肉のないハンバーガー
上上手取は、静寂に包まれた公園 が舞台で『ハンバーガー』が出てくる悲しい話を2500文字以内で書いてみましょう。持ち時間は一時間。
時刻は昼食時。僕はひとの行き交う喧騒から離れ自然豊かな落ち着いた公園にやってきた。
手にはハンバーガーとポテト、それにドリンクの入った紙袋。作りおきではなかったらしく幾ばくかの時間がたった今でも紙袋越しにそのぬくもりを感じることができる。
何でもこの辺に最近新しく出来たハンバーガーのチェーン店。とはいっても未だ日本に20店舗もないとか、そういうマイナーなハンバーガー屋だ。
メニューを見てもハンバーガーをメインに据えてはいるがピザやお好み焼きなどもありもはや何を主力にしているのかわからない。
一応新規開店という物珍しさとお店のメニューに書いてある品は全て持ち帰りができるということでそこそこ繁盛はしているようだ。
今日買ったメニューはオーソドックスにハンバーガーセット。お値段710円なり。大手のハンバーガーショップと比べると少々お高い値段だが、天然素材にこだわった云々とまぁそういう謳い文句でいかにもちゃっちいといった作りではないのだろう。
俺は公園に備え付けられたベンチに腰を下ろすと紙袋の中身を開き始めた。ハンバーガー、ポテト、シュワシュワ炭酸の黒い色の飲み物。うん全部あるな。
それでは頂きます。時刻はちょうど12時を少し回った頃。僕は両手を合わせると頃良い昼食にとりかかった。
まずはハンバーガーにかぶりつく。パンはスカスカしたものではなくふっくらとして肉汁の染み込んでいない非常に美味しいものだった。これだけで安売りされているハンバーガーとは一線を画することがわかる。もぐもぐと咀嚼しながら挟み込まれたレタスを噛みしめる。シャキシャキとして瑞々しい新鮮なものだ。天然素材を使っているというのもあながち間違いではないのかもしれない。そしてメインとなるハンバーグだが……あれ? あれ? いくら噛みしめても肉の味がしない。
僕は疑問に思って二口三口とハンバーガーにかぶりつく。しかしいくら口を動かしても肉のにの字も感じることができなかった。まさかとは思うが……
僕は手に持っていたハンバーガーをフタを開けるように開き中に入っている具材を確認する。パンズ、レタス、マヨネーズ、ピクルス……肉がない! ハンバーグが入ってないよこれ!
なんということだ……お店の人によるハンバーグの入れ忘れ。これじゃあハンバーガーじゃなくてレタスサンドだよ。
今からでもお店に戻って取り替えてもらおうか? でもここまで来るのに20分は歩いてきたからなぁ……また戻るのはちょっとめんどい。
「お、新日島じゃん。どったのこんなところで?」
そんな時、俺にふと声がかけられた。同級生の傘蒲だ。丈の短いスカートに一瞬おおっとするがすぐにその裾からはみ出しているスパッツに気がついてしまった。ちぇっ、僕の期待を返してほしい。
その次に俺の目が行ったのは傘蒲が押していた自転車だ。あれがあればお店まで20分もあれば往復できる。
「傘蒲! 頼む自転車貸してくれ!」
交渉の結果ポテトの袋半分で手を打たれた。なんという強欲な女なのだろう。僕は内心、涙を流しながら借りた自転車に飛び乗った。
――――――――
無事お店でちゃんと肉の入ったハンバーガーと引き換えてもらって僕は再び公園に帰ってきた。「こちらの手違いですから」と肉の入ってないハンバーガーもつけてくれた。……正直押し付けられたこのレタスサンドもどきどうすればいいんだろうか?
公園の中自転車を押しながら傘蒲のところに戻る。傘蒲はまってる間暇だと言ってポテトを先払いすることを要求してきたのでポテトとコーラはここにおいてきたままだ。何故か嫌な予感のした俺が戻るとそこには案の定ポテトとコーラを空にした傘蒲がバツの悪そうに座り込んでいた。
「いや~ここの店のは美味しいね」
そう抜け抜けと言い放つ傘蒲に俺はなんと言っていいのやら。こちらにも自転車を借りた負い目というものがあるからあまり強く言うこともできない。とりあえず飲み物無しでハンバーガーは辛いので自販機でジュースを奢らせることにする。
そしていざハンバーガーを食べようとしたところでこちらをじっと見つめる視線に気がついた。手の中のハンバーガーを動かすとそれに追従するように視線がついてくる。
「いやぁ、それも美味しそうだね。半分頂戴? なぁ~んて……」
いけしゃぁしゃぁと……そこで僕は処分に困っていた食べかけのレタスサンドもどきがあることを思い出した。……しかしこれは食べかけだ。これをやると言ったら食いかけなのを理由に半分こづつ食べようなどと言い出すかもしれない。
「じゃ、じゃあ僕にじゃんけんで買ったらこれを上げるよ。負けたらこっちのレタスサンドもどきね」
そんな僕の提案を元にじゃんけんが始まった。しかし、僕はこの時失念していたのだ。傘蒲がじゃんけんの学園内チャンピオンだということに。
――――――――
「あ~ほら、ふさぎこまないで。ね? 半分あげるから」
案の定僕はじゃんけんに負けて肉入りハンバーガーは傘蒲のものになった。なぜ僕はあんな提案をしてしまったのか……
僕はレタスサンドもどきをガツガツとペットボトルのジュースでで流し込むと傘蒲に肉入りハンバーガーを押し付けこう言ってやった。
「ごれで勝ったと思うなよ~~」
「あ~わるかった。ほんとごめん。だからマジ泣きしないで~」
僕はなぜか傘蒲に抱きしめられれ頭を撫でられされるがままなのであった。
決して女の子の体はいい臭がするんだなだなんて思っていないんだからね!




