324.活力源
「君は、いつもそうだね」
「何、?どういう事だ」
裕翔の目の間に現れた碧斗は、眉間に皺を寄せる。それに、裕翔は微笑みながら、あえて首に近づけられた刃に更に近づき告げた。
「そうやって、自分を正当化しているところだよ」
「正当化、、確かにそうかもしれないな、、何度も、何度も思ってるよ、、自分自身でも、そう思ってる」
「だからこそ、同じく正当化する転生者達は嫌いかい?」
「それは、」
「自分に似ているから」
「っ」
「話を逸らさないで。相原さんの居場所はどこ?」
碧斗が彼の言葉に目を見開く中、樹音はそう割って入り更に身を寄せる。それに、裕翔は浅く息を吐くと、小さく微笑む。
「図星だね、、それに対して助け舟を出せるのも、君がそうだからじゃ無いのかい?円城寺君」
「...」
「無言は同意を意味するよ」
「お喋りが好きみたいだな。もう二度と話せない様にしてやろうか」
「っ」
突如割って入って告げたそれに、碧斗は目を剥く。そこには、言葉だけで無く、実際に首に刃が近づく中、頭を押さえて更に近づけるーー
ーー大翔が居た。
「おっと。随分と物騒な事を言うね」
「おお、悪りぃな。周りにいい顔して、それっぽく表現するお前には、イライラしてたもんでよ」
「素直だね、でも、自分に素直になれないみたいだ。それは意味がない。自分を正当化し相手を責める、他の人と変わらないさ」
「は、?俺が、?」
「ここにいる人、皆そうだよ。全員が、自分は頑張ってる。自分は違うと、そう思い込みたくて足掻いているのさ、、ぐふっ!?」
裕翔はそう小さく微笑みながら口にすると、突如。咳き込みながら崩れ落ちた。
「これは、」
「お喋りが好きで助かったよ。その間に、俺の煙を十分に吸わせる事が出来た」
「ふふ、なるほどね、そういう意味か、」
裕翔がそう小さく零すと、対する碧斗は真剣な表情で、同じ目線になるためにしゃがみ、告げた。
「改めて聞くぞ。相原さんはどこだ」
「それを伝えて、どうするんだい?」
「相原さんを、、助け出す」
「助け出す、かぁ、、やっぱり自己主張じゃ無いか。彼女は、僕と共に居ることを望んでるっていうのに」
「っ、いや、違う。違うだろ。そんなわけ無い。相原さんは、絶対、」
「思い込みたいだけなんだね。だからこそ、そうやって感情に任せた言い分を並べるだけ並べて、それを真実であると頷かせるために、、自分のために必死になってる」
「うるさいっ!そんな、、そんなつもりは無い、」
「そっか、、でもまあ、どちらにせよ、相反する事には変わりはないね。鉄の処女」
「「「っ」」」
裕翔はそう低く告げると、自身の周りに鉄の壁が地面から生え、そこから大量の棘が突き出す。それに、目を見開き一同はそれぞれ距離を取る。
「君達に付き合ってる暇はないんだ。申し訳ないけど、、相原さんが混乱してる。今は一人にさせない方がいいと思うからね」
「それこそ、思い込みかもしれないだろっ、!その混乱の種は、裕翔君、君のせいだろっ」
「うーん、それもそうだね。主観的思想は、それぞれの世界と言ってもいい。でも、本人がそう言うならば、それは真実と判断されるわけだ」
「相原さんが、そう思ってるって言いたいのか」
「そうさ。だから、邪魔しないでほしいな」
「見るまでは、確信にならないぞっ」
碧斗はそう声を上げると、手を前に出してその手を握る。と、それと同時に裕翔の周りに突如煙が現れ、それが凝縮し圧力を放つ。
「クッ」
それにより後退った裕翔は、その背後に。
「ごめんね。でも、相原さんに会わないと、僕らも安心出来ないよ」
樹音が、剣を構えそう口にした、その直後。
樹音は裕翔に大きく剣を振る。が、しかし。
「っ」
裕翔は左腕でその剣を受け止める。だが、突き刺さった感覚はない。即ち。
「いきなりだね。びっくりしたよ」
その腕には既に鉄がついており、そこから全身に広がって鉄の鎧が出来上がる。
「っと!」
「クッ!?」
そののち、裕翔は回し蹴りをして樹音を蹴り飛ばす。なんとか剣を盾にし直撃は免れたものの、その勢いは凄まじく、数十メートル先にまで吹き飛んだ。
すると、一方の裕翔は後ろから。
「とらっ、!」
大翔が跳躍し、落下する勢いを利用して裕翔に殴りを入れる。
