第1話
●ファーストフード店
昼間の込み合う店内。
セーラー服を着た三人の女子高生が、テーブル席で話している。
井岡「夏休みどこ行く?」
上野「プールとか」
井岡「いいじゃん!」
上野「じゃあ水着も買おうよ。明日とかどう?」
井岡「オッケー」
二人の会話が盛り上がる中、神崎理央はぼんやりと呆けている。
井岡が神崎に話を振る。
井岡「理央はどう?」
神崎「……」
井岡「ねぇ、リオってば!」
神崎は頬杖をついたままで気付かない。
ぼーっとしながら紙ナプキンに六芒星を描いている。
そこで井岡が大声で名前を呼ぶ。
井岡「神崎リオっ!」
神崎「!!」
神崎、ハッと我に返る。
神崎「ごめん、何の話だっけ」
井岡「水着を買うって話。明日だけど行ける?」
神崎「うん、大丈夫。行けるよ」
神崎、笑って頷く。
以降は三人で仲良く話す。
ただし神崎だけが心の中で考え事をする。
神崎M「普通の会話だ。私は平凡な女子高生。ありふれた日常を過ごしている」
会話中、井岡が少し離れた席を見て顰め面になる。
上野もぎょっとする。
二人の様子に気付いた神崎が尋ねる。
神崎「どうしたの」
井岡「あのオッサン、何かヤバそうじゃない?」
井岡がこっそりと視線の先を指差す。
神崎は指の先を目で追ってぎょっとする。
薄汚れた衣服の男、落見が暴飲暴食をしている。
片手でハンバーガーを貪りつつ、ソースで汚れた手で本を読んでいる。
足元には薄汚いスポーツバッグを置いている。
その様子に神崎は嫌悪感を見せる。
神崎「うわ……」
その時、落見と神崎の目が合う。
落見は睨みつけるような目で凝視してくる。
神崎は慌てて視線を逸らす。
神崎「やばっ」
井岡「あんまり見ない方がいいよ。絡まれたら困るし」
上野「そうだねー」
井岡「気にしないようにしよっと」
上野「でさー、来週の予定だけど……」
上野が気を取り直して話題を変える。
一方、神崎のスマホに通知が来る。
神崎「あ、ちょっと待って」
神崎はスマホを確認する。
その途端、神崎の表情が曇る。
表情から察した井岡が尋ねる。
井岡「また実家の呼び出し?」
神崎「……うん。ごめん、帰らないと。明日の水着も買いに行けないと思う」
神崎は浮かない表情で席を立ち、さっさと店を出て行く。
井岡と上野は驚く。
井岡「え、理央!?」
上野「また急に帰っちゃうじゃーん!」
店を出た神崎、暗い顔でため息を吐く。
神崎「はぁ……」
神崎、鞄から護符を取り出して見つめる。
お札は陰陽師が使うようなデザイン。
神崎、ぎゅっと護符を握る。
神崎M「普通になりたい。それが私の願いだった」
●電車
電車移動する神崎。
退屈そうな顔で、手にはスマホと護符を持っている。
神崎M「私の名前は神崎理央」
神崎M「見習いの陰陽師だ」
神崎、スマホのメッセージを確認。
今回の指令に関する概要が記載されている(場所や被害や期限など)
神崎M「実家からのメッセージは指令だった。修行を兼ねた妖怪退治である」
神崎M「私はこれから烏天狗と対決する。すべては一流の陰陽師になるため……」
神崎「私は普通がいいんだけど」
神崎は不服そうに小声でぼやく。
神崎、電車を降りる。
降りたのは、田舎の無人駅だった。
神崎M「この辺りに烏天狗が出没するらしい」
神崎「田舎って感じね」
神崎、田んぼのそばを歩く。
途中で鞄を開き、中から特殊な方位磁針(片側の針の先端に青い炎が灯る)を取り出す。
神崎、方位磁針を手のひらに乗せる。
針がスッと回転して動き出す。
神崎「あの山ね」
神崎、炎の灯る針の向いた先に注目する。
そこには枯れた山がそびえ立っていた。
