18 春よ来い いち
マナさんとこの赤ちゃんの性別で迷ってます。マジで。
どこぞの樹海より深く暗い魔の森を抜けると見える、魔王さまのお城はキラキラ輝く白亜のお城でした。マジか。
ドロドロした暗さも怖さもないよ!? 恐怖のお化け屋敷レベルMAXとかじゃないの?
「あはは! マナちゃんゲーム脳だね!」
「魔王イコール恐怖という刷り込まれた常識
が日本人の性なんだよ、リトちゃん」
ほけー、とお城の外も中もオノボリサンでキョドってたら、魔王さまであるリトちゃんに笑われたよ。だって、お城には初めて来たからさぁ。いつもは別宅扱いのログハウスだったし。
「魔王さまにお目にかかれて光栄です。先日は母の出産祝いをありがとうございます」
「はいよー」
一応、お仕事で来てるのでご挨拶はしておく。ここ執務室だろうし、多分? そしてお仕事なので魔力で滑舌を補強。聞きやすさって大事。
「赤ちゃんどうよ?」
「かんっっっわいいよ!! うちの子マジ天使だね!」
どこぞの元王妃がやらかして、強制送還された日。
母は出産した。母子共に無事。父とほっと胸を撫で下ろした後、面会した赤ちゃんはほんとに天使だった。
ほにゃほにゃむにゃむにゃな、どこ触っても柔らかいし小さいし壊しそうだしと、ほえー、と見てるしかなかったよ。
ちっちゃな手をつんつんしてたらぎゅっとにぎられて、なんか懐かしい記憶もぼんやり思い出すけど、それはそれこれはこれ今は今。
「名前は決まったの?」
「うん。今度お披露目やるから、よかったらチビリトで来てー」
「うん。行くー」
招待状を渡したら、ここからはお仕事。
「田舎に嫁来い大作戦?」
「うちの騎士やら傭兵達から、前々から陳情されまくりの案件でね。まー、ガタイよくて顔が怖いもんだから、嫁の来てがないんだわ」
「あー」
「ほら、いくら他領と合併したって言っても、器量良しな娘さんが気性の荒いヤロー共なんて相手にもしてくんなかろー、とか泣かれちゃってねー」
「ヤローが泣くなよ」
「それな」
しかし、奴らにとっては切実な問題である。
「魔王領の花街に通い詰めて有り金全部スったくらいじゃへこたれないんだと」
「どんだけ通ったのさ」
「さあ?」
まあ、そんなわけで財布の紐を固く締めてくれる嫁が必要らしい。
「なので、他所の田舎の売られる(予定の)娘さんとお見合い大作戦なんてどうかなー、と」
「問答無用で嫁にとかじゃないよね?」
「もちのろん。見合いしてお試しして、ダメならクーリングオフ及び辺境でのお仕事斡旋、並びに同意があるなら家族も引き取るよ! までがセットです」
「おっ得ー」
「山奥とか田舎だと食うのにも困るらしいし、一家で移住も有りだと思うんだよねー」
なんなら村ごとでも引き受けることも可。
「なので、嫁来いキャンペーンの募集として、ローラー作戦を実行する許可を頂きたく」
「いいよん」
「早っ」
「楽しそうだし、売られるお嬢さんは少ないに越したことないし、田舎は住民票とかないしね」
これが成功したら、年一行事に移行予定だ。
さーて、やりますか!
魔王さまはタメ口で気軽に話せるマナさんがお気に入りです。