「っ」
それを手を上に上げると共に鉄の壁を作りそれで抑えたのち、その壁は消え去る。
「なっ、、っ!」
と、その壁の後ろから、鉄の塊がいくつも大翔に向かっており、それを避ける事は出来ずに腕で防いで必死に耐える。
「グッ!?」
「ダガーレインッ!」
「スモークインパクトッ」
すると、樹音は背後から大量のナイフを飛ばし、碧斗は遠くで拳を握りしめ周りから煙の圧力で裕翔を吹き飛ばす。その吹き飛ばされた勢いにより僅かに出来た鉄の鎧のヒビ。そこ目掛けてナイフが向かい、裕翔は腕の鉄を広く伸ばしてそれを防ぎながら圧力に耐える。
「随分と焦ってるみたいだね」
「焦ってる?まあ、確かにそうかもな。ただこっちも相原さんの行方が気になってるんでねっ」
碧斗はそう声を上げると、更に煙の圧力を強め吹き飛ばす。
が。
「はぁ、、でも、これは僕を舐めすぎじゃないかな」
「...何、?」
「だから、僕のこと、舐めすぎじゃ無い?って、言ってるんだけど」
裕翔はそう零すと、吹き飛んだ先に鉄の壁を作りその勢いを殺すと、地面に足を着き、足の鉄を伸ばして地面に突き刺し、固定させた状態で手を上に上げる。
それにより、地面から大きな鉄が生えて、それは、そののちーー
「君達は、僕が勝てないから周りを巻き込んでるんだと思ってるのかもしれないけど、あれはただの手法でしかないよ。君達に与える絶望は、僕にとってはアプローチの仕方の一部でしか無いんだ」
「なっ」「えっ、」「嘘だろっ」
ーー裕翔はそう零しながら、その鉄を巨大なミサイルランチャーに変形させた。
「鉄で出来る範囲超えてるだろっ!?」
「みんなっ!下がって!」
大翔がそう冷や汗混じりに零すと、そんな彼と碧斗の前に樹音は割って入り、剣を上げると、地面から刃の壁が出来、放たれたミサイルを僅かに耐える。ものの。
「逃げてっ、!ぐはっ!?」
「樹音君っ!」「樹音!」
その刃は一瞬にして破壊され、樹音は爆風に巻き込まれる。
「あれ、一人だけだったか。もう一人くらいは行けると思ってたんだけどね」
裕翔はその煙が薄れる中、それに巻き込まれた人数を察してそう零す。が、その瞬間。
「一人ですら、無いよ」
「っ」
突如背後に、樹音が剣を構えて現れ、裕翔は目を見開き振り返る。
そう、先程の爆風。それにより生まれた煙を碧斗は操作し、更に大きな圧力の勢いを持たせて彼を吹き飛ばしたのだ。その結果、直接その一撃を喰らうよりも前に、裕翔の背後にまで飛ぶ事が出来たのだが。
「やるね」
「っ!」
裕翔はそう小さく笑うと、樹音が剣を振った瞬間、目の前に鉄の壁が出来上がりそれを防ぐと、そのまま鉄の壁が広がり彼を閉じ込める。
「クッ!?やられたっ」
「樹音君っ!クッ、させるかっ」
「突っ込んで来ても無駄だよ。ほんと、僕を舐めすぎだ」
碧斗が煙の圧力でただ彼に向かったその時、裕翔は浅く息を吐きながら手を前に出して鉄の壁を作り、樹音と同じく閉じ込めようとする。
が、しかし。
「っと!」
「っ」
碧斗は勢いのまま進む中、突如横に煙による圧力を発生させ、押し出す事でその壁を避けて目の前にまで到達する。
「くらっえ!」
「おっ」
碧斗はその勢いも利用し、更に圧力を与えながら殴りを入れる。が、しかし、裕翔の体についている鉄には敵わず、碧斗は歯嚙みする。その姿を裕翔は見据え小さく微笑む。
「そんな事、頑張っても無駄だよ。鉄を壊せるほどの力は、いくら頑張っても君には不可能だ」
「おっと、なら、俺が鉄を破壊すると思ってる時点で、俺の勝ちかな」
「え」
「おらよっと!」
ふと、碧斗が放ったそれに、裕翔が目を見開いた直後、背後から大翔が現れ殴りを入れる。
「クッ!?」
ー煙の方に集中しててっ、後ろに注意がっ、ー
裕翔は、そう思うがしかし。
「っ」
小さく微笑み、殴りを入れようとする大翔を包み込む様にして背中の鉄を広げると、それに相手が気づくと同時に取り込む。
「ぐあっ!?」
「大翔君っ!」
「君も人の事言ってる場合じゃないよ」
「っ」
裕翔はそうぼやくと、目の前の碧斗に、生成した銃を構える。と、その瞬間。
「グッ!?」
裕翔がそれを撃った。その瞬間、碧斗はその一瞬を狙って煙の圧力で自分自身を押し出すものの、肩にそれを受ける。
