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第29話【旅立ち前のトラブル(中編①)】



 メイスンは俺が稼いだ金以外は受けとならないとわかると、九条に結婚資金にしろを簡単に渡してしまった。

 部屋からマルシェと出て確認したら金貨が三十枚以上は入っていた。

 

  九条は腰につけたポーチにし舞い込み、ダリウスがクラスメイト達の元に案内してくれるそうで着いていく事になった。

 

 

 レイドリス城の裏にある兵士達の訓練場所でそれぞれパーティーごとに教官がつき訓練をしていた。

 

 九条達に気が付いて訓練の手を止め、三人の元によってきたクラスメイトの顔と名前の大半を覚えていない俺には関係のないため、近くの壁を背に座り込みその様子を眺めていた。

 

 すると、ダリウス騎士団長が横に来て声を掛けてきた。

 

「君は良いのか? あ、いや、すまない。あの現場にいたから何となくは察しているが…」

 

「まぁ、前の世界でも関わりはないので思い入れがないというか、思い出がないので…」

 

 俺達がマリアスの迷宮を踏破した事でクラスメイト達の当面の目標はマリアスの迷宮を攻略できるまで成長する事だそうだ。その為にマリアスの迷宮のボスを教えて欲しいというのだ。

 

 マリアスのダンジョンはゴリラ型の巨大ゴーレムであると伝えるとダリウスはため息をついた。

 

 どうにも大魔導士・マリアスはダリウスの叔父に当たる人でかなりのくせ者だったようだ。

 

 そういえば、ダリウスの剣に力を与えていたのはその為かと納得してしまった。


 ダリウスは建前は騎士団長であるが、隣国であるエルドル王国に本来の騎士団長がレイドリス軍隊長として派遣されてしまった為に副団長のダリウスがそのまま昇格したらしいのだ。

 

 何故、俺にそんな話をするのか訊ねるとマルシェ女王を護れるか不安であるからだというのだ。

 

  護れるか不安ならば強くなるしかないではと返答した。だが、ダリウス自身もレベルが三十後半になってから上がらない為にその不安が拭いきれないというのだ。

 

現に一人兵士が逃げ出してしまったというのだ。自分が不甲斐ないばかりに逃げ出してしまったのだろうとため息をついた。気になり、詳しく話を訊くと夜の巡回場所に兜が地面に落ちていたというのだ。

 

  逃げ出すのに兜を外す必要があるのかと訊ねると兜にはレイドリス王国の紋章が入っている為にそのまま魔王領土の最前線の兵士として送られてしまう為に兜だけを捨てていく兵士もたまにいるそうだ。

 

 場所を訊くと、丁度九条達が話してる場所から見える角におちていたという。立ち上がりその場所に走って向かった事に気付いた本城が振り返り後を追ってきた為にクラスメイト達も着いてきた。

 

 現場にたどり着くと木の杭で作られた策が張り巡らされていただけだ。柵を飛び越えて手掛かりを探していると金髪の長い髪と血痕を発見した。

 

  屈み込み地面を良く見ると魔物の足跡がチラホラあった。

 

 これは逃亡したんじゃない。連れ去られたのだ。ある程度調べ終わった時に本城達とクラスメイト達がやってきた。ダリウスに確認をする為に話し掛ける。

 

「ダリウスさん、その兵士って女性だったんじゃないか?」

 

「な、何故それがわかったんだ…?」

 

「ここに金髪の長い髪が散乱していた。恐らくここで兜を剥がされたんだろうな。連れ去られた可能性が高い」

 

 腰につけたショルダーから鎌と出すと九条と本城も武器を取り出した。


 目で合図を出して手掛かりを元に森の中に入っていく。

 

  「…斥候のヤツちょっとこっちに来てみろ」

 

  「な、何だよ?俺達何かやったか?」


  一人の男子生徒がそう返した来たので「いや、違う」と答えた。鎌で指した場所には無理矢理剥がされた鎧や中に着用していたであろう衣服が破られて散乱している状態だ。

 

 斥候のクラスメイト達は一歩引いてしまっていた。

 

「ここで問題だ。今から俺達が倒す魔物は何だと思う?」

 

「い、いや、魔物だろう!?十中八九魔物だろう!?」

 

「そんなのは当たり前だ。聞いているのは『何の魔物(・・・・)が敵なのか』わかるかと聞いてるんだ…」

 

「そ、そんな事をいわれても…」

 

 …これではダメだ。斥候は敵の情報を探る役割りがある。こう言ったイレギュラーが起こった際に現場から得られた情報からある程度戦う魔物を予測できる力が必要だと教えた。

 

 ゴブリンより身体が大きくて人間の女性を連れ去る魔物はヒト型の豚の魔物オークだろう。そしてこの地面には小さな足跡がある事からオークの下にはゴブリンの群れが着いていると予測できる。

 

「綾香と俺で先行する。桃華と梨沙は後方で警戒を頼む」

 

「お、俺達はどうしたらいいんだ?」

 

「ある程度はパーティーでの役割りがあるだろ?そうだな。3パーティーのリーダーを中心に前衛に戦士と斥候を2名だせ。残りのメンバーは斥候の合図を待って後方で着いてこい。ダリウスさんは後方で指揮をお願いします」

 

「わかった。任せてくれ」


 ダリウスはそういうと後方に下がった。前衛に来たのは秋野・西城・東条の魔法戦士と安達・藤原・神谷であった。

 

 すると、西城が何が起こっているのか説明しろと言われた。あくまでも仮説で俺の世迷い言だと思って聞いた方が良いとあらかじめ伝えた。おそらくはゴブリン達にクラスメイト達は監視されていたのだろう。

 

 少なくともゴブリンやオークはあまり賢い魔物ではないが間抜けな魔物ではない。特にオークはゴブリン達を他の脅威から護ることで共存するといわれている。今回のケースはそれだろう。

 

 そして、女性兵士が一人になったところをオークとともに襲い込み、助けを叫ぶ声が届かない森の中で身ぐるみを剥いだのだろう。

 

「ですが、何故、兜をワザワザ落としていたのでしょうか?」

 

「おそらく見たんじゃないか?兵士が脱走する際に兜を地面に置いていたのをな。確かこの先はエルドル王国の国境に近い筈だ。他国の紋章入りの兜などしていれば魔王領土の最前線に送られるが持ってなければ森で迷った冒険者だと勘違いされて亡命できるとダリウス騎士団長から聞いた」

 

「それよりも敵の数は見当ついてるのか?」

 

「…出来ればハズレていて欲しい所だな。大多数か中規模なのは間違いない。だが、エルドル王国の民が何人か連れ去られて孕み袋にされている可能性も高い。そして、レイドリス王国に範囲を広めているとしたらオーク・リーダーかオーク・キングがいるかもしれん」


「オーク・リーダーかオークキングですか?」


あくまでも最悪の場合を想定しておかなければ、いざ強敵と出会(でくわ)した時にある程度覚悟して挑むことができない。要は気のもちようであると話しながら森の奥へと歩み進めた。



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