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下忍が異世界で初めて会った神

 権蔵は神殿の床に跪きながら、恐怖の余り体が冷えていくのが分かった。


(一つ目入道なんざ講談の中だけだと思っていたんだがな…しかし、でけえ。よくあの体に合う服があったな)

 キュクロプスは二丈ちかい背丈を持ち、腕や足は丸太の様に太く、分厚い皮の服を着ていた。


(もしもの時、逃げるにはどうしたら良い。姉さんとクオレを両脇に抱えて彼奴から逃げるにはどうするのが一番だ?)


 キュクロプスから攻撃の意志は感じられないも、権蔵に染み着いた忍としての思考が最悪の事態に備えて遁術の選択を始めている。

 しかし、権蔵は不敵さの欠片も浮かべずに、キュクロプスにひたすら畏まって見せていた。


「そう畏まらなくても宜しいですよ。私はキュクロプスのステロペース。今から主ヘパイストスの元にご案内させていただきます」

 ステロペースの声は低く太いが、柔らかで優しい感じがした。

 しかし、権蔵達は微動だに出来ずにいた。

 権蔵はステロペースの事を信用していなかったし、プリムラ達はステロペースが案内をかってでた事に恐縮している。

 何しろ、ステロペースは天空神ウラヌスと大地神ガイアの息子であり、兄弟には大神ゼウスの父クロノスもいる。

 かつて父であるウラヌスに疎まれタルタロスに封じらた過去があるとはいえ、貴き血筋と言っても過言ではない。


「ステロ、そんなんじゃ日が暮れちまうよ。お前等も早く来い」


 荒っぽい声であるが、その声がした途端部屋の空気が一変した。

 部屋は荘厳さと圧倒的な力に支配され、プリムラ達は気絶寸前である。


「ヘパイストス様!!気軽に神殿に来られては困ります」


「んな事も言ってもよ。ホリスモスの客人と武具が来てんだぜ!?早く見たいのが神情ってもんだろ」

 ステロペースの声にヘパイストスは大儀そうに手を振って応えて、権蔵に近づく。


「お前がホリスモスから来たゴンゾウか。俺の名前はヘパイストス、良い加減面を上げろよ」

 権蔵が顔を上げると、そこには片目が潰れた男がいた。


「キルケ様の名代で来た権蔵と言います。此度は忙しい中、お会いしてもらえ感謝に耐えません」

 権蔵は一礼すると、ヘパイストスの目をじっと見つめる。


「ほう、俺の顔を見てビビらねえのか?親にも捨てられた醜い顔なんだがな」

 ヘパイストスは顔をつるりと撫でると、面白そうに笑いだした。


(この手の相手はおべっかを嫌うな…本音でいくか)


「俺の仲間にはわざと顔を火で焼いた者もいますし、拷問で顔を幾重にも斬られた者もいましたので」

 権蔵は言外にその程度の顔で驚く事はないと伝えた。


「顔をわざと焼く?そりゃ、何の為だ?」


「面相を変える為でございます。聞いているとは思いますが、少し特殊な仕事をしておりましたので」

 クオレやアミナには忍びの事を話していないから、匂わす程度で終わらせる。


「クックック、アーッハッハハ!!お前、面白れえな。あのキルケが美男子じゃなくても気に入ったのが分かるよ。鏃は直してやる。ステロ、鏃を受け取れ。ゴンゾウとエルフと犬は俺に着いて来い」

 ヘパイストスは部屋中に響くような笑い声をあげたかと思うと、踵を返し扉の中に消えて行った。


―――――――――――――――


 ヘパイストスに案内された部屋は豪奢な神殿と違い簡素な造りであった。


「驚いたかい?ここには見栄を張らなきゃ駄目な奴は呼ばないんでな。頼まれれば宝石でも金でも使ってみせるが、自分が住むには、この方が楽なんだよ。遠慮せずに、その椅子に座れ」

 ヘパイストスの指差す先にあるのは簡素な造りではあるが、継ぎ目もなく滑らかに仕上げれた木製の椅子。

 しかし、椅子に座れと言われても、極度の緊張は簡単に解けるものではい。

 クオレに至っては、椅子を汚さぬ為に軽く腰を浮かしていた。


「あらあら、そんなに緊張しなくても良いんですよ。むしろ、きちんと座ってくれた方が主人も喜びますので。申し遅れました、私はヘパイストスの妻でアグライアという者です」

 アグライアはヘパイストスの再婚相手で、ヘパイストスの育ての親テティスの娘である。

 また、ヘパイストスの元妻アフロディーテの侍女でもあり、アフロディーテと軍神アレスの浮気の際には見張り番をした事もあった。


「さて、早速本題だがゴンゾウお前の持ってきた物を見せてくれ」


「これが刀でこれが棒手裏剣、そして鎖分銅、焙烙玉にございます」

 ヘパイストスは権蔵の道具を一つ一つ手に取り、色々と質問をしていく。

 そして一息入れると、こう切り出した。


「ゴンゾウ、ちょっとスパルータに行って来てくれねえか?そうしたら、面白い物を作ってやるぜ。安心しろ、俺は閉じた世界の武具を見れて機嫌が良いんだよ」



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