真実、そして寿奈達の為に出来ること
「そんな・・・・・・」
真宙が口を押さえながら、その場で崩れ落ちた。
包み隠すことなく、空良は起きたことの全てを話した。
寿奈を殺したのは北子の仲間であること。
実験の出資者の一部に、真友がいたこと。
そして、感謝祭を利用して人間を洗脳しようとしていること。
「だから貴女達には言わず、私は秀未先輩だけを連れて計画を止めようとしたんですよ。
行動の理由、分かりますね?」
空良は目を細めながら言う。
あらゆることで、空良は今憤りを覚えている。
何も出来ない自分自身と、感謝祭を使って世界を掌中に収めようとする敵に。
「だけど秀未先輩には、もう無理をさせられない。
これ以上メンバーがいなくなると、感謝祭に影響する可能性もある」
「ならその方が
「ダメなんですよ、真宙先輩」
真宙の言葉を制す空良。
「あの剣士がいる以上、北子を止めることは不可能なんです。
ですが、感謝祭中だからこそ、奴らを倒す手段があるんです。
それに、寿奈姉さんの為にも中止なんて出来ません」
「どうすれば、いいの?」
空良はチェスの駒を弄びながら、真宙の問いに答えた。
「敵は会場内で音楽を流すつもりでいます。
だけど、仲間を洗脳しないように配慮する筈なんですよ。
そこに漬け込むんです」
空良の作戦は具体的に二課程に分けられる。
まず、警備スタッフに空良が持っている資料の全てを見せ、協力を呼びかける。そこでスタッフにも、作戦を伝える。
次に音楽を鳴らし始めた瞬間に北子を確保、北子を助けようとした重美を催眠弾で眠らせる。
念の為、空良も隠れて作戦の成り行きを見届ける。
これが作戦だ。
「成功確率は限りなく低いですが、今の所はこれしかありません。
ですがこれを成功させなければ、感謝祭終了と同時に世界は奴らの手に渡る。
だから、私は一人でもこれを成功させてみせます」
そう言って、部室を出ようとしたその時。
「待ってください、空良さん」
琴実の声。
「その作戦、私達にも手伝わせて下さい。
私達は、ただ皆で踊る為だけに活動しているのではありません。
歌と踊りで皆に笑顔を与えて、仲間が困っていたら助け合う。
それが『Rhododendron』。スクールアイドル『Rhododendron』なんです!」
「先輩・・・・・・」
少しの間、空良は忘れていた。
自分がもう独りではないことを。
そして、アイドルであることを。
寿奈と出会い、皆と出会い。
そして空良は、寿奈よりも凄いアイドルになろうとしている。
「生死も関係ない、学年も。
どんなに離れ離れになったとしても、私達は仲間なんです。
仲間である限り永久に、他の仲間と無関係ではいられませんよ」
琴実は、思い出しているのだろう。
正子を、寿奈を。
彼女らは死ぬ寸前まで、自分達の仲間を大事に想っていた。
だから、空良も。
「命尽きるその時まで、私達は仲間です。
だから、皆でこの世界を守りましょう。
歌と踊りは、笑顔を届ける為の魔法なんだってことを、奴らに教えましょう。
きっと寿奈姉さんなら、こう言いますよね」
あの時、独りでいた空良に手を差し伸べて言った言葉。
そのまま空良は、口に出した。
「皆さん、練習しましょう!」




