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4話 宙船(そらふね)

 数か月後、山科さんは、恋愛に興味がないのになぜか複数のイケメンに言い寄られて困っちゃう、という立場になった。そして、私と竜太を監視するのをやめた。

 私は私で、必死に勉強をして同じ高校に入った竜太と恋人になれて、幸せな日々を送っている。そして中学のときと同じく、一緒にサッカー部に入っている。ジョアン君とは、いい友だちだ。

 夏休みが過ぎて、二学期に入った。忠勝先輩がちょんまげになり、ジョアン君がブラジルに帰った。あと、ほかの攻略対象たちにも、いろいろあったらしい。山科さんは激怒した。

「主人公はやめる。ゲームのリセットボタンは、どこにあるの?」

 彼女は、竜太ほどゲームの知識がなかったようだ。だから、ちょんまげなどについて知らなかったのだ。

「山科さんはきっと、攻略本を読まずにプレイしていたのだろう」

 竜太は、再び手ぬぐいで涙をぬぐった。純和風の竜太の家には、ハンカチなどというハイカラなものはない。

「俺はちゃんと、攻略本もゲーム雑誌も読んでいた。俺は乙女ゲームに限らず、プレステのゲーム全部が好きだった」

「はぁ」

「山科さんがリセットボタンを押すと、この世界は、高校の入学式まで時間が戻るかもしれない」

「それは困る」

 せっかく、攻略不可レベルに天然で鈍感で、無自覚な女たらしの竜太を落としたのに。

「山科さんには、ゲームを続けてもらいましょう」

 私は、竜太とうなずきあった。そこで翌日、

「彼のすべてを受け入れる、それが愛よ」

 わざわざ着物で登校して、山科さんに言った。私服可の高校なので、ふりそでもOKだ。私が山科さんを説得する後ろで、竜太がマイクを持ってしみじみと演歌を歌った。

「ありがとう。私は、まちがっていたわ」

 山科さんはいたく感動して、ゲームの続きをやり出した。そして、ちょんまげ忠勝先輩と付き合うことにしたらしい。二人は、趣味がよく合うそうだ。

 私と竜太はほほ笑んで、できたてカップルを見守る。ゲームのエンディングソングが聞こえてきた。


ものごころがついたときからずっとそばにいる あなたが好きなの

あなたのそばにいたいから サッカーのルールを覚えたわ

なのに、あなたは信じられないほど鈍感で

毎年作るバレンタインのチョコにこめた 私の気持ちに気づかない


 私は子どものころと同じように、竜太と手をつないで下校した。


+++


○学園恋愛アドベンチャーゲーム「恋する和装の怪力娘 セカンドシーズン」

○プレイステーション2専用ゲームソフト

○隠しキャラ 竜太 ハッピーエンド

○獲得スチル枚数三枚 お弁当を食べる竜太 マイクを持って歌う竜太 手裏剣から主人公を守る竜太

○備考 幼なじみの竜太は、プレイステーション専用ゲームソフト「恋する和装の怪力娘」では、攻略不可のサポートキャラだった。だが、人気が高かったために、「恋する和装の怪力娘 セカンドシーズン」では攻略対象(ただし隠しキャラ)になった。

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