表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/2

1「50000年」

新作です。よろしくお願いします!

2027年6月14日に第1話、15日に第2話を投稿します。


あと、たった数分だ。

それで、あの人たちのところに戻れる。

ただ、楽しみだ。

ただ、達成感で満たされる。

ただ、許している。


――ただ、愛している。


現実、数分前。

体感、50000年前。


俺……アクトは、冒険者パーティから追放されている最中だった。


ダンジョン探索中に。


「だから、なんでレベル15なのにそんなつええんだよ ! オレらと変わんねえじゃん!オレら45だぞ !  ズルだ ! 絶対に ! フェイクとか使ってんだろ!ってことで追放だ ! どっかで死ね ! 」


と、俺はこの自他共に認める顔しか取り柄のない男、ビリティさんに問い詰められていたのだ。


「頼む、追放だけは辞めてくれ。というか、前も言っただろう。俺は1レベルに必要な経験値が平均の2倍のかわり、伸びるステータスが3倍だと。ギルドで出してもらえる詳細ステータス表にも書いていないが、そういう体質なんだ ! 」


何とか、必死に説明する。

実際、俺は戦闘で成果を出しているし、ステータス画面も見せた。

納得していた瞬間もあったじゃないか。

だが、


「……っど、どうだかな。大体、その体質にいつ気づいたんだよ ! 」


「……幼い頃、同年代の子に許可をもらって、いろいろ確かめた。」


「だとしても、だ。レベル15のやつがいるってさ、印象マジで悪くなるってずーっと思ってた。出てけよ ! 」


なぜ今なんだ。分かる、パーティの評価は冒険者の世界で大事だから、少しでも不安要素を消したいのはわかるけれど。


すると、ビリティさんの横にいる、エルフのエールさんが、


「エフ ! エフ ! 」


と笑いながら、細長いツインテールの金髪を揺らしながら言ってきた。

エールさんは「エ」と「ル」と「フ」しか話せないのだ。


今のはたぶん、俺の実力が冒険者Fランクくらいしかない、と言っているのだろう。


戦闘技術、魔法技術共に無い方の俺だが、さすがにFランクではない。


その横にいるヒメさんも、ビリティに向かって頷いている。ローブから、揺れる水色の髪が見えた。


「なんで5年この件についてずっと納得してくれてたのに、今更今追放なんて…… ! 」


俺は、ホントに信じられなかった。信じたくなかった。

皆は俺よりもずっと賢くて、第三者からもいいパーティーと言われていたのに。


「ちっ、うるせぇ ! お前の体質がホントなら、印象が悪い。ウソなら、そんな事するやつ信じらんねぇ。どっちにしろお前は追放なんだよ ! 」


「……待ってくれ ! 」


去っていく皆を無意識に身体が追う。

昔は、皆レベル15、俺だけ5なのに、パーティに誘ってくれたじゃないか。

印象悪いだろう、済まないと言った時、「大丈夫」と返してくれたじゃないか。

信じて、くれたじゃないか。


その瞬間、振り返ったビリティさんに、突き飛ばされた。

いつも大剣を持っている彼の突き飛ばしは、ひどく強かった。


「痛っ」


尻もちをついた瞬間、俺の下にある土が消えた。

落とし穴、だったのか。


「あ……も、もし上がってこれて、強くなってたら、パーティに戻してやるよ!ハハッ!」


なんて、言葉が聞こえた。


落ちた先は、針でもマグマでもなく、白い、白い部屋だった。


「ここ……は?」


すると、頭のなかに何かが流れ込んでくる。


『この部屋は、レベル9999になるまで出られません』


とても美しいが、何歳くらいかも分からない、不気味な声だった。


「……は?レベル9999って、今まで聞いたこともないぞ!神獣でもレベル5000だというのに……そもそもどうやって、」


驚きが、そのまま口から出る。


『あなたに、1日1経験値をあたえます。寿命がなくなれば死にますが、生理現象は起こりません。元の場所に戻った時、時間は数分しか経っていません。では、ご武運を。』


今度は、驚きすら出ない。

何年、待てばいいのか。

俺は、今レベル15で、あと9984、とすると、必要な経験値は、平均――1000万。

で、俺、は……2000万、か。


何日、いや、何年。

焦りつつ、計算してみれば、約50000年。


……死ぬ。

確実に。

エールさんみたいに長寿ではないし、寿命を伸ばす魔法とかもない。


取り敢えず出せる限りの力で白い壁を殴るが、びくともしない。


白く、己以外なにもない。

こんな空間では、俺は、人は。


「だ、誰か」


助けて、と言っても来るわけがないし、聞こえていたとしても助けてくれるとは思えない。


というかそんなに攻略難易度高くないってギルドの人も言ってたけど、ここはずっと隠されてきたのか?

