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第百九十四話 リーオへの凱旋

「いいか?これから毎日鍛錬をし、それから剣の稽古だ。」

「これ・・・意味あるんですか?」

「パンジー?ルドルフ殿が言っているのだからやればいいの!」

「アラン姉様と同じ事をなさるのですね・・・」

食事を終え、クリスティアナとパンジーに魔力の鍛錬を教える。

パンジーはかなり疑わしげな視線を送ってくるが、クリスティアナに怒られて真面目に鍛錬を始める。

なぜかその隣でセシリア女王も魔力の鍛錬に参加している。

セシリア女王が鍛錬を開始すると体内の魔力が淀みなく流れ始めるので、アランに教えられて真面目にコツコツとしていたようだ。


「素晴らしい魔力操作だ。だがなぜいる?」

「ありがとうございます!アラン姉様に言われてコツコツやって来た甲斐があります!」

セシリア女王はガッツポーズをして喜び、再び目を閉じて鍛錬を再開する。

俺の四従臣の下に戻れという言葉は無視するようだ。




「訓練を始める前にお前らに渡しておく物がある。」

二人にブレスレット型の魔道具を渡しておく。

二人の訓練をすると決まった時からコツコツと作っておいたのだ。

「これは・・・魔道具ですか?」

「あっ!先輩達と同じやつ!」

「パンジーは水だから身体能力強化魔法に魔法障壁、そして水の檻(ウォータージェイル)癒しの水(ヒーリングウォーター)だ。

クリスティアナは光だ。光属性の魔石が無かったので雷属性の魔石で代用して身体能力強化魔法を三種類入れている身体、思考、動体視力だ。」

二人共フォルナとアイリーンが着けているのを見ていて知っているのだろう。

一瞬で俺が渡した物を魔道具と認識して腕に装着している。

セシリア女王が物欲しそうな目で見ているが勿論用意などしていない。

無視してまずは二人の腕前を確かめるために二人と剣を交える。


「・・・真剣でいいのですか?」

「勿論だ。」

「刃引きなんてしてませんよ?」

「問題無い。」

二人が心配しているがおそらく問題無い。

俺は木刀を正眼に構えて二人を待つ。


「では遠慮無く・・・でやぁぁぁぁ!」

「何かあっても私は責任ないですからね!」

二人が斬りかかって来る。

「(こいつら本気か?)」

パンジーは剣を振りかぶったまま目を瞑って突進してきて、クリスティアナは腰が引けすぎて体がくの字に曲がっている。

とりあえずパンジーの足を引っ掛けて転ばせる。


「本気・・・なのだな・・・」

パンジーが顔から転んでいるが問題無さそうなので、クリスティアナを見ると「えい!えい!」と言いながらへっぴり腰になって剣を振り回している。

とりあえず近づいて適当に木刀を横薙ぎに振るって剣を弾き飛ばす。

後ろで四従臣達の笑い声が聞こえるが、俺はこいつらを教えるのかと思い頭を抱える。



「よくわかった。とりあえずお前らに魔道具を渡すのは早計すぎた。とりあえずパンジーこっちに来い。」

「はい!」

額から血を流すパンジーに治癒魔法を施して傷を治す。

周りが一斉に目を見開くが気にしている場合ではない。


「驚く暇があったら二人共素振りをしてみろ。」

「「はい!」」

二人に剣の素振りをしてもらう。

二人は元気一杯に返事をして素振りを始めるが普通だ。

むしろ綺麗な素振りで素晴らしいと褒めたくなるくらいだ。


「お前らそんなに綺麗な型で素振り出来るのに、さっきの醜態はなんだ?」

「戦闘となると気張りすぎてしまいます!」

「斬るのも斬られるのも恐いであります!」

気張りすぎた結果パンジーは猪突猛進して来て、恐がったクリスティアナは先程のへっぴり腰だったようだ。


「成程、ならば荒療治だな。かかって来い。」

「「はい!」」

こうなったら二人を平常心で戦闘を行えるようになるまで毎日ボコボコにしてやろう。

そして平常心で戦闘を行えるようになってからが特訓の始まりだ。


「怪我をしたら言えよ?死ななければ治してやる。」

「わかっっぶえっ!」

「クリスティアナ?そんなへっぴり腰じゃ敵には勝てないぞ?」

「はい・・・きゃぁっ!」

アドバイスをし、時には治癒魔法をかけ、二人が文字通り立てなくなるまで叩きのめす。


「もう動けましぇん・・・」

「死ぬ・・・死んじゃいます・・・」

「俺に一太刀でも掠れば、この訓練は終わるぞ?それじゃまた明日。」

傷だらけ、泥だらけで地面に大の字で寝る二人に洗浄魔法(クリーン)と治癒魔法をかけて、自分のテントへと向かう。


「ルドルフ様?二人の傷が癒えたのはおいといて・・・服が綺麗になったのは?」

「魔法だ。おやすみなさい。」

セシリア女王が掴みかかって来る。

俺の答えに呆気に取られた様子だが、全部を説明をすると長くなるので割愛させて頂いた。

そして何よりも答える義理は無い。

