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2.「名もなき少年と機械仕掛けの少女」


『対象の戦闘能力を再評価』

『排除優先度を変更』


次の瞬間、複数の機械兵が一斉に武器を構えた。


エリス「ロスト、危ない!」


エリスの叫びと同時に、無数の光弾が放たれる。


ロストは身をかわそうとした。

しかし、負傷した体は思うように動かない。


迫り来る攻撃を前に、ロストは動けなかった。


その瞬間、エリスが彼の前へ飛び込んだ。


ロスト「エリス――!」


青白い光が、二人を包み込む。

直後、激しい爆発が遺跡を揺るがした

爆発が遺跡を揺らす。

舞い上がる砂煙の中、エリスは膝をついていた。

その身体には、見たこともない光が走っていた。

青白い光。

まるで、彼女の内側に眠っていた何かが目を覚ましたかのように。


エリス「……何、これ?」


エリス自身にも分からなかった。

頭の奥で、知らない声が響く。



『未確認反応を検出』

『対象の識別に失敗』

『制御系統、接続不能』

『制限を一部解除します』


その声に反応するように、光が強くなった。

次の瞬間、遺跡全体を青白い閃光が包み込む。

迫っていた機械兵たちの動きが止まった。

そして、まるで見えない力に押し潰されるように、次々と地面へ沈んでいった。

轟音が消え、遺跡に静寂が戻る。

エリスは自分の手を見つめた。

何が起きたのか、理解できない。

自分は何者なのか。

なぜ、こんな力を持っているのか。

答えは、どこにもなかった。

ロストは彼女のそばへ歩み寄る。


ロスト「……エリス。大丈夫か?」

エリス「ええ。でも……今のは、私にも分からない」


彼女は不安そうに顔を上げた。


エリス「私、自分のことを何も知らないの。どこで生まれたのかも、何のために存在しているのかも」


ロストは黙って彼女を見つめた。

記憶を失った少年と、自分の正体を知らない少女。

二人は、同じように何かを失っていた。

そして、二人とも、その理由を知らなかった。

遺跡を出ると、遠くまで荒廃した大地が広がっていた。

かつて栄えていたであろう街は崩れ、巨大な構造物が空へ向かって突き出している。

その光景を見つめながら、ロストは尋ねた。


ロスト「エリス。俺が何者なのか、分かる場所はあると思うか?」

エリス「分からない。でも、旧文明の遺跡なら、何か手がかりが残っているかもしれない」


エリスは少し考えたあと、続けた。


エリス「それに、私も知りたいの。私が何者なのかを」


ロストは空を見上げた。

自分の名前すら、本当のものかどうか分からない。

それでも、何も知らないまま立ち止まるわけにはいかなかった。


ロスト「……じゃあ、一緒に探そう」


エリスは目を丸くしたあと、微笑んだ。


エリス「うん。一緒に」


こうして、記憶を失った少年と、自らの正体を知らない機械仕掛けの少女の旅が始まった。

二人はまだ知らない。

この世界には、歴史から存在を消されたものがあることを。

そして、自分たちの出会いさえ、偶然ではないのかもしれないということを。


同じ頃。

人の気配がない、地下深くの施設。

長い間停止していたはずの端末に、ひとつの光が灯った。

画面には、無数のデータが流れている。

その中に、新たな記録が表示された。


『対象生存を確認』

『識別情報――欠落』

『未知の反応――検出』


続いて、警告文が赤く点滅する。


『封印計画に異常が発生』

『第七遺物の覚醒率が上昇』


暗闇の奥で、誰かが画面を見つめていた。

その人物の顔は、影に隠れて見えない。


「……ようやく、始まったか」


低い声が、静かな施設に響く。

別の画面が起動する。

そこに映し出されたのは、一人の少年だった。

赤い瞳。

ロストによく似た顔。

しかし、その表情はまったく違っていた。

まるで、すべてを知っているかのように。

画面の隅には、識別不能の文字列が表示されていた。


『SUBJECT:――――』


記録は、そこで途切れていた。




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