襲撃5
「ルーナ!」
城へ戻ったルーナにロクデムは駆け寄った。
「よく戻ってきてくれた……」
ロクデムはルーナを抱きしめる。ロクデムとともに出迎えたシサヤは渋い顔でルーナに目配せした。
「ロクデム様! 護衛の方がいなかったらと思うと……」
「ああ、そうだろう。辛かったねルーナ……」
「私、怖いです。ロクデム様……今でもあの怖い人たちを思い出してしまいます」
ルーナは目に涙を浮かべながらロクデムの抱擁に甘えた。
「君が辛い目に遭っている時に傍にいてやれなくてすまない……」
「いいんです……」
「さあ、ルーナ様。まずはお身体を綺麗にいたしましょう。お召し物も泥まみれですし・・・・・・。ロクデム様、申し訳ありませんが……」
シサヤの言葉にロクデムは頷いた。
「ああ、そうだね、すまない。落ち着いたら声をかけてくれ、なるべく傍にいたい」
「ありがとうございます」
ロクデムと別れ、自室に戻ったルーナは汚れたままの服で寝台に座った。シサヤはそれを心配そうに見つめている。
「ルーナ様。大丈夫ですか?」
「ええ。……けれど、思ったよりもロクデムは本気で私を排除しようとしています」
「やはり、ロクデム様が……?」
ルーナは懐から依頼書を取り出してシサヤに渡した。彼女もすぐに、その字がロクデムのものだと気が付いた。
「こんなものが……そんな……」
「驚きました」
「こ、これを国王にお見せしましょう! 息子がこんな蛮行に手を出していると知ればきっと!」
シサヤは興奮気味に言った。ルーナは依頼書を受け取り、静かに首を振った。
「ロクデムの父君がどう動くかわからない以上、それは危険です。それよりも、私はあなたが心配です。シサヤ」
「私ですか?」
シサヤは首を傾げる。
「私を消そうとしたならば、シサヤの存在も邪魔になります。どこかに身を隠してください」
ルーナが言うと、シサヤは笑う。
「まさか。私なんて相手にもされませんよ」
「シサヤ」
ルーナは強い眼差しでシサヤの目を見た。半笑いだったシサヤも、次第に表情を固めていく。
「わかりました。ルーナ様を信じます」
シサヤが部屋を出て少しすると、ロクデムがやってきた。「落ち着いたかい?」
ロクデムが優しく声を掛けると、ルーナは力なく頷いた。「少しだけ・・・・・・まだ怖いです。あんな目に遭うなんて・・・・・・。護衛の方がいてくれて良かったです」
ルーナは少し考えた後、さらに口を開いた。
「ロクデム様は、何か知っていますか?」
「え? ・・・・・・何をかな?」
「あの辺りの賊についてです。今後も私のように怖い思いをする人がいるかもしれません」
「あ、ああ、そうだね。それについてはごめん。僕は何も・・・・・・」
ロクデムは頭を掻いた。その様子をルーナは静かに眺めていた。
揺さぶりを掛けるつもりもなかったが、目の前の男は勝手に動揺した。やはり、あの依頼書は何も考えずに作ったのだろうか。
「ルーナ?」
「ああ、すみません。今日のことを思い出してしまって・・・・・・」
ルーナが俯くと、ロクデムはゆっくりと抱き寄せる。
「無理もないさ。ただでさえ記憶がないのに恐ろしい目に遭ったんだ。僕にできることがあれば何でも言ってほしい」
ルーナはロクデムに抱きついた。
「記憶がないのに、こんなことをお願いするのは駄目だとわかっているんです」
「なんだい?」
「私、もっとロクデム様と一緒にいたい」
ルーナはロクデムの胸に顔を埋めながら言った。
「ルーナ・・・・・・」
「今晩…‥寝室の鍵を開けておきます」
「・・・・・・わかった。君が望むのなら。二人で愛を確かめよう。記憶が戻るかもしれないしね」
ロクデムはそう言って大きく頷いた。
「じゃあ、僕は夜までにいろいろ片付けておく。今はここを離れてしまうけどいいかい?」
「はい・・・・・・すみません。わがままを言ってしまって・・・・・・」
「いいんだ、ルーナ。気にしないで。じゃあ、また夜に」
ロクデムは微笑むと部屋を出て行く。
それを見送ったルーナは大きく深呼吸をし、姿見に映った自分の姿を見つめる。
「ごめんね、ルーナ。あなたはそんな子じゃない。心配しないで、ちゃんと身は守る。あんな男に身体なんて渡さなないから」




