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異世界の歩き方  作者: ❀雪月風花❀


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001 結婚

「お姉ちゃん!!!」


 泣きながら手を伸ばす少年の涙を止めてあげたくて笑いかけたけれど、もっと悲しそうな顔にさせてしまった。

 手に力が無くなり、岩から手を離した私はどんどん流されていく。


 全身が水の中に沈んでいったが不思議と苦しさや怖さはなく、目を開けると太陽の光で水面がキラキラと光っていて、祖母の家の近くでよく見た、太陽の光でキラキラ光る棚田を思い出し、もう一度、あの景色を見たかったな、と思いながら目を閉じた。



 父はプロフィギュアスケーターで母はプロダンサー、小さい頃からスケートを習いオリンピックに出る夢を叶える為、学校以外の時間はスケートばかりの毎日だったけれど5年生の頃リンパ腫になり運動どころか学校へも行けなくなり入院生活になってしまった。


 毎日のように泣いていた私に父と母は時間を見つけては頻繁にお見舞いに来てくれ、本をたくさん持ち込んで一緒に読んでくれて、私を元気づけようとしてくれたおかげで少しずつ病気に向き合えるようになっていった。


 スケートの世界しかなかった私に、本は沢山の事を教えてくれた。美味しそうなご飯、お菓子は自分でもいつか作ってみたい。美しい景色をいつか見に行ってみたい。冒険者や魔法使い、お姫様が出てくる物語はワクワクドキドキさせてくれる。



 母「美月は本当にその本が好きね。何度も読んで。フフフ」


「だって本当に素敵なんだもの」


 父「み、美月はそういう王子様が好きなのか?」


「王子様?私が素敵だと言ってるのはこのお城よ」


 絵本ではなく大人向けに販売されたプリンセス達の長編の小説には綺麗な挿絵が所々描かれていて、その中でも一番好きな本の挿絵を見せる。


 父「な、なんだ、城が好きなのか。よかった」


 母「ふふふ。あなたってば、いつかは美月だけの素敵な王子様が現れるのよ」


 父「現れるかはまだわからないだろう?いつまでも俺達のお姫様でいてほしいよ⋯⋯」


 母はクォーターで生まれはスペイン。情熱的で美人な母に猛アタックされ結婚したらしい父だけれど、今では父の方が愛情表現は強く、私にも溢れるほどの愛情を注いでくれる。


 母「うふふ。親バカね。美月、外国にはお城が沢山あるわよ。いつかその絵に似ているお城を探しに旅行へ行きましょう」


「うん!頑張って病気を治す!」


 勉強の合間には外国のお城、その土地の代表的な料理や花、世界中の素敵な景色などの本や写真集を沢山読んで、いつか訪れたい場所をノートにまとめたり両親と沢山話をして辛い治療にも耐えた。


 完治とはいかないけれど、3年ほどで危険な期間は過ぎたらしく退院出来ることになり空気が綺麗な所がいいだろうと父方の祖母の住む田舎で生活をする事になった。


 両親の拠点は都心だけれど毎週のように会いに来てくれるし、祖母は料理上手で沢山の料理を教えてもらい、毎日は無理だけれど学校へ行ける日も増えていき、沢山本を読んで料理をして幸せな日々を過ごしていた中、祖母が倒れ亡くなった。


 両親が帰省中の出来事で家族で祖母を看取れた事がせめてもの救いだったけれど高校受験は志望校を変える事になり両親とまた一緒に住む為の引っ越しなどで忙しい日々が祖母を亡くした悲しみを少し忘れさせてくれた。


 環境が変わったからか体調を崩し入退院を繰り返し、女子高から女子大へ進みなんとか卒業はでき、1年ほど家でゆっくり過ごし体調が落ち着くと調理師専門学校へ行き経営や食物学、食材の製造工程など料理に関する事を幅広く学べるコースを選択し充実した毎日を過ごせ、専門学校の卒業まであと1年、という頃には体調もすごく良く私の希望の元になった本の出版関係の仕事、料理教室関係やカフェの仕事、とやりたい事や将来への夢や選択肢が沢山できてきた幸せの中、両親が事故で亡くなった。


 まただ⋯⋯スケートを病気で断念、病気が落ち着き祖母へ恩返しをしていきたいと思っていた矢先に亡くなり、私に沢山の夢が出来て両親をやっと安心させられ、これから家族と旅行をしたり沢山の思い出を作ろうとしていた時に事故。

束の間の幸せのすぐ後には辛いことばかり。


 親族は既にみな亡くなっていたのと両親共に一人っ子なので誰もいなくなってしまった。


 専門学校を卒業し料理教室で働きだして1年過ぎ、後輩も入ってきて充実した日々を過ごせていた頃、男性の受講者に告白された。


 何度かそういう事があり、いつも通り丁寧に断ったけれど、その男性には付きまといをされ、ストーカー被害に遭うことになって、職場に迷惑電話や他の受講者さんへの話しかけ、夜中に窓ガラスが割られていた、などで警察沙汰になり職場にも迷惑をかけてしまったので教室での仕事を辞める事にした。


 その男性は過去にもストーカー行為、多額の詐欺や横領もしていたことが発覚して捕まった。


 相談に乗ってくれていた上司に、良ければ紹介したい伝手があると言われ、詳しく聞いてみると、料理教室のパンフレットやウェブ広告に私が講師として写っているのを見た知り合いの雑誌関係者から料理関係の本に出てもらえないか、と問い合わせが最近あったようだ。


 不特定多数の生徒と関わるだろう教室関係でまた仕事をするのは怖く、料理関係の仕事は泣く泣く諦めていたので嬉しい話だった。


 初めての仕事はお花見弁当をテーマにした雑誌の仕事。


 好評だったようで季節ものをテーマにした連載が決まり、珍しい素材が採れる土地や酒蔵、調味料工場などを見学した特集など、幅広い内容の本も作れたりして楽しい日々を過ごしていた。



 充実した生活を送っていた時、雑誌の企画で知り合った輸入食品会社の代表をしている男性に食事に誘われ断った時、2人きりではなく他の人も一緒にならどうですか?と再度提案された。


 それなら⋯⋯と数人で食事に行くと楽しい時間を過ごせ、仕事でいろいろな国へ行った時の話はとても興味深く勉強にもなり、数回の食事会の後は2人だけでも食事へ行くようになった。


 2人だけの食事会3回目に結婚を前提に付き合ってほしいと告白され、お付き合いをしだして3か月後にプロポーズをされ入籍をした。


 夫のマンションに引っ越しをしたり、半年後に行う挙式の為の準備をしつつ、合間に仕事をしたりと忙しい日々を過ごしていた時、体調を崩してしまった。


 小さな頃から病気がちだった事を知ってはいても、出会った以降の健康な状態しか見たことの無かった夫は凄く戸惑った様子だった。


挿絵(By みてみん)

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