65話 その後…2 END
「あら、またシャルロットから手紙が届いたわ」
神殿で押された日付を見ると。
王国の最北端にあるラバジュー神殿から、モンパトワル子爵邸に手紙が届くまで五ヵ月もかかっている。
“早く私を迎えに来て下さい” ……と懇願する内容だった。
「あなたのことはお母様に任せてあるの。我慢してシャルロット」
お母様はシャルロットのことを思えばこそ、一生ラバジュー神殿に迎えには行かないだろう。
溺愛していた娘を救えないのは、お母様にとって何よりも重い罰になるはずだ。
“ごめんなさい、お姉様。心から反省し謝罪します。どうか許して下さい”
……とも書いてあるが、シャルロット自身がまいた種だから私にはどうすることもできない。
私は娘を抱っこしながら。
執務室で仕事をするユベールに、シャルロットの手紙を見せようと持って行った。
「貴族の誇りと名前をすてて、平民にでもならないかぎり。シャルロット嬢が静かに暮らせる場所はないだろうね」
ユベールは手紙を読んでも何の感情もわかないのか、淡々と言った。
「ええ」
悪名が広まり過ぎて。
今では使用人までシャルロットがウソをつき、私を落とし入れたことや。
男色家のパスカル卿と求婚騒ぎをおこして、婚約式で逃げられたことが知れ渡っている。
でも…… そんな俗世から切り離されたラバジュー神殿には、シャルロットの悪名は届いていない。
シャルロットにとってラバジュー神殿は牢獄のように思えても。
私たちから見れば、シャルロットを冷酷な軽蔑や悪意から守る頑丈な砦なのだ。
私の腕のなかでパタパタと元気に手足を動かす娘を、ユベールに渡して。
フワフワと柔らかい娘の焦げ茶色の髪を、指先で触れてほほ笑んだ。
娘はユベール譲りのアメジスト色の瞳で、私を見あげてニコニコと笑う。
「今日もモニークはご機嫌だね?」
そういうユベールもニコニコと笑い。長い腕の中で守るように抱いて、娘の頬にキスをする。
「ねぇ、ユベール。薔薇の花がみごろなの。庭で午後のお茶にしましょうよ」
「良いね。ちょうど小腹が空いていたんだ」
執務机から立つとユベールは片手で娘を抱き、もう片方の手を私の腰にまわす。
私たちは薔薇の香りがただよう、穏やかな午後をすごした。
― E N D ―
ここまで読んで下さりありがとうございます!
また、どこかでお会い出来れば幸いです(^^)/




