第44話【女神からの試練】
11階層からは犬の顔に人間の身体をしたコボルトという魔物が洞窟内に10匹程纏まっていた。手には長剣・槍・石斧・棍棒と様々な武器を持っている。
コボルト達はゴブリン同様に鼻が利く魔物である為、匂いに気が付くとこちらに向かって犬の低い唸り声を出して威嚇してきた。
1匹が遠吠えをすると、それを合図にこちらに襲い掛かってくる。
ゴブリンよりも少し大きく犬のように素早いが、コボルトが持っている武器はその素早さを活かせる代物ではない。
飛び掛かり、その勢いで手に持っている武器を振り下ろしてきたが、本城が大盾で防ぎカウンターを決めて洞窟の壁に激突するコボルト達。
壁に当たらず倒しきれなかったコボルトを俺が鎌で斬り裂くと手に持っていた武器と毛がドロップアイテムとして現れた。
「コボルトの毛って売れるのか…?」
「分からん。そもそもダンジョン産の物が大体いくらで何がどうなるんか把握できとらんしな…」
「取りあえず持って帰れば良くねぇか?」
「ドロップアイテムだし、何かになるんだよ」
トレジャーボックスのおかげで素材を置いていく事をしなくて良いため、取りあえずは一旦持って帰って冒険者ギルドで訊いてみるのが確実だろうと結論を出して先を進んだ。
11階層から14階層まではコボルトが5匹から8匹と数は増えたがそこまで強くはなかった。15階層に続く階段を降りると巨大な扉がありフロアボスの部屋にたどり着いてしまった。
まだ15階層なのにフロアボスなのは流石に早すぎると九条と顔を見合わせた。エルドラについて調べた時にダンジョンについても調べたが、10階層につき1匹フロアボスがいるとされている。
たった5階層でフロアボスの部屋があるなど本には載っていなかったし、冒険者ギルドでも聞いたことがない。
九条とどうするか相談してると、高城が取りあえず休憩を早める提案した。
本城もそれを承諾し、それぞれがその場に座り込んで一息つく。その間にこれまでの流れから推測を立てる。
おそらくは中にはコボルトキングがいるのは間違えない。火山地帯には生息していないゴブリンも洞窟ならば生息可能だ。
火山地帯で知られている魔物は溶岩バジリスクとロックタイタス。そしてドゲッシーとダンゴロン。たまに変異種もいるがホノルの冒険者ギルドで討伐依頼や採集依頼がある魔物はこの辺りである。
ゴブリン、コボルトなら次はオークだろうか。なら次は? ガララスから貰った過去の目撃例にはタウという二足歩行の牛。ミノタウロスのような魔物が断崖の草原で目撃されている。
だが、ここ数年目撃例が無くなったと書かれていたのを思い出した。
確かタウは牛と同じで草食である筈だ。わざわざ火山地帯にくる必要があるのか? もし、推測が正しければの話だ。
ここで憶測で物を言うのは不安を煽ってしまうだけになるだろう。顔を上げると3人がじっと見つめていた。
「丈くん。何となくここのダンジョンボスわかってきたたんやろ?話してくれへんか?先にそうかもしれないって分かってた方がウチらも覚悟が決まりやすいしな」
「…分かった。憶測だがこの扉の向こうにはコボルトキングいる。そして次の階層はオークになって20階層はオークキング。もしこの流れで行くと、その後はタウと戦うことになる」
「タウってなんだよ?魔物なのか?」
「…前の世界でいうミノタウロスだな。こっちだとタウって牛がヒト型の魔物になったヤツをタウって呼んでるらしい。コボルトとオークも犬や豚の魔物がヒト型になった魔物で同じ進化をしている。そして、ゴブリンはその魔物に従う傾向がある。多分ここのダンジョンボスはタウキング。エルドラのダンジョンでも討伐実数が少ない怪物だ…」
タウは体長が3メートル程で巨大な石斧と突進に気を付ければ差ほどたいして苦戦する魔物ではない。熟練の冒険者パーティーであれば連携して倒すことはできる。
だが、その王であるタウキングは8メートルあり、石斧も身体に合わせてでかくなる。問題なのは異常なタフさだ。
普通のタウであれば斬撃や魔法攻撃は効果があるが、タウキングは発達した筋肉が鋼鉄並みに硬く刃が通らず、魔法攻撃にも耐性を持っている為【上級冒険者殺し】の異名がエルドラではつけられている。
少なくともエルドラの高難易ダンジョンであれば中層と呼ばれる30階層のフロアボスとして現れ、冒険者達を亡き者にするダンジョンの番人と呼ばれていただろう。
実際にタウキングがいるダンジョン攻略を諦めて別のダンジョン攻略に変える冒険者も少なくない。できるなら戦わずに避けてやり過ごすのが良い怪物なのだ。
それがタウキングという存在だ。ハッキリいって弱点らしい情報がないためにどうやったら倒せるのか全く想像がつかない怪物と戦わなければならない最悪の憶測である。
個人的にはハズレていて欲しい。だが、本城は話を聞いていて納得した様子だった。
「なるほどなぁ。頭ん中できこえてた声は幻聴じゃなかったのか…」
「えっ?綾香ちゃん何か声が聴こえたの?」
「最初は気のせいだと思ってんだけどよ?下に降りる度にハッキリと聴こえるようになってな。『逃げずに立ち向かえ、仲間を護りし者よ』って女の声がな。確か【守護者の試練】っていってたかな?」
本城が腕組みをして口に出した【守護者の試練】がここのダンジョンの名前なのだろう。おそらくはバーグの言っていた女神の加護。本城は大盾使いとして女神に見守られており、加護を与えるかどうか見定められているのだろう。
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