レベル159-1 新しい体制が始まります
町に常駐するレン達の方でも色々と手間がかかった。
とりあえず、興味はもってるが参加に踏み切れずにいる者達の見学。
最初にこれを片付ける事にした。
やる事そのものは大した手間ではない。
オッサンに頼んで周旋屋として声をかけてもらい、決めた日時に集まってもらう。
それから全員を連れて、実際にやってる場所まで行く。
あとは普段やってる通りに行動していく。
モンスターを倒し、解体し、町に戻る。
それらを見せればよい。
見ればどういう事をするのかが分かる。
分かれば躊躇いを消す事が出来る。
結果として、自分には無理だと去っていく者も出て来るだろう。
だが、残る者も何人かは出てくる。
それで良い。
受け入れてから去っていくよりはマシだ。
レンにおぼえてもらいたいのは、受け入れる場合のやり方と手順。
周旋屋に頼む事が増えるので、受付とのやりとりを知っておいてもらいたかった。
また、注意すべき事も知っておいてもらいたかった。
「信じすぎないようにな」
二人だけになった所でそう伝えた。
「周旋屋のオッサンはいい人だと思うけど、周旋屋の都合を優先する。
こちらの受け入れられる以上の人間を押しつけようとするかもしれない。
そういう場合は断れ」
そういう事態が起こりうるだろうとは思っていた。
周旋屋も仕事でやっている。
人手が余るようなら、その処理を考える事になる。
となれば、箸にも棒にもひっかからないような者すら押しつけてくるかもしれない。
そういう場合には断固として断るしかない。
「揉めてもいいの?」
「かまわないよ」
それも仕方ないと思う。
「最悪、周旋屋と縁を切ることになってもいい。
その時には、別の周旋屋に行くだけだ」
周旋屋は一つではない。
ここで駄目なら別の所に鞍替えすればいい。
良好な関係を続けていきたいとは思うが、それが出来ないならそれなりの態度をとるだけである。
「俺達だって、選ぶ自由はある」
そこには大きな責任が伴ってくる。
一時的であっても周旋屋との縁が切れる。
それまで得られていた特典を失うのは避けられない。
宿舎の利用や、人集めなどがこれにあたるだろう。
他にも、気づいてないだけで色々な恩恵があったかもしれない。
それを失うのは大きな損害になる。
それでも、無理を強いられる道理はない。
「だから、無理はするな」
サトシにも伝えておいた事である。
同じ事をレンも受け入れてもらいたかった。
「あと、無理して引き留めるな」
そうも伝えておく。
「新人達の中には、どうしてもやっていけない奴も出て来ると思おう。
独立して自分でやっていこうって奴も。
何かしらの事情で辞めなくちゃいけない者だって出て来るかもしれない。
そういうのが出て来たら、絶対に引き留めるな」
なるべく大勢を入れておきたいとは思うが、それも時と場合による。
「理由はどうであれ、辞めるって言うなら、もう続けるのは無理だ。
無理して引き留めても、やる気を無くしてるだろうよ。
そうなったら使い物にならない
結局、いるだけ負担になる。
だから、そうなったら素直に相手の意志を受け止めてやってくれ」
結果として一時的に人が減る事になるだろう。
それでもかまわなかった。
長い目で見れば、去る者追わずの方が利益になると思えた。
このあたりは前世の記憶による。
辞めるといっていた者を引き留めても、決して良い結果にはならなかった。
作業効率が落ちてしまい、その不満が全体に蔓延する。
一人の問題が全体に波及してしまうのだ。
そうなってからでは遅い。
「残ってくれる奴だけ大事にしてやってくれ」
一団としてやっていく上でこれは仕方がない。
出て行く者達のその後まで面倒を見る義務もいわれもない。
邪険にするわけではないが、優先すべきは一団の者達。
それが集団というものである。
「あと、駄目な奴はさっさと追い出してくれ」
これも大事だった。
「問題を起こすような奴とか。
どんだけ腕が良くてもいらないから」
犯罪行為はもとより迷惑行為も含めてである。
一緒にやっていくのが集団であるのだから、それが守れないような者を置いておくわけにはいかない。
だからこそ、迷惑行為になるような事をしでかす奴ははじき出すしかなくなる。
犯罪行為に至っては論外と言うしかない。
「少しでも疑いがあるようなら外していってくれ。
遠慮はいらない。
警告もしてやるな。
注意したって変わらないから」
むしろ逆恨みをする。
そしていざこざを起こして面倒な出来事を拡大していく。
それだったら最初から一団から外した方が手間がかからない。
「こういう事には非情になってくれ」
他の者達を守る為にも必要な措置である。
これらは規約として盛り込んでいるものであった。
事前にサトシやレン、彼らと一緒に行動する事になる一団の者達にも伝えてある。
それを再確認するようなものだった。
町にしろ、各地に村にしろ、もう任せるしかない。
手助けしようにも出来なくなる。
だからこそ繰り返し確認をしてしまう。
我ながらしつこいと思うのだが、どうしても不安になる。
「無茶や無理はしなくていいからな」
他は忘れてもそれだけはおぼえておいてもらいたい。
そうすれば、ある程度はどうにかなるものだから。
幸いというか、レンも新人を教えてきた実績がある。
それなりに上手くやってくれるだろうとは思えた。
実際、見学などはそれなりに上手く仕切ってくれている。
あとは実際にやっていって、やり方を作り上げていくしかない。
それはトオルの手の及ばない事になってしまう。
「そんな事より」
説明を終えたトオルにレンは指をつきつける。
「こんな所にいないでさっさと帰りなさいよ。
サツキが待ってるわよ」
「ああ、そうだな」
否定する要素は全く無い。
「明日には帰るよ」
「そうしてそうして。
こっちは気にしなくていいから」
ありがたい言葉である。
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