序章
『ルオファンがこの国のおーさまになるなら、リウリウはこの国いちばんのおどりこになるよ』
それは、幼き少年少女が交わした二人だけの約束。
大人が聞けば鼻で笑ってしまうような大それた目標は、まさに純粋無垢で、彼らが子どもであることを象徴していた。
しかし、彼らは本気であった。
二人が交わした戯言のような約束は、少年の野望を、少女の夢を、照らし続けていた。
十三年後、城下にはこのような声が飛び交うようになる。
「ルオファン殿下が皇帝としてご即位されることが決まったそうだ!」
「新たな戦女神は誰になるだろうか!」
「戦女神と言えば、円華楼のリューリウの公演は今日も満席だそうだぞ!」
「一度でいいから見てみたいよなぁ」
☆ ☆ ☆
はるか昔、大陸のほとんどは大国華陽に支配されていた。
平民は重い税収で貧困に喘ぎ、王侯貴族は平民から巻き上げた金で贅沢の限りを尽くして己の地位を誇示することが当然の世であった。
しかし、ある時一人の青年が立ち上がる。
彼は貴族の地位にありながら、己の立場に興味がなく、平民に寄り添い腐敗した治世を打ち倒すことを決意した。
仲間を集め、力をつける旅の途中で、彼は美しい女と出会う。
彼女もまた、彼と同じ志を持ち、彼の旅に加わった。
やがて二人は恋に落ち、将来の誓いは国政打倒へのより強固な絆となった。
そうして三年の月日が流れ、青年は確かな力をつけ、大陸各地に味方をつくった。
歴史を動かす戦が始まり、苦しい戦いながらも彼らは着実に勝利へと近づいていた。
しかし、ある時主戦力であった将軍の一人が討たれてしまう。
長きに渡る戦いの疲弊もあり、反乱軍は一気に追い込まれた。
軍を率いて前線に立っていた青年もまた、国家一の大将軍の奇襲に合い、絶体絶命の危機に陥った。
敗北を覚悟したその時、雲の切れ間から光が差した。
光の中から降り立ったのは、青年の恋人であり、反乱軍の参謀として活躍していた女。
彼女の真の姿は勝利を導く勝利の女神だったのだ!
正体を現した彼女は、反乱軍を鼓舞し、加護を与えた。
加護を授かった戦士たちはたちまち傷が癒え、戦意を取り戻した。
そこからは破竹の勢いで国家軍の懐まで攻め込み、見事青年は王を討ち取って勝利を手にした。
その後、青年と戦女神は婚姻を結び、新たな国を建てた。
すべての戦いを見ていた戦女神は、勝利へと繋がる働きをしたすべての戦士たち――生き抜いた者には本人に、戦死した者にはその家族に――報酬を与えた。
初代皇帝となった青年は、税制度を改革し、身分に関係なく評価されるよう国を治めたという。
これが、現在大陸一の武国である蒼黎国に長く伝わる建国伝説である。
見つけてくださりありがとうございます!
短編連載ですので序章、終章含めて全八話、どうぞお付き合いください!
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