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マーサの告白

マーサが冷めた紅茶を一気に飲み干し、意を決して語り始める。

「まず、私の父親について話しておくね……」


「……え?マーサは神殿の拾い子だから、両親のことは何も知らないんじゃ……?」

アゼルが怪訝な顔をして問いかける。


「ごめんね……アゼル。私はあなたに隠し事ばかりしてきた。……今さらだけど、ちゃんと話すから聞いてくれる?」


「うん……」


「私の父親は、あなたもよく知る魔塔主セレディオ・アークインよ」


「……!魔塔主が!?」


アゼルがはっと息を呑む。マーサは静かに頷いて話を続ける。


「アークイン家は、代々、魔塔主を生み出す強大な魔術師の家系……。だけど、私には魔力が全くなかった……」


ーー


初めて魔力検査をした5歳のころから、私は、親族に疎まれるようになった。


祖父、祖母、伯父、伯母、従兄弟……全員魔塔の魔術師だったから、若くして魔塔のトップに立ったセレディオの娘に魔力がないなんて、信じられなかったのだろう。


"母親の不貞で生まれた子に違いない"と噂されていたのを知っている。


親族の集まりでは、わざと、魔力がなければ通れない結界を張って部屋に入れてもらえなかったこともある。


母は、いつも"気にすることない"って笑ってた。

父は、一緒にいても多くを語る人ではなかったけれど、わたしが落ち込んだ時は、転移魔法で色々な景色を見せてくれた。

別に嫌いじゃなかった……あの時までは。


12歳の時、母が倒れた。

2人きりで心細かったのに、父は家に戻らなかった。

"母危篤。転移魔法で今すぐ戻って来て"って何度も出張先に手紙を送ったけれど……。


母方の父母は既に亡くなっていたし、頼れる知人もいなかった。

魔塔にいる親族に助けを求めても、誰も助けてくれなかった。

治療師は薬をくれたけれど、良くなることはなかった。


1ヶ月たち、2ヶ月たち、父が戻った時には既に母は亡くなっていた。


父は、言い訳一つしなかった。

私は、心を閉ざしてしまった。


それから2年後ーー14歳の時。反発心から、魔塔と敵対する神殿の巫女になった。

父は、"それだけは、やめろ"と何度も止めたけれど。

"二度と戻るつもりはない"って言い切って……



「それから……」

マーサの声が震える。

「巫女として神殿に暮らし始めて間もない頃、私は……あの男に……」


ーー


最初、"新しい巫女に挨拶したい"と訪れた紳士に、私は少しの警戒心も持たなかった。


だけど……部屋に入った瞬間、あの男は豹変した。ベッドに押し倒されたあの時は……恐怖しか感じなかった。

心が押しつぶされるような感覚……あれは、おそらく精神魔法だった。


あの男は口笛を吹き鳴らしながら、身動きの取れない私の着衣を破った。

"今回の人生は、誰にも邪魔させない"

そう言いながら、笑ってた。


それからのことは、よく覚えていない。


我に返ったのは、崖に身を投げようとしたところを聖女アリア様に救われた時だった。

アリア様は、私を抱きしめて言った。

"何も言わなくても大丈夫よ。あなたの様子がおかしかったから、未来視をしたの。辛かったね……だけど、死んではだめ。あなたは生きていれば必ず幸せになれるから。お腹の子供は、神殿の拾い子として一緒に育てていきましょう"


聖女アリア様と神官シオン様は、私を守るために……聖女の仕事を手伝ってもらうことになったと神殿に告げて、一緒に住んでくれた。

新婚の2人の邪魔をするのは気が引けたけれど、不安な私に寄り添ってくれる2人の側は……すごく居心地が良かった。


アゼルが無事に生まれた時、2人は予想以上に喜んでくれた……。

約束通り、神殿の拾い子として一緒に育ててくれて、それは2人の娘のミレイアが生まれた後も変わらなかった。


「……その辺りは、前にアゼルにも話したよね。あの2人がいなくなった時のことも……。アリア様は、"私たちはもうすぐいなくなるけど、あなたにはアゼルがいるから大丈夫。いつかまた会おうね"って、前日に言っていたの。まさか……死んでしまうなんて……」


「マーサは、その死にも、僕の父親が関わっているかもしれないって、前に言ってたよね。一体なぜ?」


「シオン様が言っていたの。神官たちや、王宮住まいの信者たちが既に精神魔法の影響を受けていると。あの男は、すべてを手に入れるために、手段を選ばない男だと……」


「僕の父親の正体は、やはりーー」


はっきりと名前を口にしたアゼルに、マーサは、ためらいながら頷く。

ミレイアは、顔を強張らせて俯いた。


「アリア様たちがいなくなった後、私とアゼルを支えてくれたのは、セラフィス神官長だった……」


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