第43話【元の世界への思い入れ】
3階層まで降りてきたが特に目立った変化はなく、ゴブリンを倒して下るの繰り返しであった。ゴブリンが上位種に変化したするのはもっと下の階層からなのだろうか。
「…この流れだと上位種のホブゴブリンかゴブリンキングがフロアボスかもしれないな。3人ともポーションの在庫はまだあるか?」
「途中で一本飲んだだけでまだ余裕あるぞ?つーことは10階層以降は魔物が変わるのか?」
「そこは分からへん。ゴブリンやホブゴブリンがダンジョン魔物として出でくるか新しい魔物に変わるかは行ってみん事にはなぁ」
「ゲームとかだと当たり前だけど、こうやって実際に入るとかなり気を付けなきゃ行けない事いっぱいあるよね。ゲームとかならクリアするまで進んでご飯とか寝床とか気にしなくていいし…」
高城のいう通りだ。ゲームであれば、そういった心配をする必要もない。これは現実で起こっている事だ。異世界で冒険者をするという事は命がけだ。
だが、本城はそれでもこちらの世界のが向こうの世界よりもマシだと口に出した。
元の世界では、こういったワクワク感もなければ、社会に出てもたいした希望もなかったし持ってなかったと口にした。大学に進学して少し楽しい思いはできたと思うが、実際に就活して働いて幸せになれる姿を想像できなかったという。
せめて学生の時は楽しかったと言えるように悔いのないように楽しんでいた。それは高城も九条も同じで家族とは反りが合わなかったというのだ。
高城に至っては部活動をやらしてもらう対価として家の事をやっていた為、部活で活躍しても家族から認めてもらえる事もなかったというのだ。九条に至っては家柄で丁寧な口調や女らしいを求められていた為に、家では窮屈な想いをしていたらしい。
3人とも家族に会いたいかと訊ねると、お互いに帰りたくないと即答した。
俺自身も別に魔王倒してまで元の世界に拘る理由もない。もしかしたら勇者適正が低いのは、そういった元の世界へ戻りたいという意識の差が反映されていたのかもしれない。
「まぁ、その辺は良いやん?今はみんなで楽しくやれとるわけやしな~」
「だよなぁ。本格的なダンジョンでも強ぇボスでも丈が何かやってくれそうだしな!アタシら運が良いよなぁ」
「俺はこの世界での幸運はもう使い果たしたレベルだと思ってる。美女三人が妻で屋敷に使用人持ちなんて前の世界じゃ考えられん…」
「だよねぇ。あ、階段あったよ!やっぱり一本道なのかな?」
話しながらもキッチリと冒険者として魔物は屠り辺りの警戒や罠の有無も確認したが、それらしい物は見た当たらない。ただ下の階層に降りれば真っ正面から来るゴブリンの数が増えてくるだけだ。
それを繰り返し、10階層に降りると目の前には巨大な扉があった。おそらくはフロアボスの部屋なのだろう。
他に魔物の気配もない。ダンジョンの魔物は何故か階段には出現しない。そういう造りになっているのだろうか。
「どうする?少し休むか?多分10階層がこんな感じだと次に安全に休めるのは20階層だと思うが…」
「取りあえずフロアボス倒して20階層まで突っ切ろうぜ?んで、休んで20階層のフロアボス倒して30階層まで行けば良くね?」
「まだ回復魔法も使っとらへんし、マナポーションも余裕あるし、精神的にも余裕あるうちに進めるだけ進んだ方が得やないか?ウチは綾香に賛成やな」
「私も!だってゴブリンのドロップアイテム同じだもん!そろそろ違う魔物倒したい!」
高城のいう通り、ゴブリンのドロップアイテムは革の鎧か短剣、後はたまに小さな魔石を落とすぐらいでハッキリいってショボい。これならポーションの美容品を売った時に貰える金額のが大きい。
折角本格的なダンジョンなのだから、もう少し売れそうな物か使えそうな物が欲しいところだ。
20階層までは連戦続きになることを再度使えると三人とも頷いた。フロアボスが待ち構える扉を開くと2メートルはあるであろう大型で体型は肥満気味なゴブリンが棍棒を片手に待ち構えていた。
すると、本城が誰かに似ているとじっとゴブリンを見つめた。そして思い出したようだ。
「そうだ!アイツだ!盗撮教師の長面川にツラ似てんだ!!」
「長面川って知らねぇけど、うちの教師だったのか?」
「うん。学年は違ったけどね?去年の夏に女子更衣室にカメラ仕掛けててそれがバレて首になったの」
「偉そうな事をいうわりにムカつくオッサン教師やったわ。丈くんウチらにコイツは任せてくるか?」
何と不運なゴブリンなのだろうと哀れんだ。
前の世界の盗撮教師に面が似ていると本城に大盾で殴り飛ばされ、九条のモーニングスターで片腕を潰されて持っていた棍棒を高城が奪い、3人でタコ殴りにされていた。
別にあのゴブリンが盗撮した訳でないが『ただ似ている』という理由でボコボコにされ倒されてしまった。
ドロップ品も高城が使っていた棍棒のみで宝箱が現れること無く、次に続く階段が後方で開いた。3人は「まぁ、長面川だしたいしたもんは持ってないだろう」と前の世界で殴れなかった鬱憤を晴らせてスッキリした表情をこちらに見せた。この3人を怒らせないようにしようと心の中で誓った。
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