運命の日 その一
そして、運命の日を迎えた。
寿奈と優が、警察に援助してもらった代金で日本に向かっていることも知らず。
『Rhododendron感謝祭』が、幕を開けた。
東京ビッグサイトを借りて行われるこのイベントには、多数の観客が来場し、『Rhododendron』の歌を待っていた。
その観客の中には、様々な人がいる。
雪空千尋、暑井火奈乃などの、かつてのライバル。
国内や海外のファン。
そして、感謝祭を搔き乱さんとする研究員の姿も。
空良は単独で、作戦を実行しようとしていた。
全ては、この時の為。
警備スタッフには既に、証拠品の全てを提出済み。
空良の合図で、いつでも動けるようになっている。
何も知らない観客たちの前で、まず一曲目が始まろうとしていた。
ナレーションと同時に、彼女達は登場するが・・・・・・。
そこには歓声はなく、激しいブーイングが飛び交ったのだ。
理由は、もう分かっている。
現在、メンバーの大半がいない状態だ。
寿奈は死に、空良は作戦の為姿を消し、優は消息不明状態の寿奈を探しており、秀未は部室で安静にしている。
今ステージに立っているメンバーは、三人しかいない。
それでも、琴実だけは諦めず前に出た。
――ここで引き下がれません。私は服部さんと約束した筈です。
――何かがあったら、服部さんと私で何とかすると!
「皆さん、聞いてください!
今日中に・・・・・・メンバーは必ず揃います!
ですから、どうか帰らないで下さい!」
根拠などない。
だけど、これだけは分かる。
心は、一つなのだということ。
例えこの場にいなくとも、自分達は仲間で、一つの事を成そうとしていること。
琴実には、それが分かる。
だから、迷う理由なんて無かった。
マイクを取って、最初の構えを取って。
口を開いた。




