スクワッド戦
翌日。決勝トーナメント初日。昨晩の心を凍らせるような出来事とは一転して、ぽかぽかと陽気な太陽照りしきる快晴の空模様の中、それは始まった。
「今年から決勝トーナメントは5対5の同時バトル。いわゆる、スクワッド戦で開催します!昨年までの勝ち抜き戦、つまり1対1では個の力がすべてでした。圧倒的に強い一人がいれば優勝できる…。それでは面白くないですよね?…ということで!新しくなったルールで最初に戦うのは…。予選で合体ロボを召喚し圧倒的なチーム力を魅せたラベーヌ高等魔術学校。対するは、昨年度準優勝校のランナップ研究所付属魔術高等校。迸る魔力を散りばめ合い、最後に立っているのは両者どちらか。決勝戦第一試合、レッツダイマーっ!」
「しんぱん」のコールで試合が開始する。早速相手のチームはフォーメーションを展開し、詠唱を始める。
「今年は勝ち抜き戦じゃないんですねっ。じゃ、次鋒天宝治先輩は幻ってことですねっ。」
「…そられも見たかった。残念。」
「どこに期待していますの。それより、あなたたち。もう試合は始まってますのよ?」
「でも、今日は私たち何もしなくていいんでしょ?ねっ?フーリ先輩っ!」
リノンの質問に、背中で答える。…そう。それが昨日、私がリスティに頼んだことだった。…この試合は、私だけで戦う。そして、勝つ。私は強くならなきゃいけないんだ。
いくつかの魔法が飛んでくる。仲間に向かうそれも含め、すべて氷の盾を展開して防ぐ。そして、いつもの通り氷の剣を生成し、斬りかかる―…。
一人、二人と敵が倒れていく。氷のレールを生成し、コロッセオを縦横無尽に高速移動する。時に氷の鏡を生成し、敵の魔法を跳ね返したり、私の位置を誤認させたりしながら、少しずつ消耗させていく。その姿を誰かがこう比喩した。まるで、フィギュアスケートのアイスショーのようだと。…いや、違う。これは戦いだ。そんな綺麗なものではない。私は敵を傷つけるために戦っているんだ。
三人目。倒すと同時に敵の反撃を防ぎきれず被弾する。…こんなもの痛くもなんともない。昨日、リノンが受けた傷に比べたらかすり傷だ。…それに、前に誰かに空けられた腹の大穴より痛いものに早々出会うこともない。四人目。私を見失った隙に背後から斬りつける。卑怯だとは思わない。これも戦いなのだから。
「…なんなんだ!お前っ!」
最後に残った敵の大将が大規模魔法の詠唱に入った。一発逆転を狙うつもりか。…だったら、こっちにも考えはある。一定距離を取って、正面に相対するように立ち止まる。
「…思考停止ビーム。」
水の波状攻撃を放ち、着弾寸前で凍結させる。敵は水を被ったと同時に凍結し、人型の氷塊が完成する。凍ったことすら気付いていないだろう。…大丈夫、殺してはいない。
「あーっと!ランナップ全員戦闘不能!たった一人に、圧倒的な個の力に成すすべなくやられてしまいました!スクワッド戦の意味とはなんだったのかーっ!ラベーヌ高等、勝利ですっ!」
観客席が湧き上がる。…予選敗退した選手たちだ。あんなに酷い倒し方をしてしまったのに、見に来てくれている。
「やりましたねっ!流石です!フーリ先輩っ!」
振り返ると、リノンをはじめみんながサムズアップを掲げている。
…ねえ、みんな。私、ちょっとは強くなれたかな。みんなのこと、守れるかな。




