近海の異変1
エルザの案内で3人は海洋連合に到着していた。
辺りを見渡しても行きかう人はほとんどなく閑散としている。
「なんだか街の中と同じく活気がないですね。」
「船が出せないから魚もろくに取れないだろうしな。とりあえず中に入って聞き込みしてみようぜ。」
「そうね。」
3人が中に入ると言い争いが聞こえてきた。
「魚1匹で銀貨7枚だと!?ふざけるな!」
「殆んど海に出られないんだ!こっちだって生活するために必死なんだ!」
漁師と商人がもめているようだ。
商人には見覚えがある。
「あれって……。」
3人は言い争いをしている二人の元へ行ってみた。
「やっぱベクターさんだ!なんでそんなに熱くなってるんだよ。」
商人の男は初めてアジーウッドの森で皆と出会ったときに馬車で荷物を運んでいたべクターだった。
「なんだ、お前たちか……。この男が値段を吹っ掛けてきてな……。」
「魚が取れないんだ。別にぼったくろうと思ってこんな値段にしているわけじゃない。あんたらも知ってるだろう?近海に変な奴が出るせいで船が出せねぇんだよ。」
「ギルドで聞いた異変ってやつが原因か。」
「べクターさん良かったら私たちに詳しい話を聞かせてくれませんか?」
「あんたは?……。ああ、エルフの里で会ったお嬢さんか。あのときは商談を破棄してくれてどうも!!この先にコーエン商会の倉庫がある。話が聞きたければついてきなさい。」
シアはなんのことだかわからなかった。
べスターの案内でみなコーエン商会に案内された。
中に入るとほとんど在庫はなく空いた棚が目立っていた。
「ここって商会の倉庫なんだよな?ほとんど空じゃねぇか。」
「はぁ……。最近物価が上がる一方でね。在庫を抱えたままでも居られないし、船の行き来が無くなってからは外から入ってくるものもないからな。商売あがったりなんだよ。この奥だ。」
ベクターが扉を開けるとその部屋は小さな応接室になっていた。
「好きな席にどうぞ。お茶を入れてくるよ。」
ベクターは給仕室に入っていった。
「なぁ。そういえばベクターさんって家名コーエンって言ってたよな?」
「んー。そうだっけ?」
「私も確かに聞いた覚えがあります。」
「ってことは領主コーエンの親族なんじゃねぇか?領主の話も聞けるんじゃねぇの?」
「もしそっちの情報も聞けるなら一石二鳥だね!」
ベクターがお茶を入れて戻ってきた。
「どうぞ。海の異変のお話でしたね。ここ最近領主さまの増税で物価も上がる一方。近海の異変で漁業もろくにできていないというところまでは皆さんご存じですね。」
3人は頷いた。
「先ほど私と言い争っていた男は領主の屋敷に魚を卸している者なんです。どうやってか、彼だけは漁業を続けられているようで、魚の市場にああやってたまにもってきている。ですが港の者は彼が船を出しているところを見たことがないそうで……。」
「漁業を続けているが船を出していないって妙な話だな。」
「えぇ。私はコーエン商会の食品と薬などを主に担当していますので、魚を買い付けに行っていますが、どんどん値を吊り上げていくので取引も出来ません。」
「その海の異変って具体的にはどういったものなんですか?」
「そこの窓から海の方を見てみてください。少し先の海上から見える範囲すべてに霧がかかっているだろう。あの霧の先に行こうとするとどうやっても船はなぜか港へと戻ってきてしまうそうです。何らかの魔法か魔物の仕業のようだが直接の被害も出ていなくて原因もわからないんだよ。」
「被害は出てないってのは?」
「船が霧を抜けようとすると戻されるが、船に外傷もなく、乗組員に負傷者が出たという話もないのです。ギルドから何度か冒険者の方も来ていましたが結局原因をつかむことはできませんでした。」
「うーん。話を聞く限り俺らじゃどうしようもないんじゃね?」
「そうね……。」
「お二人とも諦めないでください!困っている人を助けるのが冒険者じゃないんですか?」
「そのとおりじゃ。」
後ろから声がした。




