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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その7 前回とは違う新しい出来事

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レベル149-1 応援したい悪巧みも中にはあるかもしれません

「だから、いい加減腹をくくろうぜ、兄貴」

 満面の笑みを浮かべるサトシがトオルに迫った。

 一緒にいるマサル達も同様である。

 これから仕事という朝一番、トオルは早くも脱力しかけてしまった。



 言われるまでもなく考えてはいる。

 ひろまってしまった話に収拾をつけられればと。

 一時的に熱気が拡大してるだけで、今の状況が続くとは思ってない。

 そんなもののために人生を決めてしまうつもりもなかった。

 サツキやレンと上手くいくならありがたいとは思いつつも。

 ただ、周囲はそう考えてないし、一時的なものと言う程には浮ついてるというわけでもなかった。



「いいじゃん、さっさと結婚しちまえば」

 随分と乱暴な事をサトシは口にする。

「そういうわけにはいかんだろ」

「なんで?」

「生活があるんだぞ。

 俺の稼ぎで食わせていけるか」

 共働きであるなら何とかなるだろう。

 けど、子供が生まれたらそうはいかない。

 多少の蓄えがあるから少しの間はどうにかなるだろうが、先々の事を考えれば不安の方が大きい。

 妖犬を倒すようになって稼ぎは増えたが、それにしたって日当で八千銅貨に届く程度である。

 これでは日々の生活を保つ事すら難しい。

 相手が好きかどうかというのも大事だろうが、その先の事を考えないといけない。

 とても今の調子ではそこまでいくものではない。

 もっともサトシ達は、

「それくらいどうにかなるでしょ」

と気楽なもんである。

「そう簡単に言うなよ」

「いや、兄貴ならどうにか出来るでしょ」

「やるにしても、あと二年三年は先の話だ」

 人を増やし、稼げるモンスターを倒しに行けるようになる事を想定してである。

 実際にやれるかどうかも分からないし、勝算もどれほどあるか分からない。

 そんな賭けをもとにして話を進めるわけにはいかない。

 なのだが、

「だったら、とりあえず結婚しちまえばいいじゃん」

 予想外の事を言われてしまう。

「どうせそのうちやるんでしょ?

 だったら、先に結婚したって何も問題ないし」

「いや、そこまで出来てからするもんだろ」

「それまで待つ意味あるの?」

 そこが疑問ではあるらしい。

「どうせそうなるんなら、今のうちにやった方がいいじゃん」

 トオルにはない発想だった。



 確実にそうなるなら、経済的な問題は考えないで済むだろう。

 事前にある程度の事を済ませておくのは、先々を考えての行動ともいえる。

 しかしそれは、確実に達成可能であると見込んだ場合の事だ。

 実際にどうなるか分からないのに行動に出るわけにはいかなかった。

 少なくともトオルはそう考えていた。

 もちろん、生活・収入だけが理由ではない。

 一番の問題は当事者の気持ちであろう。

 そちらの方の勝算を、モンスター退治よりも更に低く見積もっている。

 少なくともトオルにとって、そこは全くの未知数である。

 期待や希望を抱く要素を見いだせないでいた。



(まあ、兄貴が煮え切らないのはいつもの事か)

 トオルと分かれて新人達の教育に向かいながら考える。

 周囲を巻き込む事は予想外に上手くいったが、それで終わるわけにはいかない。

 この機会を利用して更なる進展をさせねばならない。

 ただ、トオルを後押しするには、もう一つ強力な何かが必要だった。

(やるしかないかな……)

 考えは一つある。

 策というほどのものでもないものだった。

 ただ、サトシにはそれしか思いつかない。

 まかりまちがえば、それだけで全てが崩壊しかねない…………かもしれなかった。

 だが、他に方法を思いつかない。

(やるだけやるしかないか)

 上手くいくかどうかは分からない。

 だが、やらねば先に進まない。

 モンスター退治を続けてきた中で感じた事だった。



「で、兄貴の事はどう思ってるわけ?」

 率直にレンに直撃する。

 聞かれた方は、

「はあ?」

と言うしかなかった。

「どうしたのいったい」

「最近色々話しが出てるじゃん。

 本人はどう思ってるのか聞いてみたくて」

「あんたねえ……」

 呆れるしかない。

 もっとも、サトシがこんな調子なのはいつもの事。

 口癖のように「サツキとレンを兄貴の嫁に」は日常茶飯事だった。

 ただ、最近は周囲が盛り上がってる。

 そんな中で聞かれると、同じ言葉もいつもと違って聞こえてくる。

「そりゃ、悪いとは思ってないよ」

「まずくはないと」

「まあね」

「じゃあ、しても良いと」

「そこまではどうかな」

 具体的な話となるとさすがに考える。

 この先一緒にやっていけるかどうか。

 トオルとならそれなりに上手くやっていけるとは思えるが。

「何とも言えないよ」

「でもまあ、嫌いではないわけだ」

「そりゃそうよ。

 好きかどうかなら、好きよね」

 サトシとしてはありがたい答えであった。

「なるほどね。

 あとはサツキの方だな」

「あんた、まさか聞きに行くつもり?」

「もちろん」

 聞かずにいるわけにはいかなかった。



「というわけで、是非気持ちを!」

 サツキへの突撃取材は、仕事が終わってからになった。

 トオルがトモノリに呼ばれた瞬間を狙ったためである。

 サトシやマサルなどに囲まれたサツキは、「え、え、え、え?!」と驚いている。

 そんな事を気にもかけず、サトシはまくしたてる。

「ぶっちゃけ、兄貴はどう思う?」

「え、あ、え?」

「好きかどうかを!」

「え、え、え、ええっと……」

「素直な気持ちはどうですか?」

「その、それはあの」

「まさか嫌いってことは」

「そんな事ないから!」

 なぜだかそこだけ声が跳ね上がる。

「じゃあ、好きって事でいいの?」

「いや、でも、そういうわけじゃ……でも、嫌いって事でもなくて……」

「結婚とかになったらしちゃう?」

「…………!」

「それとも嫌?」

「…………」

「どっちか選べって言われたら?」

「……………………」

「兄貴が他の誰かとくっついてもいい?」

「…………!」

「…………なるほど」

 特に言葉はなかったが、サツキの態度でそれとなく察した。

「うん、分かった。

 それならどうにかしてみるよ」

「…………え?」

「あんがとさん、兄貴と上手くいくといいね」

「あの、ちょっと!」

 何か言おうとするサツキであるが、サトシ達はすぐにその場を去っていった。

 真っ赤になってるサツキは、その場で「あの、えっと」を繰り返していく。

 誰もいない廊下に向かって。

 続きを20:00に投稿予定。

 書き込み忘れていた。

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