空良と火奈乃 その六
そのまま、大会当日になり。
空良は爆弾を設置し終えていた。
リモコンを手に握り、いつでも起爆出来る状態にあった。
「・・・・・・」
先程の見回りで、『Rhododendron』を含めた五グループが会場に来ていない事を確認し、起爆するタイミングを伺っていた。
空良が起爆スイッチを押すタイミングは、真友達が入場し、ライブが始まった瞬間。
いくら真友が天才であろうと、ライブに集中しながら、突如爆発した爆弾に瞬時に対応するのは不可能だ。
それに、爆弾を置く位置も考え、観客席に瓦礫が落ちないように計算して、観客に被害が及ばない場所に爆弾を設置した。
準備は万全だ。
丁度かかってきた電話の着信ボタンをタップし、スピーカーを耳にあてる。
『準備は出来ましたね?』
「うん」
空良は頷く。
『では、爆弾の回収を始めなさい』
寿奈達が参加せず、真友達が歌い終えれば、起爆する必要はない。
真友から告げられた作戦だ。
だが空良は、回収を始めない。
彼女達の歌が始まると同時――空良は起爆スイッチを押した。
ドガン――と設置された爆弾全てが爆破する音が響く。
爆弾によって破壊された壁や天井が瓦礫と化して、ステージに降り注ぐのが、遠くから垣間見えた。
予想通り、真友達は瓦礫を躱し、雪崩が収まると同時にその上に立っていた。
見届けた空良は、観客席の見えない位置から駆け出して、真友に叫ぶ。
「私の――いや、私達の勝ちだ」




