3話 伯爵家の次女に産まれて
私は産まれた順番が2番目だったというだけで。
ロンスヴォー伯爵家に代々伝わる宝石や美術品、領地、家屋敷を受け継ぐことができない。
そのうえ大切な宝物はすべて、デルフィーヌお姉様が継ぐのに。
私は大人になったら他所の貴族に嫁がなければいけないと、両親に言い聞かされて育った。
デルフィーヌお姉様がセルジュお兄様と婚約が決まった時に、私の不満は爆発した。
「どうしてセルジュお兄様とデルフィーヌお姉様が結婚するの⁉ 私の方がセルジュお兄様とお似合いなのに」
(セルジュお兄様が好きというわけではないけれど。でも、お姉様と結婚するのが気に入らないわ!)
「いいか、シャルロット。デルフィーヌがロンスヴォー伯爵家の財産を継ぐけど。爵位は男性しか継げないから、必ずセルジュ君を婿養子にとらなければいけないんだ」
※王国法で女性は爵位を継げないと決められている。
セルジュお兄様の家。トレザン侯爵家と私の家ロンスヴォー伯爵家は、一緒に事業を経営しているから。
2つの家がもっと仲良くなれるように、お互いの子供が結婚しなければいけないらしい。
「こんなの不公平だわ! 私のほうがお姉様よりも美人で、お父様とお母様に愛されているのに!」
(お父様なら私の言葉を否定しないわ。だからお父様も私と気持ちは同じはずよ)
「そのかわりお前の姉は、ロンスヴォー伯爵家の宝物を守れるように。たくさん勉強をさせて厳しく育ったのを知っているだろう?」
お父様は説得しようと私の肩に手をおき、ジッと視線を合わせた。
「お姉様ばかりずるいわ」
「シャルロット…… お前は昔から身体が弱い。後継者の勉強は厳しくて辛いものなんだ。だからお前には無理だよ」
「今は元気だわ!」
「シャルロットは勉強が嫌いだろう?」
「そ、そんなことないわ。私だってお姉さまのように、頑張ってみせる」
「だけどシャルロットは、私たちにもっと甘えたいだろう?」
お父様はお姉様と話す時とはちがい、私を小さな子供のようにあつかう。私はそれも気に入らない。
「私は伯爵家が欲しいの! お父様、私が伯爵家を継げるようにお姉様にそう言って!」
それまで黙ってお父様と私の話を聞いていたお母様が口をはさんだ。
「まぁ…… シャルロット。困った子ね?」
「お母様ぁぁ~! お願い、お母様もお姉様に言って!」
「学園に入学する前からあなたの姉のデルフィーヌは、外国語や算術、礼儀作法。それに貴族名鑑を毎日読んで、王国で暮らす貴族の名前や歴史を全部暗記しているのよ? シャルロットにそれができるの?」
「で、できるわ! お姉様ができたなら、私だってできるわ!」
「仕方ないなぁ…… それならシャルロットが貴族名鑑にのっている貴族の名前と歴史を、全部おぼえられたら考えてみよう」
「本当に⁉ 約束よ、お父様!」
王族の名前をおぼえただけで、貴族名鑑の暗記を挫折したとき。私はもっと簡単な方法を思いついた。
「貴族の歴史や名前なんて覚えなくても…… 要するに私がお姉様のかわりにセルジュお兄様と結婚すれば良いだけでしょう? だったら……」
お姉様から婚約者を奪えば良い。




