98話【わからないこと】[side:ST]
――うう……。
何を話しているのか、さっぱり分からん。
[(兄貴/姉貴)?]は一体、何の話をしてんだい?
錆びた砂がどうとか、濁った水がどうとか――
――あとは、詛呪がどうとか言ってたかねぇ。
ちょっとした詛呪祈祷ぐらいならやったこともあるけど、所詮は神官共の真似事だったしねぇ。
むしろ今、アタシが[変に椅子の多い部屋]に居る必要なんてあるのかい?
――無いだろ?
……だからといって、特に行くところもないんだよ。
メガリスのヤツも、せめて案内ぐらいしてくれてもいいのにねぇ。
――ん?
[通信確認]...[通信確認]...[通信確認]......
えっと……アレだね、メガリスがよくやる。念話術みたいなヤツだ。
……そういえば。
なんでアタシ、無言遠距離会話できるようになってんだろうね?
まあ、いいや。
それよりも、えーっと、確か――
...[応答確認]
で、よかったんだっけか。
……それにしても、誰だ――?
[# ――女機人よ ]
「!?
アンタは、さっきの――黒い鳥!?」
[# バーバトゥルス、である。
女機人よ。汝に、助力を請いたい]
「ならアタシはセクターナ・ヒーベア。セタで構わねーよ。
で――助力ぅ? なんだい、なんかあったのかい?」
[# ――些末なこと。
されど、当機単独ではどうにもならぬ」
「なんでアタシに?
メガリスや、アンタのご主人サマじゃあダメなのかい?」
[# 主が御手を煩わせるほどの事態ではない。
もうひとりの女機人は[高速演算下]ゆえ、配慮した]
び、じー……?
よく分からないが……メガリスが今、忙しそう――ってことぐらいは分かる。
「あー……それでアタシ、ってことかい。
いいよ、鳥野郎。手伝ってやる」
[# 恩に着る、のである。情厚き女機人よ。
然らば、我が着陸地点まで参られよ]
「分かった。
――今から行く」
...[通信終了]
アタシの影生物はまだ、鳥野郎の所でのたうってる筈だ。
なんとなくだが場所はわかる――そこに向かえばいいか。
少し周りの目を気にしてみたが、議論に集中して誰も見ていない様だった。
「――なら、いいか」
特に何を憚ることなく、この椅子だらけの部屋を出る。
……まあ、誰にも気づかれてない――よね?
さて、とりあえず。
向きは――あっちだね。
……通路沿いに、進めるかねぇ……?
まあ、なんとかなるさ。
いざとなりゃ、影生物もいるしね。
「――セタさんっ!」
背後から、声!
何だったっけ。確か、この声は――
「……えっと……
フユカ、さん?」
こんな感じだった、ような――?
「フルカですっ!
それよりもセタさん、どこへ行くつもりなんですか?」
「あー……落っこちてきた鳥の所だよ。
なんでも、頼みたいことがあるとかなんとかで」
「フェンベルトス様の渡空艇、ですか?
何でしょう、自己修復機構の不具合でもあったんでしょうかね?」
「アタシは知らんし、さっぱり分からん。
鳥は{些細なこと}とかなんとか言ってたけど」
「んー、そうなんですか……心配ですね。
――あ、そうだ。じゃあ私も一緒に行ってもいいですか?
艦の自己修復のお手伝いなんかはいつもやってますし、
なにか力になれるかもしれません」
「そうなのかい? なら、その方が良いかもしれないねぇ。
お願いするよ。とにかくアタシにはさっぱり分からんのさ」
「じゃあ行きましょうか、セタさん。
連絡は艦にお願いしておきますので」
「うん? ――うん。
ああ。あと、それと――」
「なんですか、セタさん?」
「……道を教えてくれ。
どこが、どうなって、どうなるのかが分からん」
「ああっ! すいません、案内もせずに。
あとで色々教えてあげますね!」
「頼んだ。よろしくお願いするよ」
「はい!」
まあ、なんだかんだ言っても。
そのぐらいの時間は、あるだろうしね。
――よっぽどの事が無ければ、さ。
少し、そんな事を考えながら。
ふわふわ栗毛の女の後を追って。
アタシは、鳥野郎の所へと向かっていった――




