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堤防にてロマンを求める

上上手取は、誰もいない堤防 が舞台で『傘』が出てくる切ない話を3500文字以内で書いてみましょう。持ち時間は一時間。

 ぴゅうぴゅうと湿り気を帯びた風が俺の体にたたきつけられる。

 それもそのはず、今、この地域は台風が接近してくるという理由で天候は荒れに荒れている。そんなさなか俺がやってきたのは高波打ち付ける堤防。よくニュースで”台風が近づいているというのに波を見に行って行方不明になる”ということで有名なあの堤防だ。そんな場所で俺は傘を持って佇んでいた。


 思い浮かべるのは友の声


「剣圧で波をシュパーッて切るのかっこいいよな!」


 そんなことを言っていたあいつはいつの間にか中二病(俺と同じ志)を卒業し恋人を作ってリア充になっちまいやがった! ガッデム!


 ふふふ、かつて友だったものよ。お前が失くしてしまった思いは俺が引き継いでやる!

 俺は閉じたままの傘を横薙ぎに構え思い切り振りかぶりながら言い放った。


俊介(しゅんすけ)ストラッシュ!」


――――――――


 あれからどのくらいの時間そうやっていただろうか。俺の衣服はぐしゃぐしゃに濡れそぼり潮風と波しぶきに体温を奪われ手はかじかみ歯はガチガチと震えていた。


 ……どうやら俺の中の魔気混合炉エミタルフュージョナーは今日は調子が悪いようだ。本来の実力を発揮すれば海を割ることも容易いというのに……


「ぶえーくしょん!」


 俺の口から盛大なくしゃみが放たれた。……頃合いか。今日はこのくらいにしておいてやろう。


「こらー! キミ! そんなところで何してるの! 早くこっちへ戻ってらっしゃい!」


 そろそろ帰ろうかという時堤防の入り口から声がかけられた。くっ! アヤツはいつも我が覇道を阻む政府の手先ではないか!

 俺が躊躇しているとアヤツは小走りで俺のところへやってくると自らがかぶっていた外套を脱ぎ俺に無理やり纏わせた。


「あ~もう、またあなたなの。こんなにびしょびしょになって。交番にちょっとしたお風呂と着替えがあるからそこで温まってから帰りなさい。このままじゃ風邪を引いてしまうわ」


 そのセリフが言い終わるかどうかという時にひときわ大きな波しぶきが俺達を襲う。そしてあろうことかこの政府の手先は俺をかばい頭の先から爪先までぐしょぐしょになってしまっていた。ふ、ふんいくら我が敵とはいえ愁傷な心がけじゃないか。そこまでされたらお主の言うことを聞くのも吝かでは……。俺のそんな思考は彼女の姿を見て亜空間の彼方へすっ飛ばされることになる。


「あ~もう、全身ビッショビショ。ほら、早く交番まで戻るわよ。ん? どうしたの。お姉さんの顔をじっと見つめたりなんかしちゃって」


 ……有り体な表現しかできない我が語彙の不足を嘆くが、濡れた制服が体の線にピッチリと張り付いてむちゃくちゃエロい! やべぇ! マジやべぇ! この人こんなにスタイル良かったのか! っていうか俺これからこの人と交番へ言ってお風呂はいるんだよな! な! うお~やべぇ! なんかみ・な・ぎ・っ・て・き・た!


――――――――


「うっわエロすぎ~。お前なんて格好してんだよ」

「そういうあなたこそびしょびしょじゃない。なぁに? 私の事心配して傘もささずにきてくれたの?」

「うっせ~ば~か。そのとおりだよちくしょう」

「え! あ……うん。ありがとう……」


 交番の中に入った途端繰り広げられるラブコメ空間。ナニコレ。まるで俺がおじゃま虫みたいだ。……というか完璧おじゃま虫ですねそうですね。


 この空間に耐え切れずこっそり帰ろうとしたのだが男の方に目ざとく見つけられ何故か男と一緒に風呂にはいることになった。

 あ~、おねぇさんは一緒じゃ……ないですよね。ハイ。


 変なことを口走った俺は男からちょっと厳のある視線を向けられつつ先に入ったおねぇさんがお風呂からあがるのをいたたまれないなか過ごすのであった。


「さ~てそれじゃぁ風呂の中でいろいろと話しを聞こうじゃないか。俺の恋人の手を煩わしている問題児くん」


 う、う、そんな恋人の部分を強調しなくてもいいじゃないか! そりゃ俺だってちょっとは期待したけどそれがこんな形で裏切られるだなんて……現実(リアル)なんてクソゲーだよまったく!


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