ガンルダーガーオークション2
思いの外、重たい回になってしまいました(´・ω・`)
オークション、主人公売られる側ですので。
しかし、この作品の全体的な作風は明るい感じです。
ガシャンッ
「んんー!!」
はい、また檻にぶち込まれました。……乱暴に。女の子の扱い方てめぇら知らねぇのか!?
いや、もしかしてさっきの部屋自体、監禁部屋みたいな所だったのかも知れないけどさ。
ガラガラガラ
多分、今檻ごと運ばれてる。
……お尻がっ!お尻が痛いよ!
乱暴にゴリラ男達が運ぶから、檻がガッタガッタ揺れて、一瞬宙にお尻が浮いてガンガンって固い鉄の檻に打ち付けられてるんだけど!
もうコレ、一種の拷問だよ?
ガラガラ言ってるとこからみて、ローラー付きの台車かなんかで運んでるんだろう。
……魔法とかで運べよ!!あー、それとも何?君達クズは魔法を使えないのかなぁ?
っはー、マジでこいつらいつか同じ目に……仕返ししてやるっ!
「おらよ」
「はい」
あ、今私、ゴリラ男達からなんか女の人に渡されたみたいです。
これで、漫画とかでよく見るあのシーン(オークションシーン)になっちゃえるわけなのか。
つーか、こういう会場でやるオークションが本当にあるとも知らなかったよ……。Yahoo!オークションぐらいしか知らないもん、私。せいぜい空想の中だけだと……。
しかも、今私がいる状況は『闇』オークションな上、『品物』の方なワケだからなぁ……。
私の脳裏には諦めと絶望が浮かんでは消えている。そして、絶えず考えるのは2割ぐらいが怒りで5割ぐらいが恐怖であった。指先が細かく震える。
そして、揺るがぬ疑問……。
(なんで、なんでこんなこと出来るのかなぁ……)
「「続きましての品、今回の《目玉商品》でございます!!」」
ウオオオオ、という一段と大きい歓声が会場を包み込む。……超目障り。うるせぇ。
「「では、早速その麗しい姿を御覧頂きましょう!」」
ふわり
檻が浮いた。どうやら女の人の魔法らしい。魔法って、何でも出来るんだね。無理矢理でも。
そして、私の抵抗は虚しく終わりを告げた。
目隠しされていても何となく分かる明るい方へ連れていかれる。
「「さぁ!本日の目玉商品、《伝説の天獣人》と言われる奇跡の銀毛猫です!」」
彼女は眩しい舞台の上に立たされた。
檻の外から白い手が伸びてきて、目隠しと口に詰め込まれていた布を取る。
(眩しっ……)
私の視界は一気に明るくなった。今まで暗闇だったせいか、目は光にまだ慣れていなくて、目を思わずつむる。
……次の瞬間、眩しく光るスポットライトが彼女を照らし出した。
(……!??)
加減を知らない眩しい光のせいで、思わず目を細めてしまうが、それでも分かる。いや、分かってしまう。
沢山の人が、一人残らず私に痛いほどの視線を送っている。
「……ッ!!」
頭の先からつま先まで、まるで電流が走るように思わず身震いが起こる。背筋が凍ったような感覚に見舞われ、私は全身に狂気を感じた。
「「暗闇に光る大きな銀目、桃色に潤んだ唇、雪のように白い陶器のような肌に長い睫毛。容姿だけでも商品としての価値は余るほどありますが、それだけではありません。
有り得ないと思われる方も少なからずいることでしょう。
しかし、ご覧の通り彼女の耳は髪は!!《天獣人》が受け継ぐと言われる、輝く銀毛なのです!!」」
彼女は、一種の放心状態となっていた。マイクの声などまるで耳に入らない。彼女を見つめる目が、あまりにも冷酷で非情な目をしていたからだ。
黒くて……だけど底が無い、人間の欲望……
(体が……動かない)
「「そして、古くから我々に伝承されてきた銀毛猫が表すもの……それは、不老不死でございます!」」
――フロウフシ?
不老不死本来の意味なんて頭が混乱してて全く分からないし考えられない。
なのに何故だか、その単語を聞いた瞬間衝動的に『悲しい』という思いが頭を過ぎった。そして、ツー、と得体の知れない何かが目から流れた落ちた。
「「伝達に依りますと、彼女を捕獲する際にC級のものが水弾魔法で右頬に傷を負わせた、とあります。
C級の者の水弾魔法、魔法を使わない一般人ならば避けるのも無理でしょうが、彼女は持って生まれたその眼を使い、軽々と水弾を避け、致命傷を防ぎました。
ですが、頬に軽い傷を負いました。が、彼女はそれをなんとたったの数分で治しました。
実際に見たものによると、気を失った彼女の頬から白く淡い光が溢れ、消える頃には完全に治っていたと言います。
そう、治癒魔法、それが銀毛猫の最も得意とする魔法なのです!!」」
「え……と?え?なにこれ……?」
膝の上に垂れた液体が涙だと気付くのに、大分時間がかかった。
「「それでは言葉で《天獣人》の能力を説明するより、実際に見ていただきましょう!」」
「はっーはっ……」
檻がまた浮いた。
体は動かないのに、冷や汗は後を絶たない。呼吸は乱れ、手が震えていた。心臓はなお大きく鳴る。
さっきまで耳だけの情報だけだったからあんなに落ち着いていられたのだろうか、実際自分の目で見るこの景色は、胸を締め付け潰すような圧迫感があった。さっきとはまるで違う、そう
――狂気
……怖い怖い!!
全てを受け入れた心臓は張り裂けんばかりの呼吸を繰り返した。
――この世界は……狂気に溢れている……
――いやだ!!私はそんなこと望んでない!私は……私は……こんなことをするために生まれてきたんじゃない!
「……え」
何今の?一瞬、頭の隅になにかが横切った。
私の考えでは無い、何かが。
(誰?)
「「皆様、ステージ右方面にご注目下さい!!」」
――水槽。目の前に迫るは水がなみなみと入った大きな水槽だ。
私が入っている檻は、その水槽に真っすぐ向かっていってる。
(まさか)
頭を埋め尽くす感情、それは恐怖……
「い……やだ」
頬を伝うものが涙なのか冷や汗なのかもう分からない。ポタポタ垂れるそれは、精一杯の抵抗だった。
「「ではいきますよー、秒読み3」」
「やだ」
「「2」」
「助け……」
「「1」」
「ガボッ……!!」
容赦無く、檻は水底へと沈められた。
頭が一気に真っ白になり、何も考えられなくなる。
手足の枷は藻掻くことさえ許してくれなかった。
(苦しい……苦しい……誰か……助けて)
揺らぐ水中から見た世界は、黒く、暗く。
そして何も映してなかった……。
どうでしたか?ここまで読んで下さり、本当にありがとうございます。
感想を書いたり、ポイントを入れると、単純な作者(私)を物凄く喜ばすことが出来ます。
あ、別に喜ばしたくなんかねーよ、って方は良いです。