瓶を取り出すとまじまじと見つめる。
「ま、あの弟子なら大丈夫だろ。今までも変な物を掴まされたことはないからな」
「当然です。それに、アルメリア様が直々にチェックしていますから、おかしな物が混ざる可能性もありませんよ」
「ははっ、それを聞くのも何度目だろうな。……っと、そろそろ戻らねぇと」
「おや、今日は随分と慌ただしいのですね」
そう言うくらいならば何度も聞かないでほしいと思いながら、ルシエンは疑問を投げかける。普段であればこのまま雑談を始めては、いつ終わるのだろうかは思う長話を聞かされるため覚悟もしたのだが、今日に限ってそんなことはないらしい。
「なんだぁ? もしかして寂しいのか?」
「そんなわけないでしょう」
「冗談だよジョーダン。単にここ最近忙しくてな。ここに長居するどころかゆっくり出来る時間もほとんどないんだよ」
「それはまた大変そうですね。差し支えなければ理由を伺っても?」
ルシエンは再び疑問を投げかける。記憶に間違いがなければ、ここ十数年ほどは王立騎士団はどちらかと暇を持て余していたはずだ。それなのに急に忙しくなるなど、何かがあったに決まっている。街の雰囲気が一変した原因が少しでもわかるかも知れれば御の字だと思っていた。
「どうも最近魔物が増えていてな、その対処に追われてんだ。まだ街には被害が出ていないが……このまま続けばどうなるかわからん」
「それはまた……街に被害が出ないことを、ティスタ様含め皆様が頑張ってくれることを祈ることしか出来ませんね……」
「そうならないためにも回復薬が大量に必要でな。近々また頼むことになりそうだ」
「わかりました。アルメリア様にも共有させていただきますね」
「おう、頼んだぜ。それじゃあもう行くからな」
「お時間をいただきありがとうございました」
ルシエンが礼を言い終える前に、ティスタは足早に部屋を立ち去った。余程急いでいたのだなと思いながら、ルシエンはアルメリアから聞いていた情報と今しがたティスタから聞いた情報について考えていた。
(ノア様の感じた違和に関係しているのは確かでしょう。ですが、魔物が増えた原因は一体……?)
ひとまず考えるのはアルメリアと合流して情報の共有をしてからにしようと思い、部屋から出ていくのだった。




