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幕間 5

今回は、新登場した人から見た視点となっております。


あたしには少し変わった《力》がある。


それはあたしが生まれたときからある。


あたしの力、それは、人の動きが読める。

読めると言っても、読めるのは動きだけじゃない。


(こいつ、どうしてやろうか)


声が聞こえるのだ。

聞こえると言っても、小さい声が聞こえるのではなくて、《心》の声が聞こえるのだ。

なので、相手の動きが読めるのだ。


人はこの能力を《サトリ》と呼んでいるらしい。



最初の頃は大変だった。

色々な人の《声》が私の耳に飛び込んできて大変だった。


喜び、悲しみ、憎しみ、愛、希望、絶望、ありとあらゆる感情が私の中に流れ込んできた。


そのせいで私の心は壊れかけた。

それもそうよね。

なにがなんだかよくわからない幼児の私の中に色々な感情が一気に流れ込んで来るのだもの。


そんな時、あたしを助けてくれたのは何時でも兄さんだったの。

兄さんはあたしにいつも暖かい感情を向けてくれていた。

勿論、父さんも、母さんも同じだった。

だから、あたしは今、生きているのだとおもえる。




それからあたしは、必死にこの力をコントロールをしようと必死になって特訓した。

あたしの頑張りが実ったのか直ぐにサトリの力をコントロールする事が出来た。

まあ、そのせいで精神年齢はかなり高くなってしまったのだけど。



だけど、あたしの力はそれだけではなかったらしい。

サトリの力をあたしが使う時、あたしの両面は朱く染まる。

それだけなら問題ないのだけど、違った。


あたしの目が朱く染まっている間だけだけど、あたしの身体能力は人間を遥かに凌駕するの。

素手でコンクリートを砕き、少し走れば、車を追い抜く。


自分でもびっくりするほどの力。

まるであたしが人間ではないのかのよう。


家族のみんなには、まだ、あたしの秘密の力の事ら話していない。

拒絶されるのが恐いから。

独りぼっちが恐いから。


だから、あたしは、この力を封印して生きていたの。

隠して生きていたの。


でも、私の考え方は変わったの。

あの人に出会ってから。


あたしは、この力を使って、

あの人のようになりたいって思ったの。 

あの人のように、《正義の味方》のようになりたいって思ったの。


だから、あたしは…



「嬢ちゃん、余り大人をからかったら駄目だよ、まあ、泣いて謝ってももう許さないけどな」


あたしの目の前の男があたしに向かって言葉を放つ。


どうやら、考え事に集中し過ぎていたらしい。

気が付いたら、デパートの外の通りの裏路地にまで連れてこられてしまった。


あたしの目の前に立つ男達は不適な笑みを浮かべてこちらを見ている。

その男達の思考を読んでみてみると、案の定、気持ちが悪いような考えしかない。

正直言って吐き気がする。



まあ、連れてこられた所が人通りの少ない裏路地なのはあたしにとっては好都合なんだけど。

そんなこと考えながらあたしは髪を左右に纏める。

いわゆる、ツインテールってやつ。



何故あたしがこんな気持ち悪い男達と一緒にいるのか?


それはあたしの目に入ってしまったから。

あたしの目の前で良からぬことをしようしてたから。

あたしの目の前で、私と大して年の離れてない女の子に手を出そうとしてたから。


あたしは、正義の味方になりたい。

いや、なる。

だから、そんなこと考えている悪は許さない。


「オイ、聞いてんのか、こら!!」

そう言いながら、男達の1人の痩せた背の高い男があたしに手を伸ばす。


あたしは、その声と同時に《力》を解放する。

あたしの目は朱く染まり、目の前の手を伸ばす男の動きを直ぐに読み取り、身体を捻りながら手を受け流す。

受け流した手を掴み、あたしの方へ思い切り手を引く。

男は前屈みになりバランスを崩したのを確認すると、あたしは男の両足を蹴り上げ、唯一身体を支えていた足が地面を離れる。


そして男の体は一瞬宙に浮き、腹這いに落ちる。

うっ、と短い唸り声を上げる。

ここでこの男が諦めてくれれば良いとあたしは願ったがそんなことはなかったのであたしは蹴り上げた足を更に高く上げ、その男の背中目掛け叩き込む。


あたしのかかと落としを食らった男は悲鳴を上げながら、意識を失った。

まあ、意識を失うことはしょうがない。

何故なら人外の力で放ったかかと落としは男の寝ている地面のコンクリートに罅が入るほどの力なのだから。


その光景をポカンとした表情で見ている男達。

なにが起こったのかまだ理解出来ていないようだ。


「っ!!やっちまえお前らっ!!」


男達のリーダーみたいな男が声を上げるが、他の男達は動かない。

それどころかあたしを指さしながら、震えている。


「《朱眼の二尾の悪魔》だ…!!」


男達の1人がそう呟くと男達に動揺が走る。


「まさかっ!?あれは単なる噂じゃなかったのか!?」


「でも、あの噂通りの出で立ちに、人間離れした能力は間違いないだろっ!?」


人の事を指差しながら《悪魔》は酷いと思う。

それにしても《二尾》って何?

