エピローグ
エピローグ
その後、ルペルト伯爵は領地を没収された上で、裁判にかけられることになった。
「これで落ち着けるわね」
フィリアはいつかの温室に来ていた。
『そうだな』
今日は前回と同じく晴天で、円形の天井にはまた満天の星空が広がっていた。
「きれい……」
『そうだな』
「…………」
フィリアはじっとりと目で向かいに座る夫を見た。
「それ、もういらないんじゃない?」
板を掲げるクロドに苦笑する。
「もう癖だな」
温室に少し低くも、よく通る声が響いた。
クロドは笑う。
「フィリアだって、目は版を向いているよ」
「そうかしら」
この声でフィリアと呼ばれるのが好きだと思った。
自然と互いに顔を見合わせて笑い合う。
クロドの呪いの解き方は、その後アルマデスによって明かされた。
ルペルト伯爵の吐いた解除法とは、古典的によく使われているものだった。
「月の光を浴びるといいらしいよ」
「月の光?」
フィリアは半信半疑に聞き返した。
「ええ」
訝しげな顔をしているフィリアに、アルマデスはあくまで笑顔を向ける。
「古来より、月の光には不思議な力があると言われているでしょう?」
「ですが、それならクロドは浴びたことがあるはずです」
そう、単に月の光を浴びればいいのなら、とっくに昔に解けていたはずだ。
フィリアは疑いの目を向けた。
「浴び続けなければならなかったんだ。少量では意味がない。それこそ、毎日浴びるといった感覚でなければ解けない。そんな間隔で浴びたことはないだろう?」
アルマデスはクロドに確認するように問いかけた。
『ええ』
さすがにそんな間隔で月の光を浴びたことはない。呪いを受けてからは部屋に引き込もることがほとんどであった上に、この城は構造的に窓が少ない。
せいぜい温室にいるときくらいだろう。
「だからだよ」
「でしたら……」
フィリアは期待の籠ったまなざしを向ける。
「ああ。ひと月ほど、毎夜温室で月の光を浴びていれば、おのずと呪いは解けるだろう」
アルマデスの言った通り、クロドの呪いは約ひと月で解けた。
三年も悩んだ呪いが、解き方さえわかってしまえば案外脆いものだ。
クロドの腕が伸びてフィリアの頬を撫でた。
「くすぐったいわ」
フィリアは笑って同じく手を伸ばした。
「……私よりすべすべしてる」
「そうか?」
触れた肌は滑らかで、フィリアは少し嫉妬した。
「なんか敗北感を感じるわね」
むくれるフィリア。
「俺は、フィリアの方が好きだ。うまそうだし」
クロドの言葉にフィリアは耳まで真っ赤になった。
「そういえば」
ふとクロドがにやりと笑った。
「な、なに?」
身構えるフィリア。
「俺たち、誓いのキスって、してないよな」
「っ!!」
フィリアは爆弾発言に飛び上がった。
逃げようとするが、伸びてきた手にがっちりと頬を抑えられ阻止される。
「駄目、か?」
その聞き方はずるいと思った。
クロドに求められて、フィリアが彼を拒むことなど出来るはずないのだ。
「ありがとう」
恥ずかしさのあまり目をつむったフィリアには、近づいてくるクロドの顔は見えなかった。
しかし、唇の感触は確かに感じた。
「これからもよろしく奥さん」
開いた目の先には、自分の旦那様の顔が確かにあった。
END
初めまして、作者の夏樹と申します。
この小説は、私が初めて新人賞への投稿を意識して書いた作品です。
まだまだ拙い作品ではありますが、どなたかに読んで頂けたらと思い投稿いたしました。ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。