「がっ!?あっ、!ああぁぁぁっ」
「銃に撃たれる事は平和ボケした日本では中々無いからね。どう?イメージはあっても予想以上でしょ?」
「クッ、うっ、!あぁぁぁっ!」
「おっ」
碧斗は肩を押さえながらそう声を上げると、反撃の如く体から大量の煙を放出し、その場一体を覆い尽くす。
が、しかし。
「また内側から侵食するつもりかい?それはもう通用しないさ」
「っ!」
裕翔はそう微笑みながら返すと、その矢先。碧斗を包み込む様にして鉄が生えて変形する。
「グッアッ、!」
「煙が外に出るのは困るからね。いつどこで煙の成分変化されるか分からない今、君ごと閉じ込めるのが得策かな」
「クッ、、、ッソ!」
碧斗は歯嚙みし懸命に鉄の壁を殴る。壊してやる。そう強く思いながら。すると、その瞬間。
「っ!あんたっ」
「ん、?ああ、相原さん、何してるの」
「「「っ!」」」
裕翔の一言に、その場の皆が目を見開く。
「相、原さん、?」
「相原っ、!おまっ、居んのか!?」
皆、鉄の中に閉じ込められているが故に、彼女の姿を見れる人は居なかった。が、しかしーー
「え、、あんた、何、、やって、」
「え?あー、何って、伊賀橋君、円城寺君、橘君さ。みんなさ、ちょっと僕の力を見誤り過ぎだと思うんだよね」
裕翔はそこまで放つと、目の前の鉄の塊。即ち碧斗の入っている鉄を蹴るように、壁に足を付けて息を吐く。
「だから、ちょっと本気を出させて貰ったよ。僕が本気を出せば、何でも作れるという事を見せるためにもね。まあ、生成したものの原動力が他に必要なものに関しては難しいけど。でも、鉄を材料として生成出来るものの範囲であれば、動くものも可能になってくる。ま、つまりだからこそ、人が受けるには大き過ぎるものを生成したり、勝負なんて全く考えない、瞬時に閉じ込める方法でみんなを戦闘不能にしたのさ」
「なんで、」
「なんでって、、まあ、どちらにせよみんなは処罰対象だからね」
「どうして、そんな、」
「大丈夫さ。だからこそ捕まえるだけに留めたんだよ」
「だからって、」
ーーそう、その声は明らかに、美里のものだった。
「はぁ、はぁ、はっ」
外で、裕翔と美里の会話が聞こえる。ずっと、探していた美里だ。顔は見れていないが、間違いなく声で確信出来る。
何故だろう。ずっと探していたというのに、心臓がバクバクと、震えている。
「なっ、、なんで、」
碧斗は深呼吸しながらも、そう零す。手が震える。息が上がる。美里に会いたい。そう思っていた筈なのに、それなのに。
「怖いのか、?」
碧斗は歯嚙みしながら、小さくそう零す。この空間が怖いのだろうか。またもや、閉じ込められてしまった、この中が。
「そうだ、、そうだよな、」
碧斗は半ば自分に言い聞かせる様にそう小さく零すと、その最中、美里は懸命に声を上げる。するとふと。
裕翔は微笑む。
「ま、これで、役者は揃ったかな」
「え、」
「何、言ってるわけ、?」
「ん?いや、最後の仕上げって事さ」
裕翔はそう零すと、碧斗の入った鉄の塊に向き直る。
「巽拓篤、だったかな」
「っ、、お前、、なんで今、」
「当たってたみたいだね。君の兄さ。彼から、話は聞いたみたいだね」
「は、?なんのだよ、」
碧斗は、怪訝な表情を浮かべ、低くそう零した。すると。
「彼の過去さ。だからこそ、君は知ってると思うんだよね」
「知ってる、?」
「そう、、一条、優香」
「っ」
「一、条、?それって、」
碧斗が目を剥く中、美里もまたそうぼやく。それに、裕翔は微笑むと、「それ」を告げた。
「ああ、まだ君にはちゃんと名乗ってなかったね。僕の名前は一条裕翔」
「...は、?」
裕翔はそこまで告げると、少しの間ののちーー
「伊賀橋君。いや、巽君。一条優香の事、兄から聞いたよね?どうだった?どんな最期だったって言ってた?僕の、"妹"は、どんな最期を迎えたのか、聞かせてくれないかな?」
「っ」
裕翔の告げたその一言に、碧斗は目を剥いた。兄が。拓篤が、必死に、ずっと想い、彼女が全てで、彼女の死が、全ての引き金となったのだ。全ての。彼の精神を壊した、その原因。それを思い返すと共に、僅かに。
碧斗は拳を握りしめたのだった。




