レベル145-2 人の情けと助けは、時に素直に受け入れるべきなのでしょう
小屋の着工があってもやる事に変わりはない。
モンスターを倒す事も、兵士見習いの訓練をする事も。
訓練に人手が取られてるのは痛いが、これはやむを得ないものとして諦めるしかない。
それよりも、若干だが人が増やせるようになる事を喜ぶ事にしていった。
それほど大幅に増やせるわけでもないので、更に新たな小屋を設ける事を目指さねばならなかったが。
開拓開墾地での人不足もはっきりとしてきている。
やはり魔術によるモンスター除けが進まないのが大きかった。
作業はしっかりと進めているのだが、作業の速度の方が早くどうしても追いつかない。
魔術師の数による限界が来ている形だった。
それを解消するためにも、モンスターから作業員を守る者達が求められていた。
ただ、これも居住場所の問題がつきまとう。
村における収容能力の限界があるので、そちらに回す人が確保出来ない。
「そこを解消したいと思うんだが」
トモノリの相談にトオルは、
「住む場所があれば」
と答えた。
「村の方にそれがあるならどうにかなります」
「用意できればか」
「はい。
でも、すぐに出来ますか?」
「少しばかり宛がある」
意外な言葉に驚く。
「裁判の事をおぼえてるか?」
「元奥方の事ですか?」
思い出したくもないが忘れる事は出来ない。
せめてと思い『元』の部分を強調した。
「それがようやく決着がついたようでな。
こちらにある程度の損失補填が回ってくる事になった」
「朗報ですね、それだけは」
「大半は借金の返済に使うしかないがね」
それでも全額返済にはならないという。
どれだけの負債があったのか想像するのも恐ろしくなっていった。
ただ、接収した資産をトモノリの所だけに回したわけではない。
奥方の一族があちこちに行った非道の補填をするためである。
かなり広い範囲で色々やらかしていたらしく、それらに相応の補償をする事になったとか。
おかげでトモノリの所に回ってくる補填も十全とはいかなかったらしい。
それでも、負債の多くが減り、今後の返済は楽になるのだという。
少なくとも、利子の返済だけではなくなるという。
その分の余裕で小屋を一つ新たに作る事も出来るらしい。
「開拓開墾は早急に進めたいから、君が良ければすぐにでも始めるが」
「とりあえず皆に話しをしてみます」
人を増やせばその教育に手間がかかる。
まずは一団の者達にその事を話してからにしたかった。
仲間は概ね賛成をした。
反対を言う者はほとんどいない。
ただ、何時やるのかという時期の問題については色々と意見が出てきた。
なるべく早くという者もいれば、幾らか待った方が良いのではと言う者もいる。
いつ頃が最適なのかについては様々な考えが出て来た。
それをまとめるので一苦労となる。
しかし、全員が先々の事を考えてる事にトオルは安心をおぼえた。
誰もが他人事とは思ってない。
自分も当事者だという事がしっかり分かってる。
一人一人が自分の考えをもって行動してる証拠であった。
なんだかんだで話はまとまり、五月か六月以降がいいだろうとなった。
建築中の小屋が完成し、新人を受け入れて教育してる間は余裕がない。
それが一段落するのがだいたいその頃になる。
着工するならその辺りが丁度良いだろうという事だった。
補償が送られてくる時期にもよるのでそう思い通りにいくとは思っていなかったが。
それでも全員が考えて出した結果である。
トオルはそれをトモノリの所へ届けていった。
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