その日、教室は爆笑の渦に飲みこまれた
はい。お題が “旅” ということなので月旅行です。(作者にお馴染みの方は、ああ、と思って頂けるひねくれ具合なわけで)
試行錯誤版とあるとおり、試行が錯誤する予定です。(完全版が出るかは不明)
魔法で月へ?! と思って頂けた方はしばしのお付き合いを。結構科学も入る予定ですが。
「制服よし、カバンよし」
そう言いながら指をさして確認するのが、もう癖になってしまっていた。
ほんの少しのミスも許されない存在が身近にいるのだから。
「・・・」
目を閉じてしばし、明日の国立魔法学園入学式の流れを確認して、準備に不足が無いかを頭の中で確認する、と。
けほり、けほり、け・・・ほっ。
そう広くない家の中、聞こえてくるのは妹の力無い咳。それに心配ではなく、安堵するようになったのはいつからだろう。
ぎゅっ、と。
いつの間にか血の気が引くほど握り締めていた拳をほどき、ぐっぱーぐっぱーと開いたり閉じたり。
くっきりと残る爪の跡を眺めベッドに入る。
勝負は明日。明日からだ。
そう、いつものように割りきってみても。
あれこれ考えてしまう頭には、いつまでも睡魔の忍び寄る隙はなかった。
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新鮮な風景だった。
桜の花びらが風に乗って、真っ白な、見上げるほど巨大な校舎正面の尖塔へと続く石畳の道に舞い降り、不思議な紋様となって彩っていた。
王都よりずっと北にある故郷では、まだ桜はつぼみだろう。
そこで花が咲くのは一月後、今回のように人生におけるイベントが発生したなら、落ち着き、そろそろ生活のリズムが整う頃。
毎日通えば慣れるのかもしれないが、田舎者には、どこもかしこも、とにかく豪華に見えてしまう。何しろ建材が石なのだ。地方の木製校舎とはわけが違う。
魔法華やかなりし頃の建物なのだろう。
もしくは注意深く隠しているのかも知れないが、継ぎ目が見えない壁や床は、地面からそのまま生えた、と言われても信じてしまいそうだ。
動く階段は魔法駆動か、最近できたというエスカレーターというやつか。
とりあえず教室が一階の新入生には縁がない。
ここは田舎も都会も似たような、廊下に貼り出されている、大きな紙に手書きの名簿で自分の名前を確認して教室に入る。
「やったー!」とか「同じクラスだね!」などと、はしゃいだ声が聞こえてくるが自分には関係ない。なぜならこちらに知り合いなどいないからだ。
開け放たれた教室は出入り自由で。
元いた学舎が同じなのだろう。
他のクラス、科違いの同性がひとかたまりになって他愛もない話に、これから始まる学園生活への期待に盛り上がっている。
ボッチは自分だけ、というわけでもなかった。
よくみれば、ぽつりぽつり、と。
誰とも話さず、目を合わせず、何なら登校初日から机に伏せているヤツがいる。
仲間は必要だ。絶対に。
目的地に行くためには。
どうあがいても一人でたどり着けるようなところではない。
それぞれの集団、個人にそれとなく目を配る。
・・・使えるか、使えないか見定めつつ。
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王立の最高学府といえども、入学式はいままで通っていた地方の学校と大差なかった。
魔法学園だけあって、学園長はとんがった頂点に広いつばの帽子にローブ姿だったし、在校生代表はコウシャク、公なのか、侯なのかはわからないが、まず田舎じゃお目にかかれない身分のお方だったし、新入生───当然、自分も含まれる───代表が王族、どよめきが大きすぎて、第いくつか聞きそびれたが王女殿下だったのにも驚いたが、それだけだ(心臓ドキバク)。
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教室に戻っても心臓の鼓動は戻らなかった。
どこか体の調子が?
・・・御心配ありがとう。
大丈夫、原因はわかっている。
となりの席である。
そこにいるのだ。
新入生代表が。
なんかこう。もう。
自分と同じ歳の少女のはずなのに全てが違って見える。
まず髪。金髪、というか本当の黄金製ではなかろうか?
形の良い額。校内ゆえに何も装飾品はつけていないがそれがおかしく感じられる。
目元。人間の目の色があんなに深まるのだろうか? と疑問に思えるほど濃いブルーを形の良い眉がさらに引き立て。
高すぎも低すぎもせず絶妙な形の鼻から続く唇は。何もつけていないはずだが、それでも艶やかに潤って。
自分の着ているものなんかとは、何もかも───女子と男子だからあたりまえに───違う制服はたぶん、生地からして別物。スカーフだけでもこちらの吊るし売りが何着も買えるであろうそれへと伸びる首筋の白さといったら!
ううん! と咳払い。
はい。見すぎですね。
・・・ここまで詳細に語ったわりにはぜんぜん見えてないんですよ実際は。
お付き? 護衛? の人が両脇にいるので。
腰に剣ぶら下げた人なんか久しぶりに見たよ。
その人がねー。
こっちの視線をちょっとでも感じた瞬間にねー。
ピリッとするんですよねー。
そりゃ。動悸も収まらないわけですよ。
ふぅ。
がらりと前方の扉から入ってきた教師に注目が集まり、自己紹介が始まった。
「朝井リーンです。魔法刺繍が得意です。ここで学んで特技を生かし王国に尽くしたいです」
「宇頭イリス。魔方陣、主に蓄積技術を高目て国の役にたちたい」
「栄本ジョン! 頑張ります! いや違った、頑張って国の役に立ちます !!」
一人、一人、立ち上がっては、名乗り、得意なこと、学びたいことがあればそれを表明し、・・・なければせいぜい元気よく、自分を紹介していく。
最後に「国に」とか「王に」つけているのは、ここが王立学園だから。
王様のポケットマネーからの支出で運営されている学校で学ぶのだから、それぐらいはつけてもバチは当たらないだろう。
もちろんつけなくとも、「わざわざあたりまえのことを言わなくても」と解釈されるのだけれど、変ににらまれるような真似はしないに限る。
そんなことを考えているうちに自分の番だ。
どこか浮わついた教室の空気は、となりの列、王女殿下が何を言われるのか、に集中している最中だからだろう。
「神田ピキリオン。ここに入学した理由は月に行くため、以上」
あ、しまった。つけ忘れた。
そのせいか、室内にただよっていた浮わついた空気がしぼんでる。
ここは、再度立ち上がっては付け足す───
─── 必要はなかった。
沈黙、からの~ 爆笑。
ぷっ!
誰かがこらえきれず、笑いをもらしたのを皮切りに。
教室は爆笑の渦に飲みこまれた。
国とか王の為って付けないの、そんなにおかしいかな?
いや、違う? そこじゃない?
他に、そんなに、変なこと。言ったつもりは無いのだけれど・・・。
この作者はとにかく適当にルビをふったり、しれっと造語を混ぜたりします。
テストでは×になるので御注意下さい。
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