さっさとテントに入って鍛錬を行って眠る。





翌日いつも通りに馬に治癒魔法をかけてから、朝食を作っているとクリスティアナとパンジーが文字通り体を引き摺ってテントから出て来る。

昨日の訓練での筋肉痛によって寝起きから青色吐息と言った様子である。

「おはよう。さっさと筋肉を付けないと大変だぞ?」

「なんでルドルフ殿は平然としてるの・・・?」

「はい、精進します。」

二人と話をしながら朝食を作って食事をする。


「へぇ?朝食は普通なのですね?」

「昼食も夕食も普通だ。セシリア女王の分は作ってないぞ?」

「もう!では私はドランブサーペントで作った朝食を食べましょっと!」

「それはよかった。」

セシリア女王は吐き捨てるように言って女王のために用意された机へと戻って、俺達に見せびらかすようにドランブサーペントで作られている朝食を食べ始める。

セシリア女王のドヤ顔を見て、このベーコンがサーペント肉で出来ている事は絶対に黙っておくべきだろう。

クリスティアナとパンジーも同じ考えに至ったようで三人で黙って頷きあう。


「あいててててててっ!」

「パンジー静かに準備してくれる?」

朝食を食べ終わり二人が筋肉痛の体に鞭を打ってテントを片付けたり馬車に馬を繋いで出発の準備を始める。

俺もさっさと出発の準備をして馬車に乗り込む。


「あんた達?御者台に座りながら・・・こうやって伸びをしな?筋肉痛に効くよ?」

「へぇ・・・ありがとうございます!」

「早速試してみます!ありがとうございます!」

出発する時にシャロンが寄ってきて、二人にアドバイスをして後方へと去って行く。

本当に出会った時からは考えられない程にフレンドリーな様子である。

その後もクリスティアナとパンジーは毎日筋肉痛で死にそうな表情で起きてくる以外はとても平和にリーオへと着く。






「顔パスですか・・・」

「王族の馬車に四従臣の護衛効果は凄まじいですね?」

先導するレジーナが平然とリーオの門を素通りするのでその後ろを付いて行くが、門兵達は俺達を咎めるどころか敬礼をして見送ってくれる。

俺達が最初に来た時は俺達の身分証を見た後に散々尋問を受けて、最終的に中に乗り込んで来た時に聖騎士の二人を見てようやく通れたと言うのに驚きを通り越して呆れてしまいそうである。



「女王陛下とエスガルド王国からの御客人だ!誰何(すいか)は不要である!」

「「「はっ!」」」

「今回はしっかりとした案内があるので待たなくていいですよぅ?」

「待ち時間が無いってありがたいねぇ?ウフフフフ」

城の前に着きレジーナが声を張り上げる。

受付をしていた兵士達が一斉に敬礼をする。

三人いるがその内の二人は前回の訪問時に俺達の応対をした兵士達だ。

それに気付いたパンジーとクリスティアナが嫌味を言っている。

兵士達は二人に気付いて顔面蒼白になっている。

だが俺が思うに先に城へと帰った四従臣のカルビンが調査を進めていれば、だが顔を青くさせるのはまだ早いだろう。



「申し訳ありませんが、ここからは御三方徒歩でお願い致します!馬車は係の者が移動させますので!」

「かしこまりました!」

「ではルドルフ殿どうぞ!」

城の目の前でレジーナに促されて二人が御者台から降りて扉を開けてくれるのでいつも通りに馬車から降りて、セシリア女王達と一緒に城の中を進んで行く。

擦れ違う人々が俺達に驚きと奇異の目を向けてくる。


「前回は透明人間だったのに不思議なものだな?」

「そりゃセシリア女王様と四従臣様が一緒ですから!」

「外務大臣さんはどんな反応をなさるのでしょうか?」

三人で思わず話しながら城の中を進んで行く。

先導するセシリア女王とレジーナとシャロンが俺達の会話を聞いて笑いを堪えている。


「フフフフフフ!ごめんなさいね?ピカール外務大臣の反応はすぐにわかるわ?」

「女王?ピエール外務大臣で御座います。」

「そうでしたっけ?失職する人間の名前は適当になってしまいますね。」

「そうだとしても今はまだ名誉ある大臣ですので。」

セシリア女王とシャロンが話している。

どうやらあのハゲデブ大臣が職を追われるのは決定事項のようだ。

そのまま城の中を進み、巨大な扉の前に辿り着く。


「セシリア・プレステス女王陛下のお成りである!」

「皆の者!低頭せよ!」

レジーナとシャロンが巨大な扉を体全体で押して開きながら声を張る。


「ではルドルフ様行きましょう?クリスティアナ様とパンジー様も一緒に。」

「あぁ・・・」

「「はい!」」

扉が開くと両脇に控える貴族達が一斉に跪き、セシリア女王に手を引かれながら奥にある玉座へと歩く。

エスガルドの時も思っていたが、こういう場所に来ると全く勝手がわからないので借りてきた猫のようになってしまう。

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