レベル144-1 悪い人ではなさそうな気がしてきました
「多いですね、本当に」
寄せられた手紙などを眺めてそう思ってしまった。
「どうすんですか、これ」
「どうしたらいいのかねえ。
最終的にはトモノリ様が決める事だが、ある程度はおさまって欲しいところだよ」
どれだけの要望が来てるのか、どれだけの兵士希望者がいるのかが分からない。
要望が来てるならそれを見せて欲しい、とトモノリに訴えた。
手紙などは執事が保管してるというので、それを見せてもらいにやってきた。
思った以上に多くて、どうやって捌けばいいのか分からなくなった。
トモノリの一族からだけであるが、兵士見習い達は結構やってくる。
希望してる者達は多く、それらを順次受け入れていくしかなくなっていた。
どんなに少なく見積もっても六ヶ月かかるので、待ち時間が長くなってしまう。
収容能力が増えれば多少は解決出来るが、今度は教える側が足りなくなる。
トオル達が全員教えに回れば、そこも多少は改善する。
とはいえ、その間どうしても収入が減ってしまうので、トオル達の負担も大きい。
教育係として人を出すにも、それを支える体制が必要だった。
より高い収入を確保出来るように。
その為にも人が必要になる。
宿舎を増やし、人を増やし、レベルを上げて。
それをこなしていくしかなかった。
半年一年という単位で。
「これじゃいつ終わるか分からないですね」
トオルの素直な感想だった。
(こりゃ、早めに俺達の場所を作らないと)
人を受け入れていくなら、そうするしかない。
トオルが新人を受け入れ、育て、許容できる人数を増やすしかない。
寝泊まりする場所を作れても、人がいなければ何の意味もない。
早くても着工は年末までお預け。
下手したらもっと先まで延びてしまうだろう。
小屋一軒が三ヶ月ほどで建築されていたので、完成は来年三月か四月くらいになる。
それまでは今まで通りにやっていくしかない。
兵士見習いの受け入れ順も決まっていく。
希望する各貴族とのやりとりが進み、次の到着が決まっていく。
現在いる者達と重ならないように調整しつつ、準備を始めていく。
それとあわせて、確実に伝えて欲しい事も送信してもらっていた。
『戦闘だけでなく、解体作業も存在する』
『やり方についてはこちらに一任し、上手くいかなくても責任は見習いを送った側にある』
今回の出来事で判明した部分である。
あちらとこちらの認識や理解の差が発生している。
その穴埋めをしていった。
それでも問題が起こった時のために更に条件を追記する。
『問題が発生した場合、有無を言わさず送り返す』
『その際の責任も、兵士見習いを送ってきた側にある』
「それと、これも追加しておく事にしたよ」
「ああ、なるほど」
納得してしまった。
『監督責任者などに婦女子を用いない事』
それ以外でも貴族の婦女子を用いないよう求めていた。
様々な方法で乗り込んでくるのを防ぐためにはやむを得まい。
「あのご婦人は出来た方であるがな」
今回やってきたご婦人について、トモノリはそう評価していた。
「確かにそうですね」
仕事に口を出してこなかったので、トオルもそのあたりは評価をしていた。
出て来たとしても、素材をおさめてる倉庫代わりの小屋を見に来たくらいである。
それを見て「いっぱいあるのねえ」と驚いていたのがせいぜいであった。
そんなこんなもあり、実は得難い人材なのではないかとすら思えている。
「トモノリ様」
「なんだ?」
「もし問題がないなら、あのご婦人を迎えてもよろしいのでは?」
「…………お前までそう言うのか」
さすがにトモノリも顔をしかめた。
でも、満更でもなさそうに見えた。
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