二つの尻尾?

あぁ、ツインテールのことか。

あたしがこうやって力を使う時はいつもこの髪型だからね。


まあこうやって悪に制裁を与えることを今まで結構な数やってきたから、こんな変な名前が出回っているのかな?

それでも、あたしのやることはもう決まっている。

とりあえず、目の前の男達に正義の制裁を与えることだけ。


あたしが身体を屈めて走り出そうとした時、


「…間違いない、本物だ…!!」

「オイ、ヤベエぞ!!逃げろ!!」


悲鳴を上げながら逃げようとする男達。

勿論、あたしは逃がすつもりはない。


力をフルに使い、一瞬で男達に近付き、回し蹴りを放つ。

一瞬のことで全く反応が出来なかったのか、男はあたしの蹴りをもろに受け、壁まで吹き飛ぶ。


仲間が吹き飛ばされたことに激情したのか、拳を振り上げながら男があたしに近付き、拳を放つ。

が、勿論あたしは力で既に相手の動きを理解していたので、片足を軸に回転するように相手の拳を逸らすと、更に回転速度を上げ、裏拳を叩き込む。

あたしの拳を受けた男はあたしの後方へ吹き飛ぶ。


そして、そのまま回転したまま、近くにいたリーダーみたいな男の前まで移動し、そのまま足払いをかける。

あたしの全力の力と回転力が合わさり、男の身体はいとも簡単に宙に浮く。

宙に浮いたのを確認後、あたしもジャンプし、両膝を揃え、先に地面に仰向けに転がった男の腹部へそのまま落下。


男は苦悶の声を上げ、意識を失った。


パンパンとスカートに付いた埃を払いながら、あたしは立ち上がる。

どうやら、この男で最後だったらしい。

辺りにはあたし以外立っている人はいない。


「おやおや、随分と元気なお嬢さんだ」


いや、違ったらしい。

少し離れた所に1人の男が、珍しいことにタキシードを着て、手にはステッキ持った男が立っていた。


「あなた一体誰?あたしに何のよう?」


「名前は名乗ることはしませんが、あなたに用はあります。」


タキシードの男はそこで口を三日月状に歪め、笑みを作る。


「あなたの美味しそうな血液を頂きます」


三日月状に歪んだ口からは、二本の牙らしきものが覗かせていた。


あたしの背筋に冷や汗が流れる。

本能がこの男が危険だと叫んでいる。


だけど、この男がここ最近起こっている連続殺人事件の犯人である可能性がある。

その連続殺人事件に殺害された被害者はみな、血液を全て失っているにも関わらず、辺りには血痕一つ見当たらないと言う不可解な事件なのだ。


「もしかして、ここ最近起こっている連続殺人犯なの?」


なので思い切って聞いてみた。


「ええ、私が美味しく頂きましたよ」


背中に更に冷たい汗が流れる。

余りの恐怖に息が詰まる。


だけど、目の前の男が犯人なのならあたしのする事は一つ。


「そう。ならあたしはあなたに裁きを与えてあげる」


あたしは正義の味方になるんだから、どんなに危険な相手でも裁きを下さなければいけないの。

あたしは何時でも迎撃できるように構える。


「…そうですか」


その言葉を皮切りに男の行動パターンが頭に流れ込んでくる。

あたしはその動きに対応しようと……


「ならば、あなたは充分痛めつけてから美味しく頂くとしましょう」


あたしが男の考えを読んで動き始める前にあたしの頭を男が掴む。

そして、男の考え通りにあたしは地面に叩きつけられる。


「ガハッ!!」


あまりの衝撃にあたしは肺の中の空気を全て吐き出す。

頭から叩きつけられるせいかあたしの頭はくらくらしており、片目が赤く染まっている事から、頭から血が流れていることがわかる。


強い。

あたしの想像以上に強い。

あたしがどんなに男の思考を読んでも、それ以上の速さで男は動く。

こんなに早かったらあたしじゃ対応出来ない。

圧倒的過ぎる。


「おやおや、もうお仕舞いですか?なら、さっさと楽にしてあげましょう。私は少女をいたぶる趣味など御座いませんので」


男は饒舌にそう語るとあたしの近くに歩み寄り、手刀を作る。


「それでは、おやすみなさい」

男はそう言うとあたし目掛け手刀を繰り出した。


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