ここが明らかになっていれば、エルフの修行場とかに使うため占拠されたりしてそうだし、なによりギルドで頼んでいい依頼じゃない。

 なら何故、俺が。


俺は確かに、潔白な人間ではない。

だが謝罪と感謝を言うべき場では言って、周りの人もよくやっている――と言えば聞こえは悪いが一般的な失敗をして、許されてきて、平均より少し強め、でもホントの強さの前では塵芥と化す、いたって普通の、普通という概念に恵まれた人生を送ってきたつもりだ。


あの時、追放されそうな時、謝るべきだったのか。

理不尽でも謝らなくてはならない時もあるが、……そもそもあれは理不尽だったのか?


俺が勝手に、そう思っているだけか?


いやでも今まで大丈夫で、今日急にあれだったからなあ。


……もはや悪い悪くないの話ではない。


たった一言言えるのは、俺はこれから死ぬまで、、この白い部屋で、一人ということだ。


「……はは、いや、だ。」


身体は痛くない、が、心が割れていく。


ただ呆然として、突然、身体が一瞬ほんのりあたたかくなった、気がする。


経験値が1、与えられたのだろう。

これを、あと、何日。


そこからは、地獄だった。

自分以外いない部屋で、みっともなくわめき、発狂したり、した。


5年くらい、経ったのだろう。

レベルが一つ上がったと、一瞬ステータス画面が出る。


「うわあああああ!なんだ、こ、こわ、やめ」


ろれつも回らず、幼子のように怯える私は、さぞ滑稽だったことだろう。


しかし、それもすぐ終わった。

スキルに、【精神安定】が追加されたからだ。


割れた心が静かになって、直され固定されるのがわかる。

苦しいほど、頭がまともになった。


スキルはOFFにできるが、するのが怖かった。

ふつうなら、ちょいレアスキルだやったー、となっただろうに。



 

魔法の研究でも、と思ったが、研究できるレベルにはほど遠い。


とりあえず、練習することにした。


これがなかなか楽しい。

レベルアップで手に入れた魔法も含め、結構な時間稼ぎになった。


最初あたりに思いついていればよかった。したらもっと心のダメージが少なかったとおもう。


問題は、練習にも限界が来る、ということだった。

具体的に言えば、10年で。


スキル時間にも飽きて、いや、訓練しようと思えば伸ばすところしかないよな、とも思ったから、持っていた短剣の練習をした。


鍛錬に終わりはなく、そこそこ楽しく、かなり強くなって、健康的に老いることができた。


楽しかった。

そう思い、アクト・オンディーナ、98歳、レベル30は、死――


レベルが、上がった。


次のスキルは、 【不老不死】だそうだ。


あと49922年、確定した。


【精神安定】が効かないほど、心が荒れた。

若返った肌が、気持ち悪かった。


狂って、鍛錬してを繰り返すうち、狂う時間が短くなった。


どうしようもない理不尽に、原因となったあの人たちに、怒った。


でたら、真っ先に復讐してやると思った。


怒って、疲れて穏やかに暮らしたいと思うのを繰り返すうち、怒りが少なくなった。


そして、レベル3333――ステータス的には9999になった時にもらった【神の証明たる全知】にて、俺は


この■は、■■であった。


という、ただ単純な答えを手に入れ、皆を許した。


【神の証明たる全知】を読んでいたら、もう49999年と364日、23時間56分38秒だ。


レベル9999、ステータスにしてレベル29997。


焦ることはない。

あと、たった数分だ。

それで、あの人たちのところに戻れる。

ただ、楽しみだ。

ただ、達成感で満たされる。

ただ、許している。


――ただ、愛している。

もし面白ければ、ブックマークや評価をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