第30話【旅立ち前のトラブル(中編②)】
この辺りは北の隣国・エルドル王国と国境が近いために魔物が発生しても対処しにくい場所である。幾ら交友国とはいえ領土を踏み越えるのは色々と面倒事が付きものだ。
そこで国境を気にせず魔物討伐に向かえるのが冒険者である。少なくともBランクまでのしあがった実績もあるが、だからといって油断すれば簡単に命を落としてしまう。
先行しながらオークの集落を探していると罠の類いがあった。手を横に出して本城達を止めて手ごろな岩を投げて転がすと落ち葉で隠されていた落とし穴が姿を現した。
「…ゴブリンもいるな。オークは略奪しかできん」
「先ずは場所特定しないとな…罠があるからこの近辺…」
本城の唇に人差し指を当て口を閉じされると後ろのメンバーにも黙っているようにジェスチャーした。近くの茂みに隠れるよ後方のメンバーも集まってきた。
すると、落とし穴の周りにゴブリン達が集まってきた。数は五匹と多くないがそのうちの一匹がグレイウルフを手懐けていた。
本城にハンドサインを送ると、九条と高城にも伝わった。鎌を取り出してグレイウルフに乗ったゴブリンに奇襲を掛けて首を切り飛ばし、そのままグレイウルフを落とし穴に落とした。残りのゴブリンは俺に武器を構えて来たが背後から九条がモーニングスターの鉄球で三匹頭をかち割ると、残った一匹は一目散に逃げ出した。
「ちょ、ちょっと一匹逃げちゃったわよ!?良いの!?」
「構わない。これで集落の場所がわかる。このメンバーでは奇襲は出来ないから正面突破で行くしかない」
「落とし穴に落としたグレイウルフはどうするのですか?」
「放置しても良いがレベルアップの為に倒しても良い。脚の速い斥候二人と護衛戦士を三人。レイドリス王国と冒険者ギルドに報告に行ってくれるか?」
「何故ですか?全員で攻め込んでからのが勝算が高いのでは?」
と、西城に問われた。
確かにその通りであるがゴブリンがグレイウルフを手懐けている所を見ると食い物に余裕がある集落なのだろう。 そうなってくると孕み袋にされている女性は二桁近い数は居るだろう。
そうなってくるとエルドル王国への連絡や冒険者ギルドから荷台などを持ってきて貰う必要があるからだと話す。
そして、群れにオークキングが誕生して縄張りを広げている可能性が高くなってきた。
ここからは総力戦になる為にパーティーごとに集まって奇襲を掛ける。
総指揮官はダリウスで他のパーティーリーダーは各自が目の前の敵に集中し俺達は全体のサポートをする方向性で考えていると話すと、西城と東条は納得したが秋野は不安だと口に出した。
これから先、勇者になる者が出てきた際にそんな悠長な事はいっていられない。殺るか殺られるかのどちらかだと伝えると唾を呑み込んで覚悟を決めたようだ。
◇◆◇
「…見つけた。オークとゴブリンの集落だ」
崖を背に藁で出来た集落が四つと奥には洞窟が見えた。
おそらくは連れ去られた女性兵士は藁で作られた集落の四つか奥の洞窟に捕らえられているのだろう。
ここからは総力戦になる為にパーティーごとに好きに戦って良いと伝えた。
実際問題、クラスメイト達が魔物相手にどこまで戦えて何ができるか知らないという理由もあるが、今後魔物相手に戦うということがどういう事なのか経験させておく必要があると思ったからだ。
何よりもクラスメイト達が一番戦いやすい魔物であるからだ。早速西城と東条のパーティーが奇襲を仕掛けた。だが、既に先ほど逃がしたゴブリンから報告を受けていた為にゴブリンやオークは棍棒や小型のナイフや鉈など手に持っている。
オークの武器は集落を作る際に倒した大木を岩や爪等で削った棍棒だ。ゴブリンの中にも棍棒を持っているものも多い。
はっきり言ってしまえ西城と東条のパーティーは個の力は強いがパーティーしては全くと言って良いほど機能していない。現に魔法使いはゴブリンに魔法を撃った後に他のゴブリンに襲われたり、斥候はゴブリンに囲まれてしまい仲間の戦士に助けて貰っている。
何よりも問題なのがパーティーリーダーの二人が仲間を見ていない。秋野のパーティーは陣形を取りお互いに背中を任せて戦えている為に善戦していたが、二足歩行の二メートルはある豚の魔物・オークの出現によりリーダーの秋野が弱腰になってしまった。
「はぁ、仕方ねぇな…。桃華はチアリーダーに変身して支援魔法を頼む。梨沙は桃華を護りながら戦えそうにないヤツを後方に誘導してくれ。ダリウスさんと綾香は俺と前の連中のサポートだ」
三人は指示を出すと了解と声を揃えると指示通りに動いてくれた。
ダリウスも鞘から剣を抜き、オークを一刀両断した。
全線で苦戦していた西城と東条はオーク二匹とゴブリン十匹に囲まれてしまっていた。仕方ないと両手の鎌を握り締めてゴブリンから始末していく。すると、近くのオークが棍棒を振り上げてきたのでゴブリンが集まってる場所に誘導してゴブリンを仕留めさせた。
「俺がオークの隙を作ってやるから二匹とも仕留めろよ?」
「わ、分かりましたわ…」
「や、やってやろうじゃねぇか!」
二人の声は震えていたが隣にいるライバルには負けたくないと自分自身を奮い立たせた。早速オークへゆっくりと近づき、棍棒を振り上げた瞬間に股の間をスライディングして背後に回り背中を鎌で斬り着けると、もう一匹のオークが雄叫びをあげながらこちらに突進してきた。
西城と東条は背中を見せたオークと背中を斬られて弱り、地面に跪いていたオークを見事に倒してみせた。
だが、こちらが優勢になり始めると一匹のゴブリンが洞窟に入っていくとゴブリンの叫び声が洞窟内から響いていた。
ドスンッドスンッと重い脚が近づいてくる。そして、洞窟内にいた一際デカイオーク。おそらくはこの集落の頭であろうオークキングが姿を現したのであった。
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