ひと夏のアバンチュールを夢見て幼なじみの練習に付き合ったらそれがぶち壊されそうな件
上上手取は、誰もいないプール が舞台で『コーラ』が出てくるラブコメな話を3ツイート以内で書いてみましょう。
「なぁ、なんでプールに入んないんだ?」
プールの縁で水を見つめたままつったっている明日菜に向かってそう疑問を投げかける。
「ね、ねぇ亮平。やっぱ今日はやめておかない?ほら、空も雨が振りそうだし。明日から! 明日から頑張るから!」
な~にが雨が振りそうだ。空は雲一つない快晴だ。
「とっとと観念してプールに浸かれっ!」
俺は明日菜のおしりをプールに付加って蹴りだすと「この薄情者~」という声とともに大きな水しぶきが上がった。
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――私に泳ぎを教えて――
そう幼なじみの明日菜が俺に頼み込んできたのが二日前。何でも友達に泳ぐのが得意なんだと大見得を切ってしまったらしい。犬かきすらできないお前がよくそんなことを豪語できたものだ。
幸い学校にはプールがないので嘘がバレることはないと安心していたのだが友達のお兄さんが海に連れて行ってくれることになったらしい。それでこいつは急遽俺に泣きついてきたのだ。なのでその海とやらに一緒に連れて行って貰う約束を取り付けてもらうことで俺はその無茶振りを了承した。こいつの友達は学校でもトップレベルの奴らが揃っているからな。こいつもその中に混じっていても見劣りしない容姿なのだがまぁ長い付き合いなのであいにく恋愛対象として見れないのだ。
目指せ! 夏のアバンチュール! 俺だって恋人がほしいやい。なんか6月の体育祭辺りから俺の周りはそういう輩が増えた。リア充なんて死んでしまえばいいのに……いや俺に恋人ができてリア充になったとき困るからさっきのはやっぱなしで。
「それにしても誰も居ないね」
「ここ穴場なんだよ。お前が誰にも知られたくないって言うから探すの苦労したよ」
監視員のおじいちゃんはプール脇に建てられたテントの日陰で涼んでいる。このプールには俺達以外誰も利用者はいない。
「……二人っきり……だね……」
「雰囲気を出すな雰囲気を」
俺をからかおうとする明日菜の頭をはたきとりあえず手をとってバタ足をさせておいた。
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「ずかれた~」
ヘトヘトになっている明日菜と自販機に来て俺イチオシのドリンクをおごってやることにする。まぁいつも気を散らしがちな明日菜にしては頑張ったほうだしな。
「うっげ、タールコーラ。亮平は相変わらずこれ好きだね~。私これねばつくからちょっと……」
なにを言う。普通のコーラとは違うドロッとねばつく感じが良いんじゃないか。
「うっぷ。っほ。ううう、だめ、やっぱ無理。亮平、残り飲んで~」
は~せっかくのおごりを無下にするとは。俺は明日菜からペットボトルを受け取り一気飲みする。喉が粘つき炭酸のシュワシュワがいつになっても口内を刺激する。うん、これだよこれ。
ふと、明日菜を見れば何やらニヤニヤとしている。
「いや~まいっちゃうな~これって間接キスだよね~これは海に行く前にみんなにしっかりと教えておかないといけないな~」
ちょっと待て。そんな噂を流されたら俺のアバンチュール計画が!
こいつはいつもそうなのだ。俺に気のある素振りをしていつも俺を振り回して……そのくせ俺の告白は「え? なにか言った?」と聞き流すやつなのだ。あの状況で聞こえてないわけ無いだろ!
「そんなことをするならこの残りをお前の口に注ぎ込む」
俺はペットボトルの残りを掲げ牽制する。そうすると明日菜は
「げ、それは勘弁」
と逃げ出した。
俺達の追いかけっこは目を覚ました監視員の爺さんに怒られるまで続いた。
その時、「真っ昼間からいちゃつくとは……青春じゃの」なんてことをつぶやかれたが盛大にそれは違うと物申したい。




