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レベル149-2 応援したい悪巧みも中にはあるかもしれません

「────って事だから遠慮する必要ないぜ」

「あのな」

 サトシからの報告にトオルは青筋をたてた。

 拳もぷるぷると震えていく。

「余計な事を……」

「いや、兄貴だって満更でもないでしょ」

 確かに悪い気はしない。

 だが、それはそれである。

 あずかり知らぬ所で話が勝手に進んでるのが気にくわない。

 事が勝手に進むのを看過したくはなかった。

「あとは本人に直接聞くといいよ」

 そんな事を満面の笑みでぬかす奴がいるのだから。

(裏がある、絶対に何か裏がある)

 何かしらの意図によるであろうこの状況がそもそも胡散臭い。

 そこにどんな企みがあるのか考えると警戒してしまう。

 実際にはそこまであくどい何かがあるわけではないが、トオルが知るよしもない。

 ただただこんな騒ぎが終息する事を願った。



 それでももう一方の当事者と顔を合わせねばならない。

 レンはともかくサツキとは仕事が一緒だ。

 お互い仕事もあるので、声をかけあう事にもなる。

 多少の気まずさがあっても、やる事はやらねばならなかった。

 幸い仕事に支障が出る事は無い。

 トオルもサツキもやるべき事を確実にこなしていっている。

 だが、お互い顔を見合わせるとどうにも照れくささが出てしまう。

 意識しないように、というのは無理なので、なるたけいつも通りを心がけるしかなかった。

 これが嫌悪感などでなかったのは幸いだっただろう。

 対立や憎悪であったら雰囲気が悪くなるところだった。



 そうしてる間にも暗躍は進む。

 盛り上がってる状況を利用し、執事やメイド長に下男といった者達とも接触を果たしていく。

 彼らもこんな状況に呆れはしてるものの、概ね好意的に受け止めてはいた。

 基本的には目出度い事であるので、全てが良い方向に収束する事を願っている。

 おかげでサトシも接触がしやすかった。

 どうにかして上手くまとまらないかというサトシの言葉に彼らも共感している。

 おかげで周囲の状況については黙認状態となっていた。

 どこか浮ついてもいる空気をただそうという気配もない。

 消極的ではあるだろうが、それはそれでありがたい協力であった。

 サトシとしては行動しやすい。



 予想外の出来事もおこる。

 拡散していく話は当然関係者の耳にも入る。

 トオルの両親が村から出てきて、事の次第を確認するという事もあった。

 村から出ることなく生涯を終える事も珍しくない村人にとって、かなり大事と言って良いだろう。

 それだけ気になってるという事である。

「で、お相手はどなただ?」

 真顔で訊ねる父に、

「どうしてこうなった」

と頭を抱えたくなった。

 更にまずい事に、それを見ていたサトシが、

「この二人ですよ、お相手は」

とサツキとレンを紹介。

 両親はサツキとレンを驚きながら見て、

「いやあ、こんなお嬢さんが」

「ありがたい話だねえ……」

と涙ぐみはじめていく。

「いや、違うから」

というトオルの制止の声も聞いてない。

「できの悪い息子だが、よろしく頼む」

「お願いだから」

 悪気はないのだろうが、本気で頭を下げる両親を、トオルは必死になっておさえこもうとした。

 サツキとレンもどう対処して良いか分からず困惑するしかなかった。

 ただ、さすがに父も相手が二人というのには賛同しかねるものがあったようだ。

「けど、トオル。

 お前、女房を二人も抱えるなんて、図に乗りすぎじゃないか?」

「だから違うって!」

 壮大な誤解をしている両親をどう説得すれば良いのか分からなかった。



 ただ、ここに来てトオルも覚悟を決めた。

 親まで出てくる始末になってしまった今回の出来事。

 もう当たり障りのない対応で済ませられない。

(やるしかねえか)

 あまり気は進まないが、サツキとレンと向かい合って話しをしようと。

 下手すると、この先上手くいかなくなるかもしれないので何となく避けていた。

 それが事態をここまで進ませてしまったかもしれない。

 相手がこの事態をどう思ってるのか。

 当事者同士で話しを進めないとどうしようもない。

 周りがどれだけ盛り上がろうと、決めるのは本人である。

 どんな形であっても沈静化させるには双方の意思の疎通と共有が必要だった。

 ただ、確認するのが怖くもある。

 もし相手が自分を嫌っていたらどうしようと。

 そうでなくても、恋愛や結婚を考えるほどの好意はなかったらと思うと悲しくなる。

 また、それを聞いてしまう事で今後の付き合い方が変わる可能性もある。

 お互い変に距離を置くようになったら今まで通りに作業が出来るかどうか。

 つとめてトオルは仕事に与える影響だけ考える事にした。

 個人的な気持ちの落ち込みは計り知れないものがあり、そちらの与える衝撃は落ち込むどころじゃ済まなくなる。

(大丈夫だよな)

 サトシ情報というあてにならない発信源からは、それほど悪い感触は得ていない。

 だが、物事が良い方向に落ち着くと思えるほどの確かな情報もない。

(もうなるようになるしかないか)

 そうやって腹をくくるのに、結構な覚悟が必要だった。

 明日は7:00に投稿予定。

 それから夕方にも投稿する予定。

 夕方の方は何時にするかまだ未定。

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