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第1紙 商売道具はペンとインクとメモ帳です

 「ほれ、今日からこれがお前の商売道具だ」


 おやっさんはそう言って、棚からペンとインク壺とメモ帳を取り出し、僕の前に置いた。

 ペンはどうやらお古らしく長年使いこまれた跡がある。インク壺には紐がついており、おそらく腰から提げるのだろう。メモ帳の表紙には、葉っぱのマークが印刷されていた。


 「働かざる者食うべからず、今日からお前はうちの新人ライターだ。がんばれよ」


 がはは、と大きな口を開けて大きな巨体のおやっさんが笑う。目の前の人が笑っていると、まったく笑えない状況でもなんとか頑張って笑顔を作らなければならないような危機感を覚えるのが人の性

。僕も口角を上にあげてなんとか笑顔を作ろうと頑張ってみるが、表情筋がこわばってうまく笑えない。

 下手な苦笑いを隠すように、おそるおそるメモ帳を手に取りページをめくってみる。真っ白な紙が数十ページ続き、一番最後の裏表紙の内側に名前と年齢、住所を書く欄があった。


 「ここにお前の名前を書いておけ。取材先で何かあったとき、これがお前の身分証明書と緊急連絡先になる。これが、うちの住所だ」

 

 おやっさんがポケットからメモ帳を取り出し、裏表紙を広げる。


 いやいや、何かあったときって取材先で何があるんですか。僕、殺されるんですか。そんなにやばい取材先行かされる予定なんですか。ふつーにあれですよね、本当に「もしも万が一」の時のための緊急連絡先ですよね。…なんて、ついさっきあったばかりの人に言えるわけもなく、目の前のおやっさんに対する微かな不安感とともにペンをインクをつけた。


 氏名:ハルタ

 年齢:15

 住所:クサハラ地方ハナツキ都市5街区6-24-3 出版社コトノハ


 住所を書きながら、僕は思った。ここは一体、どこなんだろう。

 僕はいったい、誰なんだろう。


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