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今日からアイドルを始めたい!  作者: 心夜@カクヨムに移行
ファイナルライブ編 杉谷寿奈よ、永遠なれ!
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優VS研究員の親玉

優を捕らえて以来、侵入者は誰一人も寄ってきていない。

 ニーナは目的の邪魔をさせない為、カルラも目的の為に必要だったから確保し、優は秘密を見破っていたから捕らえた。

 未だロンドンに潜伏中の研究員は、実を言うと寿奈を殺してなどいない。

 寿奈を戸籍上から消すようには命令されたが、殺せとは言われなかった。

 勿論感謝祭の終わり――つまり自分達の計画が成功した後には解放するつもりだ。

 日本で空良という名の少女が頑張っているというのは耳にしているが、正直に言えばこの計画が失敗することなど万に一つもない。

 寿奈を生かしておきたい理由としては、個人的な楽しみがあるからだそうだ。

 祖国の民が洗脳された地を見せ、彼女がどんな顔をするのか。

 そして絶望しきった顔をして、力なくうなだれる彼女を、今度こそ殺したいと言っていた。

 勿論、研究員もそれには大賛成だ。

 自分達が敗者だから、その気持ちは分かる。

 敗者は、強者が顔を歪ませて絶望するのを見るのが好きなのだから。

「このままいけば、世界を我らのものに

 

「――出来ると思ったのかよ」

 

 バタンというドアの開く音の後、研究員の言葉を遮るように優が声を上げた。

 確実に鉄格子の奥深くに閉じ込めた筈の、優が。

 そして他の三人も、脱出していた。

「こここ、これはどういうこと!?」

「残念だったな。私はお前らと違って諦めが悪いんだよ。

何度負けたって、何度地に落とされたって、私は折れねえ。

後ろから研究員が来ねえってことは、お前が最後の一人だろ?

さあ、かかってこいよ」

 優が人差し指を向けて挑発する。

 確かにこの状況ならば、優達に負ける要素はない。

 自分がいくら奮戦しようと、ニーナに不意打ちされれば意味がない。

 研究員に出来るのは、時間稼ぎくらいのものだ。

「来ないならこっちから行くぜ!」

 優は拳を握って、魚雷の如く駆け出した。

 研究員の前で一度ジャンプし、落下の勢いと拳の威力を掛け合わせたパンチが炸裂する。

 間一髪躱す研究員。

 ポケットから拳銃を取り出し、二、三度引き金を引く。

 その弾丸を、優は踊るように回避する。

 先日襲撃した時とは、比べ物にならないくらい成長していた。

「アイドル舐めんなよ!」

 整った八重歯に凄絶な笑みを浮かべながら、優は拳を振るう。

 研究員は優の言葉に、動揺していた。

 同じアイドルである筈の優より、自分が劣っていることを改めて気づかされたことに。

 そして、攻撃を避けられず、今は拳を受けることしか出来ない自分に。

「私達は負けない・・・・・・。

初めてあの日アイドルになってから、誰にも負けないように必死に努力して、積み重ねてきた。

だから、勝つんだ!」

 最後の一撃が、研究員の顔にめり込んだ。

 研究員は真っすぐに吹き飛ばされ、壁に当たった後に意識を失った。


 それからは早く行動した。

 奪い返した携帯端末で日本行きの飛行機をいち早く調べ、何とかニーナに飛行機代を借り、そのまま優の運転で空港に向かった。

 時間はギリギリ。

 もう感謝の言葉を述べている時間も無かった。

「ニーナさん、ありがとうございます。

必ず後で返します」

「いいのいいの。

その代わり、私に皆の踊りを見せてよ。

それが出来れば、借金なんてどうでもいい」

寿奈とニーナは、お互いに笑った。

「時間はない。

もう荷物検査に行くぞ、寿奈」

「はい」

――道女、琴実、待っててくれよ。

彼女らの身を案じながら、優は荷物検査に向かった。


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