1.取材と厄介事はワンセット。
≪昨夜未明、××通りにて児童の遺体が発見されました。
児童の遺体の周りに百合があることから、昨今騒がれている児童連続殺人事件の犯行と思われ…≫
サクッ。
「うげ、あっま!塗りすぎた。」
≪警察による見回りは絶えず行われているものの、未だ犯人は捕まらず、警察内部でも問題になっているそうです。
一部市民の間では、犯人は警察内部にいるのではないかという噂も……≫
どこ情報だよ。これだから、地方ニュースは……とパンを食べながら考える。
書斎にある自分のコルクボードに貼りつけた乱雑に書かれたメモを思い出す。
【私の天使へ捧げる】
事件現場に残っていたメモをコピーしたもの。
……なにが天使だ。守護者気取りで自分の天使へ他人の子供をささげるイカレクソ野郎が。リモコンへと手を伸ばし、テレビを消す。
朝から胸糞悪い気分になりながら、携帯を開き、オオカミに電話をかける。数回のコール音の後、懐かしい声が聞こえてくる。
『お電話ありがとうございます。ライアー探偵事務所です。』
「よお、ヒツジさん。」
『ご無沙汰しております、ジェームズ・フック様。
ライアー所長は現在離席しております、ご用件を言っていただくか、数分お待ち……いえ、失礼しました。すぐ代われます。どうされますか。』
「んじゃ、代わってくれ。」
『承知いたしました。ライアー所長、ジェームズ・フック様からお電話です。』
『ち、ちょっと、手洗ってるんだけど!』
電話の奥から焦った声が聞こえてくる。先ほどの不快な気持ちが消えてくる、こいつらのこういう会話が気持ちを和ませてくれる。
「ヒツジさん、手を拭くまでは待つよ。」
『ありがとうございます。では、数秒お待ちください。』
『いいよいいよ代わる。
……ジム、久しぶりじゃん、どうしたの?』
「よおオオカミ、久しぶり。そっちの進展はどうだ。」
『残念ながらないよ。
ていうか、オオカミはやめてよ。前はウルフィって呼んでくれてたじゃないか。メリーのこともヒツジさんって呼んでるし。』
「いいだろ、オオカミ探偵とヒツジ助手。」
『僕らは絵本のキャラクターじゃないよ。……あー、ジム、今朝のニュースは見たかい。』
「根拠のないくそ地方ニュースか。見たぜ、そしてすぐに消した。」
『ハハハ、君らしいね。依頼があるから、僕は事件現場に向かうんだ、君は?』
「あー、すぐ行くよ。現場で落ち合おう。」
『うん、気をつけてね。』
「ガキじゃねえんだ。……ガキみたいな面してんのはそっちなんだからお前が気をつけろよ。」
電話向こうから失礼なやつ!と怒声が聞こえてきたが、無視をして切る。
テレビでは、××通りとか言ってたな。取材に行くにしても、ヴァイスさんにメールしておかねぇと。
現場の許可取りは、あいつの同行扱いで、よし大丈夫そうだな。
画面をスライドしながら、上司へのメールを打っていると、突如画面が切り替わり姉の名前が表示される。
「……?」
用事はなかったはずだ。
なにかあったのだろうかと、少し焦りを覚えながら出る。
「急だな。なんかあったのか?」
『ジム!!ごめん!頼み事があってね……。』
「……あー、内容による。迎えとかなら時間帯にもよるし。」
『実は迎えじゃなくてね……預かって欲しいの。』
「なにを?」
『可愛いあなたの姪っ子たちを。』
ため息を吐きそうになるのを堪える。
いや、まぁ、厄介ごとだろうなとは考えていた。
だって、うちの姉だ。口を開けば、あちらの都合のいいことばかりだ。だが、たった一人の家族でもある。……仕方ない。
「いつからいつまで?」
『明後日から一週間、急でごめんなさいね。
この前結婚記念日のパーティをしたでしょう?その時にノアから旅行をしようって提案があったんだけど、一昨日からこの子達がここを離れたくないと言って聞かなくて……。』
「いい、いい。学校もまだあるんだ、勉学に集中した方のがそいつらにもいいだろ。通学バスとかの申請だけは俺じゃ出来ねえから頼む。」
『もちろん!本当にありがとう!愛してるわ、ジム。』
姉の軽い言葉をいなしながら、電話を切る。
……買い物に行かないといけない。牛乳と、シリアルと……、歯ブラシとかは持ってくるか。
寝床は……俺がソファに行けばいいか。
ベッドになるやつ買ったし……。
とりあえず、オオカミと落ち合う約束がある、早めに支度をして行こう。
考えながら支度していた荷物を持ち、ヴァイスさんへのメールを打ち直し送る。
鍵も持った、カメラもある。よし、行くか。