神崎、ごそごそと鞄を漁り、護符の束を取り出す。
神崎、近隣を散策する。
樹木や岩に護符を貼っていく。
神崎M「結界は陰陽師の基礎技術だ。これを徐々に狭めて逃げ場を封じる」
神崎「落ちこぼれなんかじゃない。私だってやれるんだから」
神崎、岩に護符を貼りながら決意を固める。
黙々と作業を進める神崎を、陰から監視する落見。
やがて落見、無言で立ち去る。
●枯れた山の廃神社
日没寸前、神崎は枯れ木に囲まれた廃神社を発見する。
神崎「ここが住処ね」
神崎、護符を縫い付けた折り畳み傘を取り出す。
枯れ木に護符を貼りながら鳥居を抜ける。
神崎、傘を掲げながら堂々と叫ぶ。
神崎「出てきなさいっ! 隠れても無駄だから!」
本殿から物音が鳴り、人影がもぞりと顔を出す。
現れたのは烏天狗だった。
烏天狗は翼で飛んで本殿の前に着地する。
神崎、護符と折り畳み傘を構える。
護符を頭上に投げると、護符が空中で散開して等間隔で静止する。
バチバチと音が鳴り、半透明の結界が境内を覆う。
神崎、自信に満ちた顔を浮かべる。
神崎M「結界は完成した。これで有利に戦える――」
烏天狗から光球(神通力)が放たれる。
神崎、胴体に神通力を食らって吹き飛ばされる。
神崎、地面を派手に転がる。
苦しそうにする神崎。
セーラー服の腹部が焦げている。
生地が破れて、腹に巻いた護符が覗く。
神崎「ど、どうして……結界が効いていないの……?」
烏天狗、翼で滞空している。
神崎、傘を支えに立ち上がる。
烏天狗、両手に光球を保持し、それを同時に投擲する。
神崎、傘を開いて防御する。
神崎「くっ」
傘に神通力が炸裂し、二つの穴が開く。
神崎、十数枚の護符を投げる。
神崎「舐めないで! 私は名家の陰陽師よっ!」
護符が飛行する烏天狗へと殺到する。
烏天狗、翼で突風を起こす。
護符が粉々になる。
神崎、絶望する。
烏天狗、飛び回りながら神通力を乱射する。
神通力が神崎の付近を無差別に爆破していく。
神崎、護符で必死にバリアを展開する。
神崎M「一つ分かったことがある。私と烏天狗の実力差だ」
神通力が簡単にバリアを貫通していく。
神通力が神崎のそばで爆発し、土煙が舞い上がって彼女の姿を隠す。
負傷した神崎、煙の中から飛び出す。
制服のあちこちが破れて、全身に巻いた護符が見え隠れする。
神崎M「絶対に勝てない!!」
神崎の肩に神通力が命中する。
神崎が苦しそうにする。
神崎M「陰陽師の力がまったく通じない。子供の頃からたくさん鍛練したのに!!」
神崎、吹き飛んで転がる。
目の前に烏天狗が着地する。
烏天狗、神崎の目の前で神通力を構える。
神崎M「あ、やばい。死ぬかも」
烏天狗、神崎に神通力を放とうとする。
その瞬間、燃える軽トラックが烏天狗に追突する。
トラックは烏天狗を巻き込みながら本殿に激突する。
さらにトラックの荷台に積まれたダイナマイトが爆発し、本殿が勢いよく燃え上がる。
尻餅をついた神崎、混乱する。
神崎「な、何が……」
横転した軽トラックの隙間から、下敷きになった烏天狗が這い出てくる。
背中と翼が焼け爛れている。
負傷した烏天狗に銃撃が叩き込まれる。
烏天狗の顔面が破裂して翼に穴が開きまくる。
膝をついた烏天狗、出血しながら激昂する。
潰れた顔面の肉が盛り上がって再生していく。
烏天狗、苛立って軽トラックを殴る。
弾が飛んできた方向を睨む。
落見、境内に踏み込む。
手にはトンプソン・サブマシンガンを構え、スポーツバッグを肩がけしている。
落見の登場に神崎は驚く。
神崎「あの時のおじさん!?」
落見と神崎が睨み合う